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1年、ダンジョンでくらしたら強くなってました  作者: aoiro
1章 1年、ダンジョンでくらす
12/18

12話 渾身の一撃

遅くなってごめんなさい。


ここからは、また、コウタ視点に戻ります。








  ――コウタ視点――



「ソッコーでケリをつけてやる」


 剣をドラゴンに向け、挑発する。


 これ以上、リーナを不安にさせる訳にはいかない。それに、リーナの前でカッコ悪い姿を見せたくはない。どうせだったら、カッコイイ姿を見せたい。


 そのためにも、俺はこのドラゴン――ニースへックとやらを倒さなくてはならない。


「ガアァァァァ」


 ニースへックが怒りで吠えると、魔法で氷の矢をつくり、俺を目掛けて放ってくる。


「――突風っ!」


 とっさに風をつくり、氷の矢を弾くことに成功する。



 よし。これなら、相手の飛び道具を封じ込められる。


 ここに来るまでに、それなりにこの力を使ってきたつもりだが、どうやらまだまだ伸びしろがありそうな力だ。最初、風使いを弱そうだと思っていた自分を反省させてやりたい。



「あんまり長々とできないからな。そろそろ決着をつけないと」


 回復師は別として、罠師と風使いを駆使すれば、俺にだって充分に勝ち目はあるはずだ。


「ハァァァァァ、ハァ!」


 とりあえず、斬撃を連続で繰り出す。

 相手の飛び道具を封じ込めれば、こっちが距離をとって攻撃すればいい。



 っと、思っていたが、ニースへックが慣れ始めたのか、徐々に斬撃をかわしはじめた。



 これじゃ、こっちがジリ貧になるだけだ。アイツの動きを止める必要がある。となると……


「やるしかないな……」


 あの巨体を吹きとばせられるかどうかは、正直、わからない。それでも、俺は出来ると、そう信じている。

 それを実現する為にも、アイツに1度近づかなくてはならない。



「そうと決まれば、やっ!」


 思いっきり地面を蹴りあげて走り出し、ニースへックとの距離を一気に縮める。


 ニースへックも、右爪をつきたてて振りかぶってくるが、それよりも速く、


「突風!」


 全神経を集中し、強い突風を出す。その風は、ニースへックの巨体をも動かし、軽く吹き飛ばすことに成功した。


「よし。思った通りだ」


 風使いが使えると知ったあの時、Lv1の割には強い風を出せていた。これはあくまで予測だが、回復師、罠師のLvを合わせた、言わば総合Lvに応じた強さの風を出せる、と思ったわけだ。


 吹き飛ばすことに成功したら次にやるべき事は1つ。


「落とし穴!」


 吹き飛ばした先、ニースへックが落ちたところのピンポイントに落とし穴を設置。思い通りに罠にかかった。


 ニースへックは、身動きがとれていない。この今がチャンス。全力を出すならここしかない。


「ハアァァァァァァ」


 斬撃を繰り返し、たえずに出し続ける。



「もっと」



 息継ぎをしてる暇なんてない。



「もっと!」



 手を止めるな、動かせ。



「もっとっっ!!」



 渾身の力を放った一撃が、ニースへックの龍鱗を真っ二つに斬り裂き、魔晶石へとかえた。



 ――終わったのか?



「コウタ!」


 リーナが笑顔で俺に飛び込む。それを両手で支える。


「たお……したのか?」


「うん。すごい、コウタ。1人で倒すんだもん」


「ははっ。まぁ、こんくらい余裕だよ、余裕」


 横で、ユニコが歩み寄って来るのに気づく。もう、歩けるくらいにはだいぶ良くなっているようだ。

 俺も、ユニコの方に近付く。


「たぶん、リーナを守ってくれたんだよな? ……ありがとうな」


 ユニコの頭を撫でながら、感謝を述べる。ユニコも元気に吠え、尻尾を揺らしながら喜んでいる。


 と、そうしている時、不意に地面が揺れ出すと、地面から転送機が現れた。


「うおっ。どういう原理なんだよ……」


 それに、ニースへックを倒したら現れたということは、どの道アイツを倒さなきゃだったわけだ。


 まぁ、いいか。これで帰れるわけだし。



 転送機の中は、ユニコも入るとだいぶ狭くなる。


 そして、何度目かの感覚。目を開けると、いつもの光景。……この光景も、いつものと言えるまで来たか。


「戻ってこれた――うっ!」


 突然、膝を地面につく。やっぱり、さっきの戦闘でかなり疲れが溜まっていたか。



 ヤバイ。意識が――


「コウタ。コウタ、大丈夫!? ……へっ!?」


 リーナの叫びと共に、俺の意識は徐々に薄くなっていって……


「コウタ様! しっかりしてくだ――」



 ――――誰だ、今の声?









▽△▽









「うっ…………ここは……ベットか?」


 もはや見慣れた天井。ここは、どうやら俺の部屋のようだ。


 えっと、確か……転送機の前で意識が途切れたんだったっけか? ということは、リーナがここまで運んでくれたのか……。


 いや、まぁ、そこはいい。


 周りを見る。と、リーナが椅子に座りながら、俺のベットに顔をのせて寝ていた。


「また、心配させちゃったな」


 リーナの頭を優しく撫でる。


「……んっ、……コウタ!」


「あっ、ごめん。……起こしちゃったか?」


「大丈夫。それよりも、コウタの方は?」


「ああ、俺も、もう大丈夫。……なんかスッキリしてるし、もしかして結構寝てたのか、俺」


 そう言って、ポッケに入っているスマホを見る。


「ふーん。……って、5日も寝てたのか、俺!?」


 5日も寝てたなんて……衝撃的すぎる。


「あっ、そうだ。ユニコにも伝えてくるね」


 そう言って、リーナは俺の部屋を出ていった。

 階段を下っていく音が聞こえる。


 俺の部屋は2階、リーナの部屋も2階だ。1階は、リビングやお風呂だ。ユニコはリビングにいるのかな?



 と、しばらくして、階段をダダンと、ものすごい勢いで上がって来る音が聞こえる。


 リーナか? そんな急がなくてもいいの……


「コウタ様!」


 扉を豪快にあけた音が聞こえる。


「へっ?」


「ああ、無事に目覚められたようで、なによりです」


「ええっ……えっ?」


「どうされましたか? やっぱりどこかお怪我を……」


「いや、そういうわけじゃないんだけど……」


 背中までのびた黒髪のロング、紅く輝いた瞳。リーナよりは背が高く、顔は幼さを残しつつも、どこか大人な印象がある。リーナが小学生と例えるなら、この娘は中学生と言ったほうがしっくりくる。


 それに、


「えっと、ごめん。……誰?」


「ええっ! お忘れですか? この耳を見てください」


 その娘は、ケモ耳をピクピクと動かす。


 そう、この娘にはケモ耳がある。それに、この耳、どこかで見たことあるような……って、


「まさか……ユニコ、なのか?」


「はい! そうです。ユニコです!」


 そう言って、満面の笑顔を見せるユニコ。それとは裏腹に、俺の脳内では?マークがぐるぐるとまわっていた――





  

見てくれてありがとう!

これからもよろしくです。


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