コラボしよう
華湖は、思い切って配信のタイトルに『重大発表あり』とつけてみた。
なんだか意味深な言葉で『釣り』のようになってしまうのは気が引けたが、重大発表があるのは本当だ。
Feer:こんちゃー
「あー、Feerさんどうもー」
Feer:重大発表って?
Samurai_ME:重大発表と聞いて駆けつけたでござる
Coolout:こんにちは!
「発表あるよー、みんな来るまでちょっとまってね」
続々と常連たちが集まってくる。挨拶などを交わし数分がたつと、すでに100人以上が来場していた。
普段より早いペースだ。
待っていればもっと増えるかもしれないが、いつものメンバーはすでに来ていたので発表することにした。
華湖自身、言いたくて待ちきれなかった、というのが本音だったが。
「じゃあねー、いきなりだけど重大発表します!下今女学院eスポーツ部MOBA部門トップチーム、Destinationへの加入か決まりましたーイェイ!」
華湖はそう言って、配信タイトルも『祝!Destination加入』と書き換える。
5AMMM:Destinationやて!?あの今女のトップチーム??ホンマか!?
Coolout:すごいです!
Feer:まさか、今女ってホントだったの?
「そそ、そのDestination!ホントに今女だって!ずっと言ってたでしょ!?みんな信じないんだもんなぁ。その証拠じゃないけど、今日はコラボ配信するよ!」
Coolout:コラボですか!?
5AMMM:おお、初ゲスト?誰や?
「そうでーす!チームの先輩に来ていただきました。ボイスチャットつなぎますねー。もしもーし!」
UsagiPaisen:《こんにちは!聞こえてるかぴょん?》
「聞こえてます。それでは、みなさん紹介します。今日のゲスト、うさぎ先輩です!」
UsagiPaisen:《よろしくぴょん!》
Feer:え!UsagiPaisenだ?
Samurai_ME:あの、うさぎパイセン!?本物!?
Coolout:聞こえてますよー
ExGirl:うさチャンから来ましたー初見です!
「もちろん本物のうさぎ先輩だよ。うさうさゲーミングチャンネルもよかったら見てみてね」
コラボ配信の利点として、お互いの視聴者が行き来する、というのがあった。
兎咲のチャンネルフォロワーは実に1万超え。彼女はピンク色のうさぎの着ぐるみ、語尾に『ぴょん』をつけて喋るという色物配信者であったが、それでいてグランドチャンピオンの今女トップチーム所属という確かな実力も兼ね備えていたため、界隈では有名な配信者でもあった。
それゆえ、どちらかというと華湖のほうがメリットが大きいコラボだった。視聴者が続々と増えていく。フォロワー通知も止まらない状態だ。
Feer:まさか、本当に今女だったとはね…
Samurai_ME:アバターが本人ってのも、本当でござるか?
「そうだよ。今後、オフライン大会なんかでは顔出すと思うんで、それ見てもらえれば…」
Coolout:あれ?ところで今日はサリーじゃないんですか?
「あ、そうそう。しばらくサリーは封印するから」
華湖はそう言うと、昨日の楼瑠からの注意を思い出していた。
『あーそうそう。配信でもう一個注意な』
『なんでしょう?』
『配信でサリーは使わないこと』
『えー!なんでですか!?』
『これから大会に出るんだからな、手の内は隠しておかないと』
『なるほどーそういうことですね』
『あとは、BANされたときのため、別のカリスマも使えるようにしないといけない』
『確かに、そうかもしれないですね』
『不人気カリスマだから、今まではされなかったかも知れないけど、大会だと相手チームに研究されるからね。新しいカリスマを練習してほしいんだ』
『わかりました!』
…ということがあったのだった。
(さすが部長だよなー。もうすでに戦いは始まってるってね)
今日は、兎咲に手伝ってもらい、いくつかのカリスマ候補を試してみるつもりだ。
UsagiPaisen:《今日はわっちがサポートするから、好きなの使うといいぴょん》
「はい!ありがとうございます!」
Coolout:そう言えば、スタンプできたんですけど、どうやって送りましょうか?
「あー!そうだ!!みんなに言わなきゃいけないことがあった」
Coolout:え?どうしました?!
Feer:まだ発表が!?
Samurai_ME:まさか、審査に通らなかったでござるか?w
「それなんだけど…ほら私、高校生で18未満だから、収益化できないんだよね…」
Feer:あ!
Samurai_ME:そ、そうでござった!!
Coolout:そういえば、そんな規約ありましたっけ?
「なんで、せっかくスタンプ作ってもらったんですけど、本当に申し訳ないです」
華湖は頭を下げる。
こういった動きもVRゴーグルのヘッドトラッキング機能で検知され、画面内のアバターも同様に頭を下げる。
Coolout:なるほど!でもこれ、せっかくなんでアイコンにでも使ってください
Feer:あー、それ良いかも。
Samurai_ME:KAKOどののチャンネルは初期アイコンで味気ないでござるからなぁ
「そういえば、そういうアイコンとか変えてないや」
UsagiPaisen:《そのへんはまた後にして、こっちの視聴者もみんな待ってるからゲームするぴょん》
「そ、そうでしたー!お待たせして申し訳ありません」
華湖はまた、ペコペコと頭を下げることになった。




