1話 異世界はいつでも突然
初心者の気まぐれです。数人が見てくれたらなぁ程度の気持ちで書いています。
学校の朝の時間。俺は教室から数メートル離れた階段にいた。
「きょ、今日はこれくらいで勘弁してくれないかな……」
俺は彼、神取 駿に一万円札を差し出した。
「アア!? 何言ってんだテメェ。俺よぉ、三万持ってこいって言ったよなぁ!」
むねぐらを捕まれ、おもいっきり持ち上げられる。
「あ、あし……明日、もってくるから、今日のところは……」
「――チッ。明日、ちゃんと持ってこいよ」
そう言うと、神取は胸ぐらを放して立ち去った。
△▽△
俺の名前は城山 康太。高校一年。
自分で言うのもなんだが顔は中の中だと思う。部活はしてないが運動神経は良く、成績もそこそこだ。
しかし、この気弱な性格のせいで、クラス内でも浮きに浮きまくり、挙げ句の果てに、さっきのようにカツアゲまでされている。
俺は乱れた制服を整え、やっとのことで立ち上がり、教室に向かう。
これが俺、城山 康太の日常だ。もう何度目になるかわからない。それでも、慣れるとこんなものかと思える。
「おい、城山。大丈夫か? 顔色が良くないぞ」
教室に入って席につくなり、俺に心配の声をかけてくれたのは、隣の席の武田 大地。
人一倍、正義感が強いからか、よく俺を気にかけてくれる。髪を金髪にしているから一見怖く見えるが、根はとても優しい人だ。
「ほんとだ。 具合悪いなら保健室いったほうがいいよ」
後ろを振り向き、大地に続いて俺を気にかけてくれるのは姫野 恵美。
クラス一の美少女であり、優しい性格からか、男子はもちろん、女子からも絶大な人気がある。噂ではファンクラブまであるとかないとか。
ブラウン色の肩までかかるロングヘア。少し幼さが残る童顔に、今にもこぼれ落ちそうな大きな瞳が優しげにこちらを見つめて、
「一緒に保険室行く?」
「いや、大丈夫だから。気にしないで」
「ホントに?」
姫野が顔を近づけて言う。
そんなことされたらちょっとドキッとする。
「だいしょぶ、だいしょぶ。へーきへーき」
「まぁ、困ったら何でも言ってくれよ。力になるからさ」
「う、うん。ありがと、大地」
――そんな日常は長くは続かない
教室の床一面に、幻想的な紋様が一瞬にして浮かび上がる。
「なん――」
だ、と言う前に、その模様は光を放ち、俺は徐々に意識が遠ざかっていった。
――――――
――――――
――――――
「うっ、つっ……」
どこか肌寒い感覚に目を覚ます。
確かさっきまで……そうだ!急に教室が光だして
「――どこだここは?」
見渡す限り薄暗く、異様ともいえる不気味な気配に身の毛がよだった。
周りにはクラスメートが何人もいる。俺以外もかなりの人が目をさまし、身に覚えのない場所に混乱していた。
それもそのばず、俺たちはさっきまで教室にいたはずなんだ。それがどういうわけか、薄暗い洞窟のような場所にいる。
そして、最も気になったのが、地面に描かれている魔方陣のようなもの。その模様が、クラス全員を覆うように広がっていた。この模様もさっき教室で見たものと同じもので――
まさしく異世界召喚、というやつだ。それもクラス皆が召喚されるパターンの。しかし、そんなことが本当に起こるものか?
「皆、目覚めたようじゃな」
渋い声が発せられた方を振り向くと、そこには杖をついた老人がいた。しかし、ただの老人ではないのは誰がどう見ても明白だ。
頭には王冠。背中には赤いマントを羽織っており、手に持っている杖には青白く光る宝石がはめ込まれている。漫画とかで見る王様のイメージそのものだ。
「テメェェ――何なんだよこれ! 説明しろよクソジジィ!!」
そんな時、怒りを露にした口調で一歩前に出たのは神取。さっき俺にカツアゲしたやつだ。
俺らが住んでいる場所では、神取の名を知らないものはいないんじゃないかってほど、悪い意味で有名である。中でも有名なのは、ケンカした相手を全治2カ月にしたという話。
そんな彼の言葉を、王様は目を瞑って聞き流した。それを観かねてか、神取がさらに前に出る。
「おい、黙ってねぇでなんか言えやカス!!」
「小僧が、一度なら見逃したものの……」
「アアァ、テメェ、ナメてんのかゴラァ!」
遂にキレたのか、神取が拳を突き上げて殴りかかろうとした、その瞬間、
「ナメてるのはお前のほうだ」
瞬間移動のように現れた、1人の騎士が神取を切り裂き、そう吐き捨てた。
まさに一瞬。それこそ、瞬きをしたら神取は斬られた。
斬った本人、見た目から推測するに40歳前後のおじさんだ。しかし、その見た目を疑うほどの筋肉質な腕。間違いなく戦士か、英雄と言われても不思議ではない風格があった。
「ロズベル王に逆らおうとした者は皆、こうなると心得よ!」
「まぁ、ゼクス、落ち着け。これでもう彼らも逆らわんじゃろう」
ゼクスと呼ばれた者が叫び、それを王、ロズベルがなだめる。
確かにロズベルの言うように、俺を含めたクラスメート全員が、恐怖を、不安を、緊張を与えられた。
「一列に並べ! クズクズするな!」
ゼクスの叫びに、俺らは従わざるを得なかった――
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