26 一緒にお風呂
「あーっ」
浴槽に肩まで浸かったアルマが低い声を出してその声に自分でクスクス笑う。
1人で入る分には広い浴槽さけど2人で入るにはちょっと狭い浴槽の片側で、僕はアルマの裸が気になってしょうがないんだけれど。
「気持ちいいわね、シャワーだけとは全然違う。浴槽を発明した人は天才よね」
「いや、桶的なものは最初にあってシャワーの方が後からできたんじゃないの?」
「あ、そっか、それもそうよね、シャワーの方が構造が複雑だし」
アルマはまた笑う。僕はアルマのことを大人しい子だと思っていたけどそういうわけではないようだ。
僕はとうとう我慢できなくなってそっとアルマの体に手を伸ばしたら
「そういうのはベッドに行ってから」
ぴしゃりと言われた。
「あ、はい。ごめんなさい」
言いたいことは今みたいにはっきり言ってもらうほうが付き合いやすくていい、と思う。
アルマは故郷の惑星では人と人との距離が近すぎると思っているからこんな風に言いたいことをはっきり言う性格になったのだろうか?
けれそその性格は故郷の惑星では「変わってる」とか言われてしんどかったと思う。
ともかく、その夜はお風呂から出て普通に任務を遂行して、日が昇らない朝を迎えた。
朝食前に2人でインスタントコーヒーを飲みながら、アルマはインスタントコーヒーに合成甘味料だけを入れる派だ。あの故郷の惑星で他人と違っても認められるのはインスタントコーヒーに何を入れるかという好みぐらいのものだと思うとアルマの生きづらさもわかる気がする。
アルマとは主にぬるめのお湯を張った浴槽につかりながらいろんな話をした。
彼女の作業は太陽光発電装置の保守点検で、それは装置の維持だけではなくトリナがやっている蓄電の研究の手伝いなんかもしているらしい。
なんでもたくさん並んでいるパネルの横の窓のない建物は蓄電装置ということだ。僕はそこでパネルで集めた光から電気を作っているんだと思っていた。
今はまだ、とアルマは言う。
「今はまだあの大きさの蓄電装置でここの惑星で私たちが使う電気の2日分かせいぜい3日分ぐらいしか貯められない。
けれどもっと小さい体積でもっとたくさんの電気を貯められるようになったら」
「えっとそれは目覚まし時計や懐中電灯なんかに使う乾電池みたいに?」
「そうね、ちょっと規模が違いすぎるけど似たようなものかも」
「だったらここで作った電気を故郷の惑星に持って行くこともできるよね」
僕がそう言うとアルマは複雑な顔をした。
「まず宇宙船の燃料に使えるぐらいに、というのが目標よ」
あ、そっか、そうだよね、僕はアルマにバカだと思われたかもしれない。
「それからこの惑星や他の惑星でも小麦が実って、鶏が卵を産んで、人も子孫を残せるようになったら」
そんなにうまく行くかな? と僕は思うけどそれは今アルマに言うことではない。
「それに電力がうんと安く手に入るようになったら故郷の惑星の工場も機械化が進んで労働時間を短くできるだろうし、モノの値段も下がるの」
もちろん僕だってそうなればいいと思う、
「今だってあの蓄電器でこの惑星で使う3日分の電気を貯められるんだから、それをコンパクトにするだけなんだからもうすぐよ」
僕はその研究だか実験がどこまで進んでいるのかは知らないけど、僕の小指ほどのサイズの乾電池1本で目覚まし時計は1年ぐらい動くから、なにかの工場に機械を入れてそれを動かす電気を小さい蓄電器で賄うということも出来るのかもしれない。
「でもそうなったら技術者階級の人が忙しくなって、中流階級の人の仕事がなくなったりしないのかな」
「それなら政府が奨学金とか出して技術者階級を増やせばいいこと」
僕はもう一度思う。そんなにうまく行くのかな?




