4話 ダンジョン攻略
神様と名乗る彼女の登場により、部屋の中に妙な緊張感が流れていた。……いや、リーナは比較的落ち着いてるな。俺より困惑している様子はない。……ひょっとすると、緊張しているのは俺だけなのか?
――まてまて。そんなことより今は、
「ダンジョン攻略? どういうことだ?」
この自称神が言った、聞き捨てならない言葉につっこむ。
すると、神様は顎に手をあて、考える素振りを見せ、答えた。
「どういうことと言われても……そのままの意味としか答えようがないネ。外の方に、ダンジョンに繋がる転送機がある。……君はもう見たんじゃないかナ?」
転送機……あの電話ボックスみたいなやつのことか? たしか、あれには1~30までのボタンがあったはずた。だとすると、
「まさか、そのダンジョン、30階もあるのか?」
俺の質問を聞くと、神様は大きく手を広げて答えた。
「ご名答! その通りだヨ」
「いや、さっき試したけどなんも起きなかったぞ」
1度試してみたが、その時は特に何も変わらなかったはず……。
「ああ、あれは2人いないと起動しないようにしてるんだヨ。1人だけじゃ危険だしネ。それから、君たちが30階層まですべて攻略したらここから解放しよう」
「なっ! そんな一方的な話があっていい訳ないだろ」
「たしかにそうかもネ。でもサ、この日のために3年も費やしてきたんだヨ。……ああ、そうか。君は心配してるんだね? それなら大丈夫だヨ。この家には家具だってあるし、食料もダンジョンで調達できる。生活には困らないヨ」
「いや、そういう訳じゃ……」
「とにかくサ」
神様は俺の声を遮ると、さらに続けて話す。
「せいぜい頑張って、攻略してヨ? そうじゃないと意味が無いからネ。……おっと、そろそろ時間のようだネ。最後に何かあるかい?」
神様がそう言うと、これまでずっと黙って見ていたリーナが手を挙げた。
「武器、欲しい……」
「ああ。そう言えば君、洞窟の途中で武器を落としていたネ。ふむ、そういうことならお安い御用だヨ」
そう言い、神様は自分の掌を天井に向ける。すると、青い光が現れ、2本の短剣が出来た。
その短剣をリーナに渡す。
「こんな感じでどうかナ?」
リーナは短剣を受け取ると、コクリと頷いて返事をする。
「す、すげぇ」
「まあ。神様だからネ。このくらいはできるヨ。……ふむ。君のも作ろう」
そして、再び青い光が現れると、1本の剣が出来た。
「君はこれがちょうどいいと思うヨ」
神様から、剣を受け取る。思っていたよりも軽く、俺でも簡単に振り回せるくらいだ。
「ん? まてよ。俺、回復師なんだけど」
「ああ、その剣は杖代わりにもなっててネ。装備しているだけで魔力が高くなるんだヨ」
装備してるだけで魔力があがるって、どこのRPGゲームだよ。
それはそうと、1つ疑問に思ったことがある。
「なら、別に杖でもいい気がするけど」
「ふむ。まだ気づいてないのかナ? ……まあ、そのうち分かるヨ」
「えっ? それってどういう……」
「残念だけど時間が来たようだネ。それじゃ、次に会う時は30階層になるから、頑張って攻略してネ」
「いや、ちょっとまって……」
が、そんな俺の言葉に耳を傾けず、神様は一瞬にしてその場から姿を消してしまった。
瞬間移動みたいなやつか? これも、神様の力なのかもしれない。
それに、なぜ剣にしたかも結局、聞けずじまいだ。
「コウタ、コウタ」
俺の裾をリーナはグイグイと引っ張る。
「どうしたリーナ」
「ダンジョン、いこ? 」
「ダンジョン……今からか?」
正直、今日はもう休みたい気分なんだけどな。色んなことがありすぎたし。
「ダメ?」
「よし、行こう! すぐ行こう」
まあ、可愛いからいいか。
▽△▽
「ここだな」
俺とリーナは転送機の前にいる。
「ところで……これ、手を繋ぐ必要あるかな?」
「ある。ダンジョンの中、危険。それに……迷子になるから」
後半部分、だんだん声が小さくなっていった。だぶん後者が主な理由だろう。
「分かった。……じゃあ、入るか」
リーナと一緒に中に入る。
2人分のスペースしか無かったから狭いと思っていた。が、リーナが小柄だからか、思っていたよりも狭くはない。
「階層は……取り敢えず、1階でいいか」
1と書かれているボタンを押す。すると、強烈な光が放たれ、思わず目を瞑ってしまう。
「うっ、眩しい」
次の瞬間、体がふわりと浮くような感触がした。例えるならエレベーターに乗っている感覚に近い。
そして、ゆっくり目を開けると、目の前の景色が変わっていた。
取り敢えず、周りを見渡してみる。
四角い小部屋、洞窟のような外観をしていた。
壁には松明のようなもので、明かりがついている。視界はそれぼと悪くはない。
左、右、後ろに道はなく、前だけに1本の道があった。
「よし、取り敢えず進むか」
「まって、コウタ」
リーナは、耳に手をやり、目を瞑る。
俺もそれを真似し、集中する。すると、何かの足音が聞こえた。それも1つではなく、複数の音だ。
「コウタ、離れて」
リーナの言葉に従って後ろに下がる。しばらくして、前の方から足音の正体の姿が見えた。
緑色をした、ゴブリンのような魔物が5匹、薄ら笑いを浮かべながら近づいてきた――。
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