表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
明風 第一部  作者: 舞夢
42/81

明風の禅修行

「うん、言われる通りだ」

栄西は、驚いた。

明風の身体は座禅を組みながら、またしても光出している。

「それにこの書状の多さだ、差出人と言い・・・」

栄西は僧衣の中から数通の書状を取り出した。

まず、慈円、親鸞、法然それぞれから明風の安全を願う書状がある。


「建礼門院様までも」

確かに明風が建礼門院と親しいことは聞いていた。

建礼門院からの書状は数日前に、八瀬の邑の長、嵐盛により届けられた。

嵐盛は庭の「手入れ」として、突然やってきた。

そして「書状」を「とにかく内密に」とささやき、栄西の僧衣に忍び込ませた。

書状の中身は流麗な筆致ながら、明風の安全を切々と願っているものであった。

建礼門院は、明運に護られているが、鎌倉方からも「動静」を監視されている。

もし栄西が建礼門院の書状を保持しているとなれば、鎌倉方の余計な詮索を招く。

それ故、建礼門院は「庭師」の嵐盛に「因果を含めた」のだと思う。


「そしてこれだ」

栄西は未だその書状を開けない。

この書状も嵐盛から同じ日に届けられた。

建礼門院からの書状は僧衣に忍び込まされたが、この書状は平伏しながら渡された。

嵐盛の顔も緊張を極めていた。

それだから、栄西も開けようにも手が止まる。

「この御紋は・・・」

開けるにあたっては、一人ではどうしても不安だった。

明風の座禅をしばらく見てから、明運と見ることに決めた。


明風は相変わらずその身体を光らせながら座り続けている。

 「本当に清冽、清浄な光だなあ、見ている栄西も癒される」

栄西は、朝廷や鎌倉方、叡山や高野山、南都と言った様々な力の中で、新興の「禅」をいかにして「広めていくか」苦心の日々が続いている。

「明運殿にも申し上げたが。皆、面子と利欲の手下だ」

「自らを省みないものが、何故他人を教導できるのか」

そんな苦心の想いも、明風を見ている今だけは消えている。

「ほっとするなあ」栄西は、見ているだけで心が温かくなる。

この光は、いつまでも見ていたい光だと思う。

本来は禅の講義を行わなくてはいけないが、このままで栄西は幸せになってしまった。


「ふぅ・・・」

明風がゆっくりと目を開けた。

多少、身体を動かそうとするが、ぎこちない。


「おお、ご苦労さん」

栄西は明風に声をかける。

明風の動きのぎこちなさが、面白い。


「はい、しびれました」

明風は、身体を揺すりながら、正直に白状する。

その、苦しそうな顔が栄西には、ますます面白い。


「いや、まだまだ修行が足らんな、鍛えがいがあるな」

栄西は声をかけるが、明風はどうにもならない様子。

完全に脚がしびれているようだ。


「はい、修行が足りません」

明風は素直に頭を下げる。

「そうか、その素直さに免じて、少し質問を行う」

栄西は、目を見開いた。


「よく考えよ」

栄西による「公案禅」の修行が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ