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序章

garou_jp:gg


《プレイヤーKAKOが退出しました》


H4Ku6:なんだアイツ。ggくらい言えよな~

garou_jp:あー、アイツはそういうヤツだろ

Zock:いつもだよなぁ?

H4Ku6:ゲーム中も一切、喋らないよな?

garou_jp:てか、喋れないんじゃね?

H4Ku6:どうしてよ?

garou_jp:さぁ? そこまでは……



NekoHime:強いですね! チームとか入ってるんですか?


《プレイヤーKAKOが退出しました》


NekoHime:あ……抜けちゃった

Saku_PAPA:あの人、チームなんて入ってるの?

RoyalGuard:たぶん、入ってないな

NekoHime:え~! あんなに強いのに?

RoyalGuard:いくら強くてもなぁ。コミュニケーションが取れないやつは無理だろ

Saku_PAPA:確かに。でも、もったいないよね

NekoHime:もったいないねぇ



《プレイヤーKAKOが退出しました》


Saki:日本人?? だよな?

Gemmmyrock:謎だな。プロフィールも非公開だし

Saki:だれかフレンド申請してみろよ

Gemmmyrock:もうとっくにしてるよ。案の定、無視されてっけど

Saki:女かな?

Gemmmyrock:どうだろうな。まぁどっちでもカンケー無いだろ?



《プレイヤーKAKOが退出しました》


gMock:あれって『サイレント・サリー』か?

d5dex112:だろうな、すげぇなありゃ

Szki:誰よ?

gMock:なんか、一部で噂になってるやつよ

Szki:知らんな。しっかし、おかしいだろアレ。チートか?

gMock:まさか、それは無いだろ。ああいう種類のチートなんて聞いたことがない

d5dex112:喋らないってのが怪しいよな。大会にも出ねぇし

gMock:それだけじゃ証拠にならんな

Szki:配信でもしてくれりゃ、見に行くのにな

d5dex112:喋んないのにかぁ?まぁあれだけ上手けりゃ、視聴者いっぱい来そうだけどな



《プレイヤーKAKOが退出しました》


「う~、またフレ申請きてるなぁ」


 華湖はVRゴーグルを外し、独り言ちた。昔からの名残でゴーグルとは言うが、実際にはヘルメットのように頭をすっぽり覆う形状をしていた。全体に銀色をしているそれは一見重そうだが、実はかなり軽い素材を使っており、長時間、被ることを想定して作られていた。ディスプレイとヘッドフォン、マイクの機能はもちろん付いているが、近年発達した脳波の測定装置を搭載した最新型だった。

 それを使えば、頭で思い浮かべただけである程度の操作することも可能だし、感情を読み取ることもできた。頭全体を覆っているのはそのためだ。

 机にVRゴーグルをコトリと置くと、肘をはった状態で両肩を前に後ろにグルグルと回した。


「はぁ……また話しかけられてるのに、無視しちゃったなぁ……」


 そのまま両手の指を交差させ、手のひらの方を天に向けつつ腕を上げ、椅子が倒れる限界まで体を反らす。かなり後ろまでリクライニング可能なその椅子は、ゲーマー用に開発された特別なものだ。一般にはゲーミングチェアと呼ばれている。

 それは華湖にとってはかなりの出費であった。高性能パソコン、VRゴーグル、そしてこの椅子が彼女にとって言わば3種の神器だ。それらを手に入れるため、その他一切は我慢してきたのだ。


「もうすぐ学校も始まるのに、こんなことで大丈夫かなぁ?」


 華湖は、そのままの姿勢で壁にかけてある制服をちらりと見た。セーラー服を基本としているが、特徴的なのは襟だ。

 肩から飛び出すほど大きく広がり、前か背後から見ると上辺が長い台形の形をしていた。そして目を引くのは、胸やスカートの中央にあるダイヤ型の飾り。そして肩や袖にあしらわれたライン。これらは夜光素材であり、昼に光を吸収し、暗くなると怪しく緑色に光るという特徴があった。表向きは夜の視認性を高め、生徒を事故から守るため、ということになっているが、学長の趣味であるともっぱらの噂だ。

 このデザインのせいで、近隣の人々からはロボット制服などと揶揄されているらしい。


「友達、できるかなぁ……?」


 コミュニケーション障害、あるいは対人恐怖症ではないか? というのが叔父と叔母の見解だった。医者に相談しようとも思ったが、なにせその医者とすら話す自信が無い。人の目をまともに見ることもできない華湖は、何かと理由をつけ、診断を受けずにいた。

 自分でできる対策として、両目が隠れるほど前髪を極端に伸ばし、人と目を合わせないようにしていた。高校を選ぶにあたり、髪型に厳しく無い校風であることも決断の大きな理由となった。男性恐怖症でもある彼女にとっては女子校であることは必須だったし、

 なにより一番の理由はeスポーツの名門校だったからだ。

 唯一、彼女が自信を持てたもの。それはゲームだった。


「次は……今度こそは……ggって言うんだ!」


 華湖は大きな声をだし、その大きさに自分でもちょっとびっくりして右手で口を押さえてしまった。

 そして、再びVRゴーグルを手にとった。

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