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明風 第一部  作者: 舞夢
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寂光院に到着

ほどなくして車は石段の前で止まった。

楓樹に囲まれたゆるやかな勾配の石段が見える。

石段の上には山門が見えている。

明風はようやく目を覚ました。

いつもの愛らしい笑顔に戻っている。


「お目覚めご機嫌ね」

茜も少し安心した様子になった。

「大丈夫だよ、茜おばさん、もう泣かない」明風

「この子、重くなったでしょ」茜

「でもそれがうれしい、この子が私の生きがい」

お妙は明風をおろした。


「どうなることやら・・・」

明運は先頭に立って石段をのぼる。

明運は、どうしても先ほど見せつけられた明風の「力」が気になっている。

「何かを見通す力が、あるのかもしれない」

ただ、今日お会いする「お方」にとって、その「力」がどうなのか・・・

明運は、いささか不安も感じる。

「大丈夫だよ、明運おじ・・・」

耳の中に茜の声が飛び込んできた。

例の無声の会話がはじまった。


「大丈夫とは」明運

「明運おじのお寺に来た時のこと覚えている?」茜

「ああ、かなりびっくりしたが・・・」明運

「いや、そういうことじゃなくって」茜

「じゃあ、何だ」明運

「あの子、落ち込んで、フラフラのお妙さんに笑いかけた」茜

「うん」明運

「あの笑顔はどんな人でも癒す力がある、あのお妙さんを癒したんだから・・・」

「明風は何か不思議な力、それも出会った人を幸せにする力があると思う」茜

「うん、そうだな。それを信じたい」明運


明運と茜は無声の会話を交わしながら、石段をのぼっていく。

お妙と明風がそれに続く。

明風は相変わらず笑顔のまま。


石段をのぼりきると真正面に本堂が見える。

左手には池。

色とりどりの花が咲き、池のわきに姫小松も立っている。


「さすがきれいなお堂ねえ・・・」

茜が声をあげた。

「この風景は、ある意味この世の楽園だなあ」

明運も感じ入っている。

お妙も明風も笑顔で風景に見入っている。

本堂の中から一人の若い尼が顔を出した。

年齢は二十三、四歳だろうか。

明運を見て、頭を下げた。

その後、明風を見た。

少し涙ぐんでいる。


一行は若い尼の導きで本堂にのぼった。

「今、お呼びいたしますので、しばらくお待ちください」

若い尼は会釈をして出ていった。

本堂の中に四人だけとなる。


「また何か感じているのかな」茜

「いや、わからん」明運

「もう、成り行きまかせだね」茜

「まあ、この子のことだ、悪いほうにはいかないだろう」明運

茜と明運が無声会話を続けている。


「あっ、来られたみたいだ」

明風が声をあげた。

確かに足音が近づいている。


「三人かなあ・・・さっきの女の人と、すごく偉い女の人、それと・・・」

明風はお妙の顔を見た。

「それと?」

茜も明風につられてお妙の顔を見る。

「うん、すごく良かったね」

何故か、明風はお妙を見つめている。


明運が目を見開いている。

明風に、また何かが見えたのだろうと思う。

しかし、その何かが明運にはわからない、想像もつかない。

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