5話 第1階層
――この状況はかなりマズイ。
1本しかない道に魔物が5匹もいる。逃げ道を絶たれた上に数で圧倒的不利な状況だ。さらに、魔物は片手剣を持っている。いきなり幸先が悪すぎだ。
どうするべきかと思考しようとしたとき、リーナが短剣を構えて言った。
「魔物は私に任せて。コウタは後ろでフォロー」
なっ! 魔物全てを1人で相手するなんて、さすがに無理だ。
「いや、それはさすがに……」
と、俺の言葉も聞かず、リーナは魔物に飛びかかる。
「おい、リーナ! ――――っ!?」
呼び止めようとした時、その光景をみて、心配が杞憂だったとわかる。
両手に短剣を持ったリーナが、魔物の攻撃、その全てをギリギリでかわしていた。
魔物が振りかざした剣の動きを寸前で見極め、右横に回避。そのままの勢いで魔物に短剣を振りかざす。
圧倒的な戦闘センスだ。これが初めての戦闘ではないのか?
リーナはものの数分で、魔物5匹全てを倒した。
「怪我は……なさそうだな」
現に、相手からの攻撃は1度ももらっていなかった。リーナ自身もいったて悪そうなところはない。
「リーナって何歳だ?」
「――? 15歳」
15……俺とは2つ下か。思ったより俺と離れていないな。
「前にも魔物と戦ったことがあるのか?」
「うーん。毎日?」
なるほど毎日――――
「えっ!? 毎日!」
……いや、あの戦闘センスは1,2回ぐらいでは到底たどり着ける境地ではない。それは俺の目でも分かった。逆に毎日の方がしっくりとくるのかもしれない。
けど、それは大人だったらの話だ。リーナは15歳。元の世界で言うところの中学2,3年生といったところだ。あまりにも若すぎる。
他にもいろいろ聞きたい。が、ここはダンジョンだ。いつ不意打ちを受けてもおかしくはない。今はダンジョン攻略に集中するべきだろう。
「まあ、取り敢えず前に進むか」
1歩踏み込もうとした時、
「コウタ、まって」
リーナが地面に落ちていた石を拾った。その石は薄く輝いている。
「これは?」
「魔晶石。売るとお金になる」
なるほど、冒険者が稼ぐ方法はこれか。
見たところ、あと4つ地面に落ちていた。1体につき1つ、といったところか。
残りの4つも拾う。あとは、とくにない。
「よし、こんどこそ……」
言いかけたところで、リーナが自分の手を俺の前に出した。
「どうした? どこか怪我したか?」
「違う。…………手、繋いで」
ああ、そう言えばそうだった。
手を握ると、リーナは満足気な顔をする。こんなので喜んで貰えるならお安い御用だ。
まあ、それはそうと。
「さて、どこに進むか?」
次の部屋では、左、前、右の3つに別れていた。
こういう時は、壁に手をつけながら歩くと出口にたどり着くと聞いたことがある。
ただまあ、それにはいくつかの条件があるわけだから絶対ではないか。
まあ、迷ったときはあれで決めよう。
「どれにしようかな、神様の…………」
いや、神様って言っても、あの神様か……。全然信用出来ないな。なんか胡散臭いし。
「リーナはどっちがいいと思う?」
リーナはダンジョン経験者だ。経験者の勘なら、当てになるかもしれない。
「うーん。……右」
というわけで、右に進む。と、
「コウタ」
リーナの指さす方に魔物――さっきのゴブリンみたいなのが1匹いた。
どうやら魔物もこちらに気づいたようだ。
「よし、ここは俺に任せてくれ」
「? コウタは回復師じゃ……」
「いやまあ、そうなんだけど。リーナに任せっぱなしってのもアレだし」
たしかに、リーナが前線で戦って後方で俺がサポートに徹するのも1つの戦法だろう。しかし、これじゃあリーナ1人の負担が大きい。俺も前線で戦いながらサポートした方がリーナの負担も少ない。 なら、今のうちに経験を積んでおくべきだ。
一対一なら、なんとかなるだろう。取り敢えず、剣を構える。
「はぁぁぁぁ」
魔物との距離を一気に詰める。そのまま思いっきり剣を振りかざす。
が、寸前で回避されてしまう。
「ギァャャ」
「くっ!」
魔物の振りかざした片手剣が頬にかすった。瞬間、頬に鋭い痛みが走ったが、なんとか痛みをこらえる。
「はぁぁぁぁ」
相手の隙を見て、すかさず連打を叩き込む。
「グギァォォ」
なんとか、倒すことが出来た。
「コウタ。血出てる」
リーナが心配した様子で近づく。
「ああ……あっ」
そうだ! 俺は回復師だ。なら、この傷を直せるかもしれない。
「ヒール」
自分に向けて呪文を放つと、頬の傷が徐々に塞がっていき、血が止まった。
「おお。恐るべき回復力」
回復師。思った以上に有能なジョブかもしれない。
それはそうと気になったことが1つある。
俺のステータスがどうなったかだ。
(ステータスオープン)
――――――――――――
ジョブ1
回復師 Lv 6/999
スキル
ヒール、アブソリュートヒール
ジョブ2
罠師 Lv4/999
スキル
落とし穴
ジョブ3 未開放
ジョブ4 未開放
パーソナルアビリティ
英雄作成
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「――罠師?」
もっと更新はやくしないとですね。
2月になったら暇になるんじゃ。