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19 違う種類のコーヒー

ドクターのコテージを辞して僕たちのコテージに帰ってからも、その後何日もドクターのセリフについて考える。

「医者もキレイな仕事ではない」とはどういう意味なのか?

医者は人の命を救う立派な仕事だと思うし、まだ「役人は」と言われるほうがわかりやすいと思う。

役人は、例えば「不適格者」になった人を連れに来たり、厳しく税金を取り立てたりするから一部の人に良く思われていない。


ドクターは僕が大学受験をすると知った上でそう言った。

ということは「覚悟」的なことで言ったのかもしれない。

僕は中流階級として育って来て、一昨年までは高校を卒業したらどこかの工場に勤めてベルトコンベアの前で働くことになると思っていた。

技術者階級や上流外級の人の仕事は、中流階級とは比べ物にならないほど責任が重いというのは知識として知ってはいたけど、僕は責任のある仕事をしている両親の背中を見て育ったわけでもないし、たまたま学費を得るチャンスを拾ったから進学したいと考えただけで覚悟なんかない。


でも。だったら。

「キレイな仕事ではない」という言い方をしなくても「ラクな仕事ではない」と言えばいいのではないだろうか?


何日かぐるぐる考えた後、僕はもう1度ドクターを訪ねることにした。

前回「またいつでもコーヒーを飲みに来て」と言われたから、というのを言い訳にして。


もう1度ドクターのところに行ってくると言うとニーナは「どうぞどうぞ」と送り出してくれる。

前回僕がドクターのところに行っていた間にドラマを見ていたみたいだから続きが見たかったのかもしれない。

ニーナは僕に気を使ってくれるのはうれしいけれどちょっとだけ方向がずれている。

そんな気の使い方をしなくていいのにと思うけど、だからと言って一緒にドラマを見ようと言われても困るからこれでいいのかもしれない。


「やあ、いらっしゃい。コーヒーを淹れるよ。今日の豆はこの間のとは違うんだ」

とドクターは歓迎してくれた。


僕は湯気のあがるコーヒーカップを両手で包むように持って、ああ、やっぱりなんていい香りなんだろう。

「この前のと違って酸味が少ないですね、これも美味しいです」

「うれしいなあ、ジェイミィは違いが判るんだ」


いや、コーヒーを飲んで和んでいる場合じゃなくて。僕は気になっていたあの話を聞きに来たんだ。


「ドクター、この間の『医者もキレイな仕事ではない』ってどういう意味ですか?大変な仕事という意味ならどんな仕事だってラクではないと思っています。なかでも医者は人の命を救う立派な仕事だと思うんです」

「ジェイミィは医者志望?」

「それはまだはっきり決めていませんが」

「どっちにしても大学には行きたいんだよね。だったら、知っておいてもいいのかな」


もしかしてそれは中流階級の人は知らない話なんだろうか。僕はドクターの口からどんな言葉が出るのかとドキドキした。


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