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明風 第一部  作者: 舞夢
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婚儀

婚儀は水無瀬御殿で、形式にのっとり典雅に行われた

婚儀に招かれたものも多彩であり、明風と楓に関わった全ての者が席をつらねた。

大原の明運、明信および寺の僧侶たち。

お妙、茜も笑顔である。嵐盛も隣に座る。

八瀬の邑の主だった者たちも座っているが、半数以上は検非違使、六波羅、叡山の僧兵たちと水無瀬御殿の警護を固める。

高僧も見える。法然、親鸞、栄西、慈円が並んで座っている。

様々な寺社からの出席も多い中、鴨長明は神職の一人として座っている。

後鳥羽院の威光であるのか、高位の公家も多く座る。

後鳥羽院の並びに、鈴音、粛子内親王、建礼門院が座る。

建礼門院は鈴音と、八瀬の邑の男たちの厳重な警備の中、水無瀬へ来た。

宴席の最後になり、後鳥羽院が立ち上がった。

全員を前に話をするらしい。


「よう、集まられた」

「わが秘子の婚儀である」

「秘子である理由は、特に語らない」

「あえて言うならば、残念ながらこの世は争乱を極め、世情も荒んでいた」

「その中で、どうしても秘子を欲しかった」

「いつ何時何があるのかわからない状況の中、秘子とし、大原の明運に預けた」

「明運は、これほどまでに立派に育て上げてくれた」

「それについては、感謝の至りである、必ずや、高位をもって迎えるものとする」

後鳥羽院は、明運に感謝の意を伝えた。


「それから、この明風に乳を与えてくれたお妙、明風の妻の母である」

「お妙については、我が子に乳を与え、健康な身体の礎をつくってくれた」

「このことについても、感謝の至りである」

「それから、法然殿、親鸞殿、栄西殿にあたっては、これからも明運と協力のうえ、十分な指導を願いたい」

後鳥羽院による参列者へのお礼が続いた。


「それから、本当にありがたいことである」

後鳥羽院の顔がやわらかくなった。

「さて、明風の妻は建礼門院様の姪にあたります」

「そして、かたじけなくも、国母建礼門院様がご出席なされております」

全員が驚いた。


「本当に・・・、あさましくも下賤な、鎌倉方の所業にご苦労なされる中、明風と楓ににこのうえないご愛顧をいただきました」

「このことについても、心より深謝いたします」

「これからも、末永くわが子と楓を見守っていただきたい」

建礼門院の目から涙がこぼれている。


「それから」

後鳥羽院は口調を少し変えた。固めの口調になる。

「このわが子に対して、親王を宣下しようと考えていた」

全員が背筋を伸ばした。

「いや、そう考えていたのであるが」

後鳥羽院は明風を一瞬見た後、続けた。

「どうしても、今は受けないという、理由は、もう少し修行を積みたいとのことだ」

「簡単に納得しないのがわが子である、まあ血筋だ」

後鳥羽院は、苦笑する。

「確かに本人からすれば仏門の修行も、風雅の修行も道半ば、中途半端である」

「まだまだ世情も危ない部分もある、今は宣下をしないこととするが、あくまでも今はという意味で理解されたい、」

「そして、この子は、不思議な力を持つという」

「これは、明運や建礼門院様、その他指導にあたった法然殿、親鸞殿、栄西殿が同じことを申しておられる」

「それに出町柳や町中での弔いの件で、有名であろう」

「それゆえ、この子は安全に育て上げたい」

「皆の者は、明風と楓に一層の警備、指導を望む」

全員がその趣旨を理解したうえで、華やかな祝宴となった。

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