11 ドクター
僕はふらふらしているニーナをソファに座らせて、暑そうだったのでマグカップ1杯の水を飲ませた。
ここの水道の水はそのまま飲んでも大丈夫とは聞いていたけど、水道の水をそのまま飲んだ経験なんてないからおっかなびっくりだ。
ふう。ニーナは水を飲むとため息をついたけど、額から汗が流れている。
「僕、ドクターを呼んでくるよ」
「らいりょーぶよ」」とニーナは言うけど
「いや、大丈夫じゃなさそうだし」
僕はもうすっかり暗くなった外へ出て、ドクターのコテージに走った。
それぞれの建物の入り口には小さい灯りが点いていて、道が見えないほど暗いわけではない。
ああ、去年もこんなことがあったな。あの時は、急いでいるフリをしたっけ。いや、そんなことより今はニーナだ。
ドクターのコテージのドアを叩くとドクターはすぐに僕たちのコテージに来てくれた。
ドクターはニーナの熱を測ったり手首に触れたりしながら、
「頭は痛くない?吐き気はある?」
とか聞いている。
「暑いだけです」
とニーナが答えると、
「ジェイミィ、水を1杯汲んでもらえる?」
そう言った。
「さっき1杯飲ませたんですけど」
という僕に
「うん、いい処置だよ。でもあと2杯ぐらい、ゆっくり飲んで」
ドクターは水を飲むニーナを見ながら、
「のぼせたんだと思う。熱すぎるお湯に長い時間浸かっていたりしなかった?」
と聞いている。
「このままおとなしくしてて熱がさめたら大丈夫だよ」
ニーナがもう大丈夫そうに見えたので
「あんなの(浴槽)があるなら最初に言っておいて欲しかったです」
僕はドクターに愚痴ってみる。
「浴槽があることを黙っていようと言い出したのはドエル所長だよ。使い方とかを2人で調べたら仲良くなるきっかけになるからって」
「ええー」
僕は所長がわからなくなった。押しが強そうに見えたのにそんな風に言っていたなんて。
僕がそんなことを考えていると、ドクターは
「このまま熱が冷めれば大丈夫だから。30分たっても体が熱いままとか吐き気があるようならまた呼びに来て。あと汗をかいているからパジャマも着替えさせて」
そう言って帰って行った。
僕はニーナの髪を包んでいたタオルを取って、まだ濡れていた髪を拭いてやった。ドライヤーは温風が出るから使わないほうがいいかな、と思って。
ニーナは
「そんなことしてくれなくても」
とか言いながらもおとなしくしていた。それから着替えのパジャマを寝室に取りに行って、あ、下着もあるのか、とニーナのバスケットごとリビングに持って来て
「1人で着替えれる?」
と聞くと、
「うん」
と言いながら、
僕がじゃあ僕は寝室に行っているよ、という間もなくするすると着替えてしまった。
パジャマの上からパジャマを着てそれから下に来ていたパジャマを脱ぐ、というやりかただ。
「器用だね」
と僕が言うと
「個室とかなかったから」
とニーナが答える。
ニーナの言動は全て裏側に貧民窟が見えて僕は何か苦いものを飲み込んだような気持になる。




