10話 風使い
途中、視点がリーナになります。
「――つぅ、いててて…」
怪我を負いながらも、なんとか起き上がる。
この木々と草むらが、クッション代わりになってくれたおかげで助かった。あんな経験、もう一度やれって言われても二度と御免だ。
「ヒール」
とりあえず、自分の傷を回復。疲れは……いちいち気にしている場合ではない。
この時間にも、リーナは上で戦ってるはずだ。だとしたら、少しでも速く戻らなくてはいけない。
自分がさっき、落ちてきた場所を見る。信じられないほど高い。この高さから落ちてきたと考えたら、よく生きていられたと思う、俺。
「さすがに、この高さじゃ登れないよな……」
木登りとはわけが違う。命綱無しだと無理だ。いや、命綱があったても登りたくないんだけど。
こうなったら、上に登る道を探すしかない。
と、思ったその時――
「グルゥゥルッッ」
草むらからユニコーンウルフが3匹、威嚇しながら現れた。
「3匹……さすがに勘弁してくれ……」
ただでさえ、罠が効かなかったところだ。あれか? 野生の勘ってやつか。
どちらにしろ、罠が通じないとなると、俺の攻撃手段がなくなる。一応、剣はあるが、俺の剣術なんて見よう見まね、素人そのもの。素早い相手に通じるかどうかと言われたら、まぁ、間違いなく無理だろう。
どうすればいい? 逃げるか? いや、相手は獣。追いつかれるのがオチだ。
そう言えば、前にもこんなピンチがあった。そのときは……そう、ステータスを確認していた。
(ステータスオープン)
そして、新しいジョブがあることに気づく。
ここまでくると、解放条件も気になってくる。……1回死にかける、とかじゃないよな?
まぁ、そんなことよりも、今は――
―――――――――――
風使い Lv1
スキル
風操作、
―――――――――――
新しいジョブが増えていた。それはうれしいが、しかし――
「風……使い?」
風を使った能力――ゲームやアニメなんかでは、無いことはないがあまり見かけないな。
ということは、またマイナーなジョブなのだろうか。
いや、今はそんなこと考えている場合ではない。
既に、相手はこちらに向かって突進している。
「ああ、もう、なんでもいい! 風操作!」
目の前に飛び出したユニコーンウルフ3匹に放つ。と、突風が3匹を飛ばした。
「うお。……すげーなこれ」
風の力はLv1でも充分に強そうだ。これなら、少しやってみたいことがある。
剣を抜く。
剣と風――出来るかどうかはわからない。が、
「ハアァァ!」
思いっきり剣を振る。けど、ユニコーンウルフに当たる距離ではない。しかし、狙いはある。
「いけ、斬撃!」
風を操作し、斬撃を飛ばす。目には見えないが、飛び出た斬撃は、起き上がったユニコーンウルフを3匹まとめて斬り裂き、倒すことに成功。
これは……純粋に。
「カッコイイ!」
しかも、これなら戦力不足の心配がない。これで、心置き無くリーナを探せる。
「よし、待ってろよリーナ。今行くからな」
▽△▽
――リーナ視点――
コウタが落ちた崖を見つめる。
「コウタ……ううん。コウタなら大丈夫」
コウタは絶対に生きてる。なら、今出来ることは……コウタを探すこと。
とにかく、下に続く道を探しながら森を進む。
が、
「ここ、どこ……」
歩いて5分で道に迷ってしまった。
と、不意に、草むらがざわめく。
「むっ」
その草むらを警戒……するも、現れた姿が――
「くぅーん」
姿はユニコーンウルフ。しかし、角がなく、体型も小さい……たぶん子供。それから、かなり衰弱している。
「お腹すいてるのかな?」
食べ物――さっき、コウタと一緒に採った果物があった。
「これ、食べて」
バックの中から赤い果物と緑の果物を差し出す。コウタが食べられる物と言っていたから、たぶん大丈夫。
この子もちゃんと食べてくれた。
「よしよし、いい子。いっぱい食べて」
毛並みを優しく撫でる。サラサラとした手触りで意外と気持ちいい。
そう言えば、ユニコーンウルフは群れる習性があると聞いた。でも、この子は1匹。たぶん角がないせいで仲間だと思われなかったんだと思う。
「君も、1人で生きてきたんだね」
食べ終わったユニコーンウルフは元気を取り戻した。
「よかった。……それじゃあ、またね」
コウタを探そうと、再び歩き始める。と、
「くぅーん」
ユニコーンウルフが、悲しそうな眼差しをこちらにむけてきた。
「うっ、今君に構ってる……」
「くうん」
ユニコーンウルフは、私が進もうとしていた道と別の道を向き、吠えた。
「ん? ひょっとして、道を教えてくれるの?」
「くぅーん」
どうやら、道を教えてくれるらしい。
「じゃあ、お願いね……名前、付けてたほうがいいかな」
名前……ユニコーンウルフだから……
「ユニコ。君は今日からユニコだよ」
「くぅーん」
尻尾を振っているから、たぶん、喜んでるのかな?
かくして、リーナとユニコの森を脱出する旅が始まった――
次回もリーナ視点です。




