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1年、ダンジョンでくらしたら強くなってました  作者: aoiro
1章 1年、ダンジョンでくらす
13/18

13話 スキンシップ

 ――その後、リーナから、ユニコについて聞いた。


 リーナ曰く、どうやら、ユニコは魔物のなかでも"希少型"というものらしい。魔物の中でもごく稀に生まれる異出した存在。角がなかったユニコもその1種というわけだ。それでも、希少型から人の姿になる、という事例は聞いたことがないと言う。


 何はともあれ、こうして実際に起きてしまっているのでなんとも言えない。考えるのが無駄に感じてくる。




 ――起きた時間が朝だったので、とりあえず、朝ごはんを作るためリビングへと向かう。


「コウタ様はお料理も出来るのですか? 」


 そう聞いてくるはユニコ。

 この状況を完全に、とまではいかないが、だいぶ落ち着いてきている。


「ああ。暇な時とか、よく家で作ってたりしたからな」


 何を隠そう、中学から友達がいなかった俺はほとんどの時間が暇だったわけだ。休みの日は基本的に家。ゲームしてるか料理してるかの2択だったな。


「コウタの料理、見たことない料理だけど、すごい美味しい」


「見たことない…とは、どういうことでしょうか?」


「あー、……俺の住んでたところ、すげー田舎だったからかな? たぶん見たことない料理が多いと思うよ」


 まぁ、さすがに『別の世界の料理です』とは言えないだろう。


「それは楽しみです! 宜しければ私も手伝いますよ」


「おお、ありがとう。助かるよ」


「むぅ、リーナも手伝いたいけど、足でまといになるだけ……」


「大丈夫。気持ちだけ貰っておくから」


 少し不機嫌になるリーナを励ます。

 リーナは料理が出来ないらしい。センスがない、と言うよりか、単純に知識がないだけかもしれない。今度、何か一緒に作ってみるか。


 ちなみに、俺が寝ている間、ユニコがこの家にある本を読んで、その本の中で覚えた料理を作ってくれていたらしい。

 物覚えもよく、料理まで出来るという。なんとすばらしい子なんだろうか。


 と、そうこう会話しているうちに朝ごはんが出来上がった。


 メニューはいたってシンプルな物。

 白飯に焼いた魚。半熟卵焼き。

 そして、朝ごはんには、かかせないものがもう1つある。


「……このスープみたいなのは何でしょうか?」


「うん。リーナも気になった」


 ユニコとリーナが不思議そうに、それを覗く。


「いや、スープっていうか、味噌汁だ」


 味噌汁。朝ごはんには欠かすことの出来ない存在であり、俺の大好物である。日本人は米と味噌汁でしょ。これを飲まなきゃ1日が始まらない。


「まぁまぁ、飲んでみて。美味しいから」



「いただきます」

「はい、では……」


 リーナはためらうことなく、ユニコは恐る恐るといった感じで飲む。


「美味しい」

「これは、確かに美味しいです」


「そうだろう、そうだろう。この絶妙な味噌の配分がポイントだ。これ以上でもこれ以下でもこの味は出せない」


「コウタ様。今度教えてください。私も作ってみたいです」


「おう、いいぞ」


 まぁ、味噌汁はいいとして、さっきから少しきになっていることがある。


「ところで……なんで俺に様をつけるんだ。普通にコウタでいいのに」


「そうですね……私、コウタ様とリーナ様を尊敬しているんです」


「尊敬?」


「はい。あの日、コウタ様とリーナ様に命を助けられて、だから、様を付けさせてください」


「……なるほどね。まぁ、好きに呼んでいいよ」


「リーナも、それでいい」


「――はい、ありがとうございます。リーナ様、コウタ様」


「さ、冷めないうちに食べよう」




―――――

―――――

―――――




 朝ごはんを食べ終わり、片付けにはリーナも手伝ってくれた。後で、えらいえらいしておこう。


 それより、前までは朝ごはんを食べたらダンジョンに行っていたが、まだ、俺の体は完全に復活したわけでは無い。ダンジョンの攻略は明日以降でもいいだろう。


 なりより、次からの戦闘ではユニコも加わることになる。戦闘における役割、ポジションを決めるのはとても重要である。


「――ということで、陣形を決めておこう」


「陣形……ですか。具体的にはどうやって決めるのでしょうか?」


「そうだな。例えば、リーナは短剣で戦う近接系だから前衛。俺は罠を使ったり回復にも回れる中衛。ユニコはまだ戦いに慣れていないだろうから、後ろで援護したりできる後衛。みたいな感じだな」


「――あっ。そういえばコウタ、風を使ってたような気がしたんだけど」


「ああ。風使いのジョブを取得したんだ」


 それを聞いた2人の表情は、特に驚いた様子もなく、「凄いですね」くらいの感じだ。

 意外と素直に受け入れるんかい。


「3つもジョブを持ってる人、初めて見た。コウタ、神様?」


「おい、俺をあんな変な喋り方のやつと一緒にしないでくれ。――俺は俺だ」


「なんか、名言っぽい」


 名言でいうか、ただカッコつけただけだけだ。そういう意味では、迷言と言えなくもない。


「まぁ、とにかくだ。明日は、俺がさっき話した陣形でダンジョンに挑むから、頼むよ」


「うん。わかった」


「バッチリ活躍してみせます」


 リーナはともかく、ユニコはやる気満々なようだ。まぁ、やる気があるのは悪いことではない。


「……それはそうと、3人で行動するにはチームワークが必要不可欠だよな?」


「……そうですね。でも、どうしたらチームワークをあげることが出来るのでしょうか?」


 その質問を待っていた。


「それは簡単なことだ。――スキンシップってやつをすればいい」


「スキンシップ……なるほど、さすがコウタ様です」


 どの辺がさすがなのか分からないが、うまくのってくれたぞ。


「ということで、その……耳を触らせてほしいんだけど……」


 俺の目当ては、そのモフモフとしたケモ耳である。人生で1回でもいいから触ってみたかったんだよな。


「そういうことでしたらいいですよ」


「えっ、いいの? じゃ、遠慮なく」


 ユニコの気持ちが変わる前に触らせてもらう。


 モフモフしていて、たまにピクっと動くのが最高にいい。今まで犬や猫の耳を幾多となく触ってきたが、これは段違いの触り心地がある。


「んっ……んんん」


「あっ、ごめん。くすぐったかった――って、顔赤いけど大丈夫か!?」


「はっ、はい。――大丈夫です。お気になさらず」


「そうか、ならいいが……」


 もしかすると、耳が弱点、なのかもしれないな。次に触る時は気をつけておこう。



 ――っと、後ろからじっとこちらを眺めている視線を感じる。


「うぅっ……リーナだけ仲間はずれ……ぐすっ」


「あぁぁ、別にわすれてないから! こっちおいでリーナ」


「ぐすっ……うん」


「俺の中で1番大切なリーナを忘れるわけないだろ」


 リーナの頭を撫でながら慰める。泣き顔のリーナも可愛い――けど、出来れば泣かないで欲しい。


「うん。……リーナもコウタ、好き」


「ありがとう、リーナ」


 よかった。いつもの笑顔モードのリーナに戻ってくれた。


「ふふっ。コウタ様とリーナ様は仲がいいですね。羨ましいです」


 ユニコが可愛らしく微笑みながら、こちらを眺めている。


「羨ましい、か。ユニコともこれから仲良くしていきたいからさ、よろしく頼むよ」


「はい、こちらこそよろしくです――」







 ――そして、この日彼は思った。


 スキンシップを日課にしよう、と――。

しばらく投稿できない日が続いてしまってすみません。

また、ちょっとずつ頑張っていきたいと思うのでよろしくです。

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