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明風 第一部  作者: 舞夢
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明風の考え

「今度は縛りつけるわけにはいかない」

明運は少し離れて見守る八瀬の男たちを、目で制した。

「まあ、とりあえず無礼は許す」

明運は一応許したものの、相変わらず表情は厳しい。

検非違使たちは、先ほどまでの勢いは全く失せている。

むしろ明運の迫力に震えている。


「あくまでも、とりあえずだ」

「今回の明運と弟子明風の京の都歩きは、都の栄西様と連絡を取ってのことだ」

「とてもお前たちの手出しができる方ではないぞ」

「それに、明運が大原から出るときは、必ず八瀬の男たちが付き添うと考えよ」

「これもお前たち如きの武芸では、相手にならぬ」

「それに今回の都歩きは、叡山にも報告をしてある」

「これ以上何かあれば、容赦はせぬ」

明運は、厳しく検非違使たちに迫った。

明運と検非違使たちとの間に重苦しい沈黙の時間が流れた。


「明運様」

突然、明風が明運の隣に立った。

いつの間にか群衆をかき分けていたようだ。

明風は笑顔、輝きは消えていない。


「うん」

明運は、またしても明風の次の言葉が予想できない。

ただ、待つだけである。


「このお侍様たちは、検非違使様なのですか?」明風


「うん、その通りだ」

明運は、そう答える他はない。


明風はにっこりと笑った。

「それなら、これ程お集まりになった皆様と私たちを、守っていただきましょう」

明運と集まった群衆にとって驚くべき言葉である。

検非違使はその行状により憎まれ、「まともなこと」をして好かれることはなかった。

その検非違使に「全員を守っていただく」と笑顔で言う。


「うーん」

明運はうなった。

どう考えても検非違使たちは、ここで悪事を働くことは不可能である。

それなら、明風の言うように「全員を守らせる」ほうが、役立つのではないか。

検非違使たちの行状にも非があるけれど、憎むほど人は孤立する。

それならば、明風の言うようにしたほうが、現状では彼らも「生きる」のであろうと。


「うん、良い考えだ、検非違使殿、これ程の群衆だ」

「怪我人の出ないよう警備を願います」

明運は明風の考えを検非違使たちに伝えた。


検非違使たちの顔に安堵が浮かび、精気が戻った。

検非違使たちの一番前に立つ男がてきぱきと指示をして、群衆全体を守る隊形を取る。

出町橋も、それにより円滑に人が動き出した。

全員が明運と明風に手を合わせてから、歩きだす。

明運と明風は、全員に合掌をしながら、人が少なくなるまで見送っていた。


「さて、狭すぎましたね」

「次はもう少し広いところで」

明風がにっこりと笑う。

明運は満足そうに頷く。

「そうだな、では、もう少し歩くか」

明運と明風は再び歩き出した。


出町柳での騒ぎが広まっているのか、道の両側に、歩き出した明運と明風を見ようと、またしても人が集まってきている。

もともと京の都は人が多く集まるが、その中には物騒な者もいる。

好んで人に危害を加える輩もいる。

それだから治安を守る者が必要となる。

明運と八瀬の男たちは武芸が達者であるけれど、対処できる人数には限りがある。

この人の夥しい都では、力が衰えたとはいえ検非違使の警護により危険は減る。


検非違使たちも、真剣に警護をしているようだ。

真剣に警護しながらも、時折、笑顔で話しかける明風に笑顔で応えたりする。

「やはり検非違使の警護は役立つ」

「あの検非違使たちまで、癒してしまっている」

「不品行を重ねた男たちだが、眼が清くなってきた」

「あの明風の笑顔は、心を浄化する」

明運は検非違使たちの変化に驚いている。

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