3話 リーナ
どうやら俺はこの洞窟に閉じ込められたらしい。壁にタックルしてみたり、隠しボタンみたいなのを探してみたりと、思いつく限りの方法を試してみたが、どれも無意味だった。
――しかたない。こうなったらこのダンジョンを探索しよう。
「となると……」
後ろを振り返り、周りを観察する。あるのは奥の方に下へと繋がる階段のみ、か。
仕方なく、その階段を下る。螺旋階段のようになっていて、ぐるっと1周回った。
「――――」
下の階の光景に、俺は思わず自分の目を疑ってしまう。
そこには、辺り一面草原、芝生のようなものが広がっており、左には川がゆったりと流れていた。例えるなら、山にでもいるような、ハイキングな雰囲気を漂わせている。これだけでも十分驚きなのだが、それよりも、もっとビックリするものが目の前にあり――
「――なんでこんな所に『家』があるんだ?」
そう、目の前にあるのはまさに家。レンガで出来ている中世時代のような外見をしているが、二階建ての立派な家が1軒、その背景にはそぐわないように建っている。
とりあえず、周りを探索してみると、1箇所だけ怪しいところを見つけた。
例えるなら、公衆電話のボックスのような物のなかに、1から30までのボタンのようなものがある。広さは二人分が入れるぐらいのスペース。
試しに、1と書かれているボタンを押してみるが、特に何も起こることはなかった。
「そうなると後は、この家だけなんだが……入っていいのかどうか…」
仮に、誰かいたり……してもおかしくはない。現に、ここに家があるという事は、少なくともここに人が来て、家を建てて暮らしている、または暮らしていたということだ。人がいたことはまず間違いないと思う。
取り敢えず、ドア前まで行くが、チャイムのボタンはない。まあ、こんな所に人は来ないだろうし、当然といえば当然なのかもしれない。
手をドアノブにやり深呼吸。大きく息を吐いたところで扉を勢いよく開けた。
「……失礼しまぁ――――!?」
その瞬間、まさに時間が止まったかのような感覚がした。
目の前に少女――長く透き通る白銀の髪に、青色の瞳。幼さが残るものの、くっきりとした輪郭。まさに美少女。見たことの無い、言うならアニメに出てくるキャラクターみたいだ。
そんな少女が、何故かバスタオル1枚を体に巻き付けているだけでいる。
「――――」
しかし、その少女、さっきから恥ずかしそうな素振りを一切見せず、ただ俺の目の1点だけを見つめている。
「えっと……取り敢えず服を着てくれないかな? 目のやり場に困るんだけど……」
俺の言葉に少女はこくりと返事をすると、手前の部屋に入っていた。
……それにしても、まさかほんとに人がいるとは思わなかった。ちょービックリ。……それにしてもさっきの少女、一瞬しか見えなかったけど可愛かった。しかも、見た目幼そうなのにそれなりに……
「お兄ちゃん?」
「ひゃあい!?」
不意の出来事に思わず変な声を出してしまった。めっちゃ恥ずかしい。
「服、来てきた」
どうやら、ちゃんと服を来たようだ。とりあえず安心する。
すると、少女は俺の裾を掴むと、
「あっちで話そ?」
そう言って少女は、奥の部屋を指さした――
▽△▽
家の中は意外と広く、リビングにはテーブルやイス等の家具、キッチンには包丁等の調理器具まで揃っていた。
そして、俺と少女は、互いに向かい合う形でイスに座っている。
「えっと、とりあえず君の名前は?」
「なまえ…………、リーナ。お兄ちゃんは?」
「俺か? 俺は城山 康太だ」
「コウタ?」
俺の名前を聞くとリーナは首を傾げて不思議そうな顔をする。うん、可愛い。
「もしかして俺の名前、珍しい?」
リーナはコクリと頷いて返事をする。
どうやらこの世界では俺の名前は珍しいのかもしれない。
そもそも俺は違う世界から来たことをうち明かしてもいいのだろうか。いや、違う世界から来たなんて信じる人はそういないだろうし、黙っていても問題はないか。
そう思ったていた時――
「そろそろいいかナ?」
リーナの声とは明らかに違う、第三者の声が聞こえた。思わず声のする方を振り返ると、そこに1人の女性が立っていた。しばらくして、彼女は口を開いた。
「まず正直に言うと、私は神様だ。――もちろん、信じるも信じないも君達次第だけどネ」
彼女は、くちびるをニヤリとし、そう答える。
そして、まだ状況を掴めていない俺達2人に、さらなる追い打ちをかけた。
「突然で申し訳ないんだけど、君たちにはこのダンジョンを攻略してもらうことになったから、そこのとこのよろしくネ」
遅れてしまいすみません。次も遅くなるかもしれませんが、それでも良かったらブクマお願いします。