27 違和感
アルマはいい子だと思う。
ハッキリとものを言うのはある意味付き合いやすいし、故郷の惑星の人間関係がイヤだと言っていた割には僕に気を使ってくれる。
ただその気の使いかたは、僕から見ていかにも気を使っていますよ、というのがわかりやすかったりはするけど、もっとさりげなく気を使って欲しいと思うのは多くを望みすぎだ。
今だって、自分たちのコテージに帰ってきてから僕が受験勉強がしたいと言ったら、じゃあ私は本を読むわとトリナに借りたという紙の本を読んでいる。
どちらかといえば地味な顔立ちだけど、パーツのバランスが整った美人だ。あ、ここはアウラと同じだな。
それでも。うまく言葉にできない何かがほんの少しづつ僕の中に沈殿している。
「はぁ」
そんなことを考えていて思わずため息をついた僕にアルマは
「どうしたの?コーヒーでも淹れようか?」
と言ってくれる。
「いや、ちょっと難しい問題があっただけ」
僕は何故ごまかすようなことを言っているんだろう?
「そうだ、僕、ドクターのところに行って教えてもらってくるよ」
僕は逃げ出そうとした。
「それはいい考えね。コーヒーもドクターにご馳走してもらえばいい。この前トイルもドクターに本物コーヒーをご馳走になったって言ってたわ」
トイルがドクターとどんな話をしたのかしらないけれど、ドクターはそうやって参加者全員に気を配っているんだろうな、と僕はトイルって誰だっけ?ああそうだ、そばかすの浮いた少し幼く見えるヤツだ。
僕はあいかわらず男の顔はよく覚えていないやと思いながら歩く。ドクターのコテージを訪ねた僕を
「やあジェイミイいらっしゃい」
とドクターは何かあったのかと聞いたりせずに迎えてくれる。
だから逆に僕は
「こんばんは、魚を見せてもらおうと思って」
と理由を捏造する。
ドクターの部屋の水槽の中の魚たちは勝手気ままに泳いでいる。
他のどこへも行けないことを悲しんでいるのかもしれないけど、それは僕にはわからないし、そもそも魚に感情があるのかもわからない。
「どうしてドクターは魚の研究を始めたんですか?」
僕は無難な話題を出せたと思う。本当は僕の中のもやのような違和感の話をしたかったんだけど、自分の中でも言語化できないんだからしょうがない。
「食糧問題の解決としてたんぱく源の確保なら、大豆でも鶏の卵でも豚でもいい」
コーヒーを淹れながらドクターは説明してくれる。
「水の中の方が環境の設定がしやすいんだ。同じ水温に保つとか、酸素濃度を少しづつ変えるとかの」
なるほど。
「他から切り離した環境というのは実験がしやすいんだ」
それにはB計画も含まれるんだろうな。ドクターはそういう意味で言ったのではないとは思うけど。
そして魚の繁殖もB計画もまだ結果がでていないというところは同じだ。
「いろんな方向から実験をするのは大切だと思うし、どうやったら穀物が実るのかとか豚の飼育や、あと化石燃料を燃やす以外の発電の方法なんかも進めてはいるんだけどね」
「太陽光発電ですね」
太陽光発電についてはアルマにさんざん聞かされたからついて行けるかと思ったんだけど。
「この惑星では太陽光発電をしているけど他の惑星ではまた違うことをやってる。潮力発電とか風力発電とかね」
「ちょうりょく?」
「海があって衛星がある惑星だと潮の満ち引きというのがあって海水が移動するんだ。そのエネルギーを電気に変える」
海水が動くのをエネルギーに変えるとかさっぱりわからない。
「風力発電というのは自然に吹いている風で風車を回す」
そっちならまだなんとなくイメージできる。
「ただ風力発電はとてもうるさいという問題があって、そこが解決できれば故郷の惑星にも設置できる、場所もそんなにとらないから」
アパートの屋上とかにだろうか?洗濯物が干してある横で風車が回っているというのはちょっといいかもしれない。




