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25 アルマ

「アルマはどうしてB計画に参加しようと思ったの?」

コテージのソファに落ち着いて僕は聞いた。最初の話題として一番無難だと思ったからだ。

「私、逃げてきたの」

あれ?どこかで聞いたセリフだ。


「故郷の惑星は人と人の距離が近すぎて息が詰まりそうだった」

あ、僕はアルマのすぐ隣に座っていたから、あわてて腰をずらして距離をとった。

「やあねえ、そういう意味じゃないわよ」

「そうなの」

僕はもう1回坐りなおした。


「精神的な距離と言えばいいのかな。みんな他人のすることをいちいち噂して首を突っ込んできてあーだこーだと言うじゃない?」

「ああ、うん、そうだね」

「私、高校生の時にマーケットの掃除のアルバイトをしていたんだけど、中流階級向けのアパートの1階にあるマーケットにも上流階級向けのアパートの1階にあるマーケットにも行ったけど、そのお客さんたちの話している内容が違うのよ」

「違うってどう違うの?」

「上流階級の人だって噂話はする。でもそれは普通の噂話。でも中流階級の人の噂話ってなんというか悪意があるの。でそれを面白がっているというか」

「他人の不幸は蜜の味、ってやつ?」

「そう、それよ。それでB計画に参加して参加報酬をもらって専門学校に行って技術者階級になったらそういうのも少しはマシかなって思ったの」

「なるほどね」

「あ、ジェイミィは技術者階級なのよね?中流階級よりは他人のことをああだこうだ言う人は少ないんでしょ?」

はあ、そういうことになっているのか。ニーナに聞いたのかもしれないな。でもまあこれは悪意のない噂だ。多分。

「僕は今までこんなもんだと思って生活していたし他の階級のことはよく知らないよ」

うん、嘘は言っていない。


「他人の言うことなんて気にしなければいいじゃん」

そういう僕にアルマは

「ジェイミィは技術者階級だからそんなことが言えるのよ。中流階級はなんていうかもっと容赦がないの。例えば私は両親が結婚して3年目に生まれた子供なの」

「だから名前がAから始まるんだね」

「まあそれはいいのよ、でも私がシークレットチャイルドじゃないかって疑われたらしいわ。それで私がちょっと泣いたりすると『あの子はシークレットチャイルドだから虐待されてる』って言われたそうよ」

「えー、普通子供は泣くもんだろ」

「その噂は4年後に妹が生まれてやっとなくなったそうだからまあいいんだけど」

「他人の言うことなんか気にしなければいいんじゃないの?」

「そういうもんでもないのよ。私がシークレットチャイルドじゃないかって疑われた時に実際に通報されたこともあるらしいから」

それはちょっとヒドイと思う。本当にアルマがシークレットチャイルドなら2つの家庭が滅茶苦茶になってしまう。でも通報した人はそれを楽しそうに見てるんだ。クチでは「かわいそうに」と言いながら。


「あのさ、小学校に入学するときに鞄を買ってもらうじゃない?」

「うん」

「その時に私『青の鞄がいい』と言ったの。そのほうがキレイだったから。でも両親はダメだと言った。その理由が『赤の方がかわいいと思うよ』とかならまだ納得できたかもしれないけどその時こう言われたの。『女の子に青い鞄なんか買ったらなんて言われるかわからない』って」

僕はアルマの気持ちもわかるけどアルマの両親の気持ちもちょっとわかる気がした。

「なんかね、他人と同じことをしていたら安心、他人と違うことをすると叩かれる。そういうのが染みついているのよ、中流階級には。それが嫌で参加報酬で専門学校に行って技術者階級になろうと思った」

「そっか」

僕はそれしか言えなかったけれど。


ちらっと壁の時計を見た僕にアルマは

「そろそろシャワーを浴びたほうがいいかしら」

そう言うから

「一緒に入ろうか?」

「いいわよ」

え、いいんだ。僕はうれしいと言うよりびっくりして焦る。話がなんだか重くなっていたから冗談で言ってみただけなんだけど。


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