12話 渾身の一撃
遅くなってごめんなさい。
ここからは、また、コウタ視点に戻ります。
――コウタ視点――
「ソッコーでケリをつけてやる」
剣をドラゴンに向け、挑発する。
これ以上、リーナを不安にさせる訳にはいかない。それに、リーナの前でカッコ悪い姿を見せたくはない。どうせだったら、カッコイイ姿を見せたい。
そのためにも、俺はこのドラゴン――ニースへックとやらを倒さなくてはならない。
「ガアァァァァ」
ニースへックが怒りで吠えると、魔法で氷の矢をつくり、俺を目掛けて放ってくる。
「――突風っ!」
とっさに風をつくり、氷の矢を弾くことに成功する。
よし。これなら、相手の飛び道具を封じ込められる。
ここに来るまでに、それなりにこの力を使ってきたつもりだが、どうやらまだまだ伸びしろがありそうな力だ。最初、風使いを弱そうだと思っていた自分を反省させてやりたい。
「あんまり長々とできないからな。そろそろ決着をつけないと」
回復師は別として、罠師と風使いを駆使すれば、俺にだって充分に勝ち目はあるはずだ。
「ハァァァァァ、ハァ!」
とりあえず、斬撃を連続で繰り出す。
相手の飛び道具を封じ込めれば、こっちが距離をとって攻撃すればいい。
っと、思っていたが、ニースへックが慣れ始めたのか、徐々に斬撃をかわしはじめた。
これじゃ、こっちがジリ貧になるだけだ。アイツの動きを止める必要がある。となると……
「やるしかないな……」
あの巨体を吹きとばせられるかどうかは、正直、わからない。それでも、俺は出来ると、そう信じている。
それを実現する為にも、アイツに1度近づかなくてはならない。
「そうと決まれば、やっ!」
思いっきり地面を蹴りあげて走り出し、ニースへックとの距離を一気に縮める。
ニースへックも、右爪をつきたてて振りかぶってくるが、それよりも速く、
「突風!」
全神経を集中し、強い突風を出す。その風は、ニースへックの巨体をも動かし、軽く吹き飛ばすことに成功した。
「よし。思った通りだ」
風使いが使えると知ったあの時、Lv1の割には強い風を出せていた。これはあくまで予測だが、回復師、罠師のLvを合わせた、言わば総合Lvに応じた強さの風を出せる、と思ったわけだ。
吹き飛ばすことに成功したら次にやるべき事は1つ。
「落とし穴!」
吹き飛ばした先、ニースへックが落ちたところのピンポイントに落とし穴を設置。思い通りに罠にかかった。
ニースへックは、身動きがとれていない。この今がチャンス。全力を出すならここしかない。
「ハアァァァァァァ」
斬撃を繰り返し、たえずに出し続ける。
「もっと」
息継ぎをしてる暇なんてない。
「もっと!」
手を止めるな、動かせ。
「もっとっっ!!」
渾身の力を放った一撃が、ニースへックの龍鱗を真っ二つに斬り裂き、魔晶石へとかえた。
――終わったのか?
「コウタ!」
リーナが笑顔で俺に飛び込む。それを両手で支える。
「たお……したのか?」
「うん。すごい、コウタ。1人で倒すんだもん」
「ははっ。まぁ、こんくらい余裕だよ、余裕」
横で、ユニコが歩み寄って来るのに気づく。もう、歩けるくらいにはだいぶ良くなっているようだ。
俺も、ユニコの方に近付く。
「たぶん、リーナを守ってくれたんだよな? ……ありがとうな」
ユニコの頭を撫でながら、感謝を述べる。ユニコも元気に吠え、尻尾を揺らしながら喜んでいる。
と、そうしている時、不意に地面が揺れ出すと、地面から転送機が現れた。
「うおっ。どういう原理なんだよ……」
それに、ニースへックを倒したら現れたということは、どの道アイツを倒さなきゃだったわけだ。
まぁ、いいか。これで帰れるわけだし。
転送機の中は、ユニコも入るとだいぶ狭くなる。
そして、何度目かの感覚。目を開けると、いつもの光景。……この光景も、いつものと言えるまで来たか。
「戻ってこれた――うっ!」
突然、膝を地面につく。やっぱり、さっきの戦闘でかなり疲れが溜まっていたか。
ヤバイ。意識が――
「コウタ。コウタ、大丈夫!? ……へっ!?」
リーナの叫びと共に、俺の意識は徐々に薄くなっていって……
「コウタ様! しっかりしてくだ――」
――――誰だ、今の声?
▽△▽
「うっ…………ここは……ベットか?」
もはや見慣れた天井。ここは、どうやら俺の部屋のようだ。
えっと、確か……転送機の前で意識が途切れたんだったっけか? ということは、リーナがここまで運んでくれたのか……。
いや、まぁ、そこはいい。
周りを見る。と、リーナが椅子に座りながら、俺のベットに顔をのせて寝ていた。
「また、心配させちゃったな」
リーナの頭を優しく撫でる。
「……んっ、……コウタ!」
「あっ、ごめん。……起こしちゃったか?」
「大丈夫。それよりも、コウタの方は?」
「ああ、俺も、もう大丈夫。……なんかスッキリしてるし、もしかして結構寝てたのか、俺」
そう言って、ポッケに入っているスマホを見る。
「ふーん。……って、5日も寝てたのか、俺!?」
5日も寝てたなんて……衝撃的すぎる。
「あっ、そうだ。ユニコにも伝えてくるね」
そう言って、リーナは俺の部屋を出ていった。
階段を下っていく音が聞こえる。
俺の部屋は2階、リーナの部屋も2階だ。1階は、リビングやお風呂だ。ユニコはリビングにいるのかな?
と、しばらくして、階段をダダンと、ものすごい勢いで上がって来る音が聞こえる。
リーナか? そんな急がなくてもいいの……
「コウタ様!」
扉を豪快にあけた音が聞こえる。
「へっ?」
「ああ、無事に目覚められたようで、なによりです」
「ええっ……えっ?」
「どうされましたか? やっぱりどこかお怪我を……」
「いや、そういうわけじゃないんだけど……」
背中までのびた黒髪のロング、紅く輝いた瞳。リーナよりは背が高く、顔は幼さを残しつつも、どこか大人な印象がある。リーナが小学生と例えるなら、この娘は中学生と言ったほうがしっくりくる。
それに、
「えっと、ごめん。……誰?」
「ええっ! お忘れですか? この耳を見てください」
その娘は、ケモ耳をピクピクと動かす。
そう、この娘にはケモ耳がある。それに、この耳、どこかで見たことあるような……って、
「まさか……ユニコ、なのか?」
「はい! そうです。ユニコです!」
そう言って、満面の笑顔を見せるユニコ。それとは裏腹に、俺の脳内では?マークがぐるぐるとまわっていた――
見てくれてありがとう!
これからもよろしくです。




