18話 スライム
久しぶりに書いたということと、物語の中でも月日が経ったということもあり、前半はキャラの紹介を入れています。予めご了承ください。
その後、俺達は順調に攻略を進めていき、1階層から始めたダンジョンも残すところ5階層分となった。
ここ、25階層まで来るまでに、すでに1年という時間が経過している。このペースが速いのか遅いのか……若干遅い気もするが、俺達は初期と比べても格段に強くなった。
俺、城山 コウタのジョブは回復師兼、罠師兼、風使いである。俺のジョブは今のところこの3つだ。
実を言うと、俺のステータス画面を見るにもう1つジョブがありそうなんだが、残念ながらまだ解放されていない。
ちなみに、俺のステータスはこんな感じだ。
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城山 コウタ 16歳
ジョブ1 回復師 Lv 80/999
スキル ヒール、アブソリュートヒール
ジョブ2 罠師 Lv 72/999
スキル 落とし穴、マイン、羅針盤
ジョブ3 風使い Lv 61/999
スキル なし
ジョブ4 未開放
パーソナルアビリティ
英雄作成
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レベルも以前と比べてかなり向上している。上限が999ってこともあってあまり成長した感じがしないけれど、それよりも、これぐらいレベルが上がったら、もっといろんなスキルが増えるんじゃないかと思っていたが、実際に増えたのは罠師の羅針盤のみ。
それに、さっぱり分からないパーソナルアビリティの『英雄作成』。ステータスについてはもっと情報が欲しいところだ。
「コウタ? ぼーとしてるけど大丈夫?」
白銀の髪色の幼い少女が、俺の手を掴みながら心配そうな瞳で見つめてくるのは、マイ天使のリーナ。
その幼い見た目とは裏腹に、戦闘では抜群の回避センスと剣技を発揮し、パーティーの核となっている存在である。
どうやら、過去に何かあったのか、独りぼっちが嫌いなようだ。詳しくは俺も聞いていないから分からない。まあ、無理に話をさせる訳にもいかないし、リーナ本人が話す気になった時でいい。
「コウタ様。どこか具合が悪いのでしょうか?」
俺の身体を気遣ってくれるのはユニコ。
もとは、ユニコーンウルフという魔物から人間化している。それゆえ、頭にはぴょこっとケモ耳がついていて、これがまた触り心地がとってもいい。
戦闘では魔法攻撃担当。それも、ある魔導書の影響で全属性の最強クラスの魔法が使えるというチートっぷりだ。が、全属性といっても、回復魔法はそれに含まれていないので、俺との役職被りはしていない。
「いや、大丈夫。ちょっと考え事していただけだから」
「そうなのですか。それなら良かったです」
ま、今はダンジョンの攻略に集中するとしよう。
「さあ、後5階層だし、ササッと終わらせよう。……だけど、油断だけはしないようにしないと」
「とーぜん!」
「そうですね。気を引き締めないと」
余裕と油断は紙一重、と、どこかで耳にしたことがある。
人間たるもの、余裕がある時こそ、油断が生まれやすいものだからな。
「――と、言ってる傍から敵が来たな」
タイミングがいいのか悪いのか。
こちらに向かって来るのは……何やら青い液体。ヌメヌメと動くその物体は、まさに――
「スライムか?」
「そのようですね」
ユニコの返答で疑問が確信に変わる。誰もが想像している姿のスライムだ。
しかし、俺が知る限りスライムは雑魚モンスターで有名なやつだ。25階層の敵というよりも1階層の敵、というイメージである。
もしかすると、何か訳があるのかもしれないな。
数は2匹と、それほど多い数でもない。
「ふんっ!」
リーナが先陣をきってスライムを斬り裂く。
「アイスバレット!」
ユニコは氷の欠片を撃ち、スライムの身体のど真ん中をを貫いた。
2人はものの数秒でスライムを倒す。
「うーん……」
先程の戦闘を見るに、どうしても疑念を拭いきれない。
――弱い。弱すぎる。
前回のダンジョンよりも明らかに弱い。というか、過去全てのダンジョンと比較してもダントツで弱いのではないだろうか。
そんな魔物が20階層の敵……なのだろうか。あの自称神のことだ。絶対何かあると思うのだが……
「うにゃあ!?」
突然、ユニコとリーナが叫びだすと、身体をじたばたとしだした。
「どうした?」
「身体に何かまとわりついてる!」
「ヌメヌメしてて気持ち悪いです!」
よく見ると、リーナとユニコの体の周りを何かが這いずり動いている。
――って、まさか……
「スライムの仕業なのか?」
でも、スライムはさっき倒したはずだ。
いや待てよ、もしやあの程度の攻撃では死なないとかあったりしたら。ひょっとすると倒せない、なんて可能性もあるな。
「コウタ、取って取って!」
今にも泣きそうな顔で懇願するリーナ。考え事をしている場合じゃないな。
でも、取ってと言われてもどう取ればいいんだ?
とりあえず、素手で取ってみる。
「ふにゃっ!? コウタ?」
「ああぁ、ごめんごめん!」
ちょこまか~と動くから、思わず変な所を触ってしまった。
それにしても、なかなか素手で取るのが難しいぞ。他にいい方法でもないのか?
「コウタ様! スライムはとても軽いので風で吹き飛ばせると思います」
「そうなのか? 試してみる」
リーナとユニコに向けて風を吹かせる。やや強く、けど、リーナとユニコが吹き飛ばされない程度の風量を意識する。
この風使いもレベルが上がるにつれて自由に操れるようになり、かなり使いやすいジョブだと思う。
と、スライムが吹き飛ばされる姿が見え、風を止める。
「どうだ二人とも、もう大丈夫か?」
「うん。ありがとう、コウタ」
「はい。もう平気です」
「なら良かった。早いうちにここを離れよう」
というわけで一旦、その場から距離をあける。もう一度スライムに襲われたら厄介この上ない。
「スライム、嫌い」
「おお、珍しくリーナが弱気だ。……まぁ、問題はスライムを倒す手段が今のところ無いってことなんだが。ユニコは何か知ってるか?」
「残念ですが質量が軽い、という事しか分かりません」
「そうか、ユニコでも知らないのか」
「うぅ。お役に立てず、申し訳ありません」
「いや、そんなことは無い。ユニコにはいつも助けられてる」
「そう。それに、さっきもユニコのおかげで助かった」
「うぅ。コウタ様、ユニコ様。ありがとうございます。もっと、お役に立てるように頑張ります」
「ああ、よろしく頼むぞ。期待してるからな」
「はい!」
ユニコの表情が笑顔に戻る。やっぱり、リーナとユニコは笑顔が一番可愛い。
「で、コウタ。これからどうするの?」
「そうだな。さっさとボスを見つけて倒すのが手っ取り早いんだが」
「それですと、ボスがスライムだった時が危険ですね」
「そうなんだよな。倒し方が分からない以上、どうしようもないんだよな」
真っ二つに切ったり、貫いたりしても生きているぐらいだ。もはや普通の攻撃程度では倒せないのかもしれない。
結局、スライムを倒す方法が分からないと先に勧めないという現状。
三人で倒す方法をいろいろ提案する。
焼いてみる、凍らせてみる等、提案こそ出るものの、実際に試すことが出来ないので結局のところ打開策が見つからない。
と、そうこうしているうちに、草むらの茂みからガサゴソと音を立ててスライムが現れた。
今度は6体と、数も多い。
「 二人とも、戦闘の準備だ……って、あれ? 2人とも?」
リーナとユニコが俺の身体を盾にするようにスライムから隠れる。
視線を送ると、2人はその視線から逸らすように横を向き、ユニコが申し訳なさそうな顔で話す。
「私は後衛だから後ろにいるわけで、別に怖いとかではなくてですね。……ちょっと苦手なだけです」
「………………リーナ?」
「大丈夫、コウタなら出来る。頑張って」
「まさかの丸投げ!?」
「ふぁいと!」
「可愛いいけどダメ!」
「むぅ、しょうがない」
そう言って、リーナは迫るスライムを斬りつける。が、予想通り、すぐにくっついて復活する。
「うぅ、やっかい」
やっぱり、ただ斬るだけではダメなのか?
「ファイヤボール!」
ユニコの初級魔法とは思えないレベルの炎の球がスライムを焼きつける。
が、スライムは何事もなかったかのように再び動き始める。
「これでもダメなのか!」
「もしかすると、魔法そのものが効いていないかもしれません」
「んな!? だとしたら相当詰んでるぞコレ」
追ってくるスライムを斬って時間を稼ぐ。どうせこの程度じゃ効かな……
「――って、あれ?」
急にスライムが蒸発するかのように溶けて消える。
「倒せた? でもなんで……」
さっきのリーナみたいに斬っただけだぞ。俺が倒せてリーナが倒せないわけが無い。何か理由が、理由があるはずなんだが。
「あれ? おかしいですね……」
リーナが不思議そうにスライムが溶けた跡を見て呟く。
「おかしい? どこがだ?」
「スライムから魔晶石がドロップしてないんです」
「魔晶石? そんなはずは……」
言われて見てみると、確かにドロップするはずの魔晶石が見当たらない。
待てよ。もしかして……
「なるほど、そういうことか」
「ええ? 何か分かったのですか?」
「ああ。まぁ、ユニコとリーナはそこで見ててくれ」
「んっ」
「は、はい」
刀を構えた俺は、一瞬にして5体のスライムをそれぞれ一撃で倒していった――
とりあえず、1章を完結出来るように頑張りますので応援して頂けると有難いです。どうか、あたたかい目で見守ってください。




