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10 浴槽

その棺桶は、いやきっと棺桶じゃないな、棺桶がこんなところに置いてあるなんて怖すぎる。


改めてよく視るとそれは僕が見たことがある棺桶より縦は少し短くて2/3ぐらい、幅は1.5倍ぐらいで深さは2倍ぐらいのフタがない箱だった。

素材はシャワールームの壁や床と同じ薄いクリーム色のプラスチックで底に小さい穴があって黒いゴムの栓が付いていた。


「これ、浴槽というかバスタブじゃないかな?」

「よくそう?、どうやって使うの?」

えっと、なんか映画で見たことがある。泡だらけのバスタブの中で体を洗っていたような?

でも裸を写しちゃダメだからか、そのワンシーンだけでどうやって使ったらいいのかよくわからない。

「調べてみよう」

僕はリビングに戻ってテレビのリモコンと兼用のタブレット端末を取り上げた。検索を始めた僕の手元をニーナが興味深そうに見つめている。

これは中流階級の一般家庭には普及していなかったけれど高校の図書室には何台かあって、授業でも使い方を教わったし青い風の惑星のコテージやラボにあってよくそれで調べ物をしていたけれどニーナは見たことがないのかもしれない。


ちょっと調べると浴槽の使い方はすぐに出てきた。ご丁寧に動画での解説があったのでニーナと一緒に見てみる。

「まずお湯を貯めてそこに浸かるのね。面白そう。やってみるね」

ニーナはそう言って改めてシャワールームに行く。

お湯に浸かるなんて僕はちょっと怖いような気がしたけどニーナは面白そうとか言うんだ。


シャールームからかすかな水の音が聞こえてくる。僕はまたさっきの貧民窟の話を思い出して気が滅入りそうだったのでテレビを見ることにした。

番組はあいかわらず去年のドラマと音楽番組、これは僕が青い風の惑星にいたときのものなので知らないものばかりだったけど、そもそも興味がないのでパスかな。あとは映画と教養番組。映画は長すぎるから、僕は適当に教養番組を選んだ。

それはどこかの土の中から当時は治らないとされていた病気の薬を発見したという話で、僕はそんなことがあるのかと思う。

その病気に効く薬を探していて見つけたのか、それともたまたま発見したそれが病気に効いたのか。

どっちにしてもまだ発見されていない重要なものがまだまだこの世界にはあるんだろう。僕としては化石燃料が見つかって電気代が安くなればうれしいんだけど。


次に見たのは「食虫植物」の話だった。

虫が植物を食べるのはわかるけど、植物が虫を食べるなんて理解できない。まあ食べるというよりは溶かして養分にするという感じだったけど。

何種類かあった食虫植物は今では全て絶滅したらしいけどそれはそれでいいと思う。だってキモチワルイし。

でもこの教養番組というのは、中学生が暇つぶしに見るものだと思われているけどものによっては面白い。僕が知らなかった話もたくさんある。


それにしてもニーナの風呂は長いな。教養番組を2本見たから1時間はたっている。

僕はシャワールームのドアをノックして声をかけた。

返事がなくて水の音も聞こえない。

「ニーナ、開けるよ」と言いながらシャワールムのドアを開けると、浴槽に浸かって真っ赤な顔をしてぐったりしたニーナがいた。


「大丈夫?すぐにあがっておいで」

そう言うとニーナは「大丈夫」と言いながら体を隠そうとするからしょうがなくて僕はシャワールームを出た。


しばらくして、きっちりパジャマを着て、ふらふらしながらニーナがシャワールームから出てきた。


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