17 海と藻
次の朝、ニーナとインスタントコーヒーを飲んで朝食に行こうとコテージを出ると、ようやく長い夜が明けて空は薄い黄色で端の方がオレンジに染まっていた。
「夕焼け?」
「朝だから朝焼けかな」
僕は故郷の惑星で空の切れ端がほんの少し色が変わる夕焼けは何度か見たことはあるけれど、朝焼けは見たことがなかった。
「それなら何回か農場で見たことがあるわ」
それは夜が明けきる前から働いていたということだろうか?
「ね、今日は海を見に行くんでしょう?楽しみだわ」
ニーナの興味はくるくると変わって僕に続きを考えさせることをしない。
朝食後、僕たちは海まで出かけた。
敷地の中はさすがに取り除いてあったけど、1歩外に出ると握りこぶしぐらいの大きさの石がたくさん転がっているが、僕たちはそんなことも面白がって、ようやく海が見えてくると誰かが
「海だー。ヤッホー!」
と叫んで
「ヤッホーと言うのは山でしょ」
と突っ込まれている。
陸地と海との境目には、ザンザンと小さな波が打ち寄せて白い泡がはじける。
海の色は透明感のある茶色で、あれは琥珀色というんだったか。
誰かが海に向かって石を投げる。僕たちを引率してきた所長もドクターも何も言わないものだからみんな競って石を投げた。
僕も足元に落ちていた石を投げてみたけれど、遠くへ投げたつもりがすぐ目の前の水に落ちてばちゃんと音を立てる。
他の人を見るとみんな似たり寄ったりだった。その中で一番遠くまで石を投げたのは所長だった。
女の子たちに
「すごーい」
と言われて、
「もう5年もこの惑星にいるからね」
と答えるドエル所長は、外見は怖そうだけど中味はそんなことないのかもしれない。
2日ぶりの朝の光はやわらかく、風は少し冷たいけれど海辺で僕たちははしゃいでいた。
午後、僕ははラボに籠って、ちゃんとフタ付きの容器を借りて汲んできた海の水の中の「藻」を見ようとずっと顕微鏡をのぞいていた。
青い風の星には「草」だけが生えていたけど、この惑星は「藻」と呼ばれている植物プランクトンだけが存在する。それは海の水の中にいるから、わざわざ海の水を汲んで来たのに1つも見つけられずに、ずっと顕微鏡を見ているものだから目が痛くなってきた。
ドクターに相談したら、
「あれは海の水の中にもそんなにたくさんいるわけじゃないんだ」
と敷地の端にある浄水施設に連れて行ってくれた。
「このフィルターのこっち側ならたくさんいるよ」
と教えてもらって、僕はようやくその姿を見ることができた。
藻は丸くて頼りなげに水の中に浮いていた。




