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1年、ダンジョンでくらしたら強くなってました  作者: aoiro
1章 1年、ダンジョンでくらす
16/18

16話 こうして、ユニコは強くなった

 



 現在、俺達は4階層にいる。3階層から一日挟んでの挑戦だ。あまり休んでばかりだと、いつ30階層にたどり着くのか分からなってしまうからな。


 そう、だから4階層でつまづいてる訳には行かないのだ。


 しかし――



「――あぁああ、暑いぃ」


「コウタ、それ禁句」


 ここ4階層は、辺り一面砂漠になっていた。それも暑さまで再現されており、ゆうに40度は超えていると思う。本当にここはダンジョンなのだろうか?



「コウタ様、リーナ様。頑張ってください!」


 そんな中、一人だけ暑さをものともせず、平然と歩いているのはユニコ。


 もともと、ユニコーンウルフは暑さと寒さに耐性があるようで、それは人間化したユニコにも引き継がれているんだそうだ。あぁ、羨ましい。



「ああ。でも最悪戦闘はユニコ頼みになりそうだな」


「分かりました。頑張ります!」


 頼もしい返事を返すユニコ。そのやる気はとても有難い。


 が、リーナの戦闘にはひとつ疑問が生じる。



「問題はリーナの魔法が氷属性なところだな。この暑さだと溶けないか心配だ。――そういえば、リーナは他の属性の魔法は使えたりしないのか?」


「そうですね……。火属性と地属性の適性が少しあります。でも戦闘ではあまり役にたたないかと」


 なるほど。となると、戦闘面でも不安がでてきそうだな。その時は俺とリーナが頑張るしかないか。


「どこか、試し打ちできる魔物がいるといいんだが……」


 と、辺りを見渡し探していると、こちらに向かって進んでいく影がひとつ。


「あれは……デザートスコーピオンですね。尻尾にある毒針に刺されると危険なので気をつけてください」


 デザートスコーピオンと呼ばれたそいつは、銀色の体に無数の足がはえており、前端には巨大なハサミが二つ。その鋭そうなハサミもだが、なりより目につくのは尻尾の部分。そこからはえる一本の針からは謎の液体が数滴垂れている。見た限りだと毒針で間違いなさそうだ。


 まあ、ここまでは俺の世界にいたサソリと同じだ。しかし、その大きさが違った。

 このデザートスコーピオン、体はリーナの身長と同じ高さがあり、尻尾まで含めると俺の身長よりもでかい。



 幸い、一体だけなのが救いだ。



「丁度いい。この魔物で試してみよう。ユニコ、魔法の詠唱を始めてくれ」


「はい、分かりました」


 後は俺等がユニコの詠唱が終わるまでの時間を稼ぐだけ――


「フローズン・バインド!」


「えっ?」


 あまりの詠唱の速さに、思わずすっとんきょうな声を出す。


 リーナが放った魔法は、相手の足元を凍らせるどころか、その全身を凍らせた。



「えっ? えぇええ!?」


 その魔法を撃った張本人であるユニコでさえ、驚きを隠せない様子でうろたえている。



「ユニコ、どういうことだ?」


「い、いえ、私も知りません! 何故か詠唱なしで魔法が発動して……えっとえっと 」



 どうやら、ユニコも分からないらしい。


 わかったことと言えば、前よりも明らかに詠唱時間が短い……いや、無いと言えることだ。後は、



「ユニコ凄い。魔物、カチンコチン」


 リーナが凍った魔物をつんつん突っつく。


 そう、見るからに威力も格段に上がっている。その証拠に、この氷は溶ける素振りを見せない。また、足元を凍らせる魔法が全身を凍らせているという点からも、威力が上がっている証だろう。



 でも、なんでこんな急に強くなったんだ。


 ――いや、まてよ。



「もしかして、あの本が関係してるのかもしれない」


「本……ですか? あの消えた本のことですよね?」


「ああ。あの時、確かユニコ、本に触れたよな?」


「言われて見れば……確かに触れました!」


「もしかするとその時、本に隠された力をユニコが受け継いだとか、もしくは吸収したとか、かもしれない」


「……にわかに信じられない話ですが、確かにその可能性はありそうですね」


 そう。確かに信じられない話だ。が、もう既にいろいろ信じられないことが起こりすぎている。これくらい起こっても、今更不思議ではない。



「一応、火属性と地属性の魔法も試してみよう」



 ――ということで、そこら辺にいる適当なデザートスコーピオンに魔法を放った訳だが。



 結果、ノー詠唱、ハイ火力。


 火属性魔法ではデザートスコーピオンを灰にし、地属性魔法では大地にヒビを入れた。



 一言、言いたい。


「強すぎる!!」


「そうですね。私もびっくりです」



 これなら、俺等の出番ないんじゃないか?


 まあ、それはそれで俺にとってはおいしい話ではあるんだけどな。


 と、そう考えている内にリーナが俺の目線に来る。


「どうかしたか?」


「コウタ、のどかわいたぁあ」


「えーと、実は私もです」


 そうなんだよな。ずっと灼熱の砂漠にいるから、そりゃのどもかわく。が、残念なことに水がない。こりゃ、次からは水を持参しないとな。



「どっか、砂漠だったらオアシスみたいな所ないのか?」


 砂漠といえば思いつくのがオアシス。水があって木が生えているのが印象的だ。このダンジョンにもあってほしいところだが。


「――って、あの遠くのところ、木が生えてないか?」


「うーん、あっ。確かにある!」


「木が生えてるってことは、近くに水があるかもしれない。行ってみよう」



 ということで、とりあえずユニコ強すぎ問題は一旦保留にし、オアシスを目指す。



 着いた先は俺の読み通り、水が湧き出ていた。周りには数本の木々が生えており、オアシスって感じがする。


「コウタ、お水があるよ!」


 リーナも待望の水にテンションが上がっているようだ。


「よし。ここで一旦休憩しよか」


 と、気を抜きかけた時、



「ん、なんだ?」



 突然、大きな地響きが俺達の地面から聞こえてくる。それは今も継続していて――


「地震か? ……いや、この感じは」


 まるで、地面から何か大きいものが出てくるみたいな感覚。


「リーナ、ユニコ、離れろ!」



 俺の叫びに2人は瞬時に後ろへ下がる。と、同時に地面から巨大な何かが出てきた。


「ブォオオオオオオオオオオオ!」



「……でけぇな、こいつ」


 地面から出てきたのは、例えるなら超巨大な亀。テレビで見たことのあるでかい亀なんか比じゃないくらい、とにかくでかい。茶色い皮膚に砂漠の色によく似た甲羅。


 どうやら、オアシスだと思っていた場所は、こいつの甲羅のてっぺん付近だったようだ。紛らわしすぎる。



 てか、こいつがボスだとしたらどう戦えばいいんだよ。――いや、まてよ。



「ユニコ、いけるか?」


「はい。とりあえず、火属性魔法で一度牽制してみます」


 ユニコが魔法を放つ姿勢をとる。


「メテオストライク!」



 上空から隕石のようなものが、巨大亀目掛けて落下し、当たる。



「ブォオオオオオオ!!」



 魔物の悲鳴がしばらく続いくが、やがて行き途絶えた。



「やりました!」



「――――――」



 牽制とは、一体なんなんだろう。



 俺とリーナは、ただ呆然と燃えている亀の死骸を眺め続けた――






 あっ、ちなみにその後、亀の死骸から転送機を発見し、無事に家に帰ることが出来た。


 一応、めでたしめでたしってことにしておこう。






コウタ

「これ、俺の出番なくね?」

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