28 ファリィ
もやの正体はわからないままだけど、この惑星はゆっくりと自転してパートナーチェンジの日が来る。
今思うとあれはなんだかいろいろうまく行かないと感じていた僕が、無邪気に明るい未来を信じていたアルマに反発していただけかもしてないし、
みんな普通に使う言葉だけど実態がよくわからない「相性が悪い」というやつだったのかもしれない。
ともかく、今朝僕はアルマに
「浴槽の中でいろいろ話したのは楽しかった」
と言うことができたし、楽しかったのは事実で、アルマは私も楽しかったと言ってくれた。
だから今はもうそれは考えないことにして、とりあえず今目の前にいるファリィはよく言うとおだやかな、悪く言うとぼんやりした印象だ。
11番の鍵を受け取ってきた僕にファリィは
「ちょっと待って、ソーダを入れて行く」
というので、ソーダが好きなの? と聞いたら
「ううん、ホントはコーラが好きだけどもう夜だし眠れなくなったらイヤだから」
「これ、カフェイン抜きのゼロコーラだよ」
「え、そうなの? 知らなかったー」
2人でプラスチックのコップにコーラを入れてコテージに行くと
「よろしくお願いします」
とファリィはぺこりと頭を下げる。いい子じゃん。僕もつられて
「こちらこそよろしくお願いします」
と頭を下げる。
「悪いけど先にシャワーを浴びていい?私が髪を乾かしている間にジェイミィが入って」
ファリィはローテーブルにコーラを置くなりそう言うから、
「もちろんいいけど、あ、なんだったら一緒に入る?」
僕がそう言ったら、
「はぁ?」
すごく冷たい声でそう言われた。
「ごめんなさい、冗談です」
「はぁー」
ファリィが浴室に消えてから僕は盛大にため息をついた。
やらかしてしまったかもしれない。たしかに僕は調子に乗っていたかもしれないけれどあの声の冷たさはショックだなぁ。
今夜はソファで眠ることになるかもしれない。この惑星は青い風の吹く惑星より寒いからイヤだな、と思う。
青い風の吹く惑星ではソファで眠ることも時々あったけれども。
青い風の吹く惑星といえば、もしリザリィに一緒にお風呂に入ろうと言ったら彼女はどういうだろうか?
こっちを見て「恥ずかしいからイヤ」とか言うかな。ユウミなら喜んで一緒に入ると言うだろう。サニアは、意外とOKしてくれるかもしれない。
けどそれは、その方が水も時間も節約できて効率的だからっていう理由だったりして。
そしてアウラなら。僕を見て困った顔をするかな?それは無理と言うかも。アウラの反応は想像できないけど、どれもありそうな気がした。
ああ、どうして僕はここにいない人のことを考えているんだろう。
「お先でしたー」
と浴室から出てきたファリィはコンセントを引っこ抜いたドライヤーを持っている。リビングで髪を乾かすつもりらしい。
僕はファリィがそんなに怒っているわけではなさそうだということにちょっと安心して浴室に行った。
あれは、一緒にお風呂に入ろうと言ってすぐにいいわよ、と言ってくれたアルマが変わってるんだ。
それは他人と同じことをするほうがいいとかそういうことではなくて、まるきりの他人には関係ない部分だけど。
短い間とはいえ一緒に暮らすなら意見や考え方のすり合わせをするべきなんだろう。
相手の意思を尊重しつつどうしても譲れない部分はちゃんと伝えればいい。
そう思うのは簡単だけど僕はニーナにそれが出来なかったし、アルマには?もっといろんな方面から違う話をしていれば何かが違ったのだろうか。
まあ今は目の前のファリィに向き合うべきた。
僕が浴室から出るとファリィは髪を乾かし終えて何をするでもなくソファに座っていたけれど僕の姿を見るとドライヤーを差し出す。
「いや、僕は使わないから」
「そう? じゃあさっさと済ませましょう」
と寝室に移動しようとする。
「あの、疲れているとかなら今夜はなくてもいいよ?」
僕がそう言うと、
「そういうことじゃなくて、私は早く寝たいだけ。でも義務ははたさないとでしょ」




