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明風 第一部  作者: 舞夢
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後鳥羽院の招き

「どうして、ここに?」

明風は楓がここにいる理由がわからない。

そもそも大原の寂光院で建礼門院と暮らしているはずである。

「あのね、あなたのこと心配だったから、嵐盛様にお願いして連れてきてもらった」

「もちろん、建礼門院様の書状を添えてね」

楓は「理由」を話した。

しかし明風は、どうにも理解できない。

 そもそも、大原の明運の寺を出た時には、水無瀬に来る予定は無かった。

おそらく師匠明運も考えていなかったはずだ。

それなのに、見計らったように、建礼門院様の書状を添えて、楓がこの水無瀬、そして明風の寝所にいる。

楓のいう「理由」では、納得できないものがある。


「建礼門院様がいろいろと教えてくれたの」

楓は明風の身体を強く引き寄せた。

「後鳥羽様はね、行き当たりばったりのように見えて、計画的だと」

「野放図な振る舞いも多いけれど、なかなか、それだけではない」

「だから水無瀬の御殿に貴方を呼んだのも、何か思惑があってのこと」

楓は明風の身体をなでながら、低い声で話す。


「そう言っても、今日、水無瀬の御殿に来るって、どうしてわかったの?」

明風は、そもそもの理由がわからない。

「ああ、それは嵐盛様と後鳥羽様、建礼門院様のお話で決まっていたらしいの」

「ただ、法然様のところで一日伸びたけれどね、それも想定内だった」

「あなたの、お師匠の明運様には、出立の日だけを連絡して、水無瀬のことは言わなかったらしいけれど」楓

「どうして、明運様に言わないの?」

明風は、腑に落ちない。

「うん、明運様は、かなり厳格なお人、お寺とか、神社なら問題ないんだけれど」楓

「うん・・・」明風

「この水無瀬だと、絶対に反対される」

「ここは、何しろ派手、いろんな仏道とは関係の無い人が出入りする」

「明運様は、あなたが、そういうところにいくと、また、拒絶反応を示すだろう、だから行かないって言い張ることが確実」

楓は明風に絡めた腕の力を強くする。


「・・・うん・・・」

確かに、拒絶反応をはっきり示してしまった。

「宴席では、それでも我慢するかもしれないけれど」

楓は、明風の脇腹をつねった。

「痛い!」

明風は何故、つねられるのかわからない。


「建礼門院様が心配したのは、後鳥羽様のこと、夜中に、きれいな白拍子のお姉さんを、忍ばせることは決まりきっている」楓

「・・・そうなの?」

明風は、あまりよくわからない。

「いいから口答えしない、そこで、あなたが大原の里の時みたいに、拒絶反応をして、逃げ出して・・・、川に飛び込むかもしれない」

楓の声が少し湿る。

「・・・」

確かに、そんなことになると、自分でも思う。

「だから・・・」

楓は明風の胸に顔を埋めた。


「うん」明風

「私が夜伽、毎日添い寝をしなさいって。建礼門院様からの御言葉だけど」

「私だって、そうでないと、心配で仕方がない」

明風の胸は楓の涙で濡れ始めた。

「いつ頃決まった話なの?」明風

「うん・・・それは・・・」

楓は、顔をあげて明風を見つめた。

「あなたが、滝で倒れて、運ばれてきた時から、建礼門院様と後鳥羽様の間で、書状のやり取りがあって・・・」

「そもそもね、嵐盛様は明運様以上に自由に動くことができる」

「後鳥羽院様と建礼門院様の間で、以前から書状をやり取りしているらしいけれど、それは全て嵐盛様を通じてなの、その中で明運様には知らせていないこともあるらしい」

「それで日取りが決まったのは・・・」

楓の顔が赤くなる。

「うん」明風


「あなたと結ばれた日」

楓は再び明風の唇を奪っている。

明風と楓は、一晩中抱き合って眠った。

何も考えなかった。互いの愛おしさが二人を包んでいた。


気持ちのいい朝になった。

再び新調した二藍の直衣が準備され、楓が着替えを受け持った。

「うん、このほうが似合うかな」

楓は着替えを終えた明風を見て、にっこりと笑う。

「そうかな・・・」

明風も慣れない直衣ではあるが、楓の笑顔がうれしい。

「粛子様にも、お逢いしてきました」楓

「うん」明風

「とても、綺麗で、あなたに似ている」楓

「そうかなあ、時々、鋭いけれど」明風

「あなたには、それぐらいがいいの」

楓は、笑っている。

「とにかくお願いしますって言われました」楓

「・・・そう・・・」

明風はため息をつく。どうにもかなわない姉である。


「ああ、それから後鳥羽様の所へ」

「あなただけに話したいことがあるって」楓は真面目な顔になった。

「うん」明風

「すごく難しい顔なさっている」

楓は心配そうな顔になる。

「そう・・・」

そう言われても、聞いてみないとわからない。

明風は楓に案内されて後鳥羽院の寝所に向かった。

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