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明風 第一部  作者: 舞夢
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明風と楓

明風が担ぎ込まれた日から、一週間ほど経った。

全身の傷もかなり癒え、身体を少しは動かせるようになった。

ただ、立ち上がると、まだ頭がクラクラとするらしい。

すぐに座り込んでしまう。

これも滝でひどく転び、頭を打ったためなのか。

「あの・・・」

明風は厠に行きたくなった。

「なあに?」楓

「厠に」

明風は小声である。これはなかなか恥ずかしい。

「まだ、無理よ、フラフラするし」

「それに、何を恥ずかしがっているの」

楓は認めない。

今まで一週間も「全ての世話」をしてきた自負がある。

しかし、明風は楓の言うことを聞かなかった。

よろけながら立ち上がり、少し足を引きずり、柱につかまりながら歩き出した。

楓に「見られること」が、本当に恥ずかしかった。

「もう、強情もの!」

そう言いながら楓は明風の後を追う。

とにかく明風が心配で仕方がない。

廊下に出た途端、明風の身体が再び大きくよろけた。

やはり、まだ脚の痛みが抜けず、上手に脚が動かない。

「ほら・・・もう・・・」

楓は明風を抱きかかえる。

「ごめんなさい」

明風は突然謝った。そしてかなり赤面している。

「え?」楓は驚いた。

明風の顔は、本当に真っ赤である、しかし真っ赤になる理由がわからない。

「あの・・・」

明風は楓の腕を振りほどこうとする。

「どうしたの?危ないよ」

楓は明風の動きの意味がわからない。

再び、明風が少し腕を動かすと、その腕が楓の胸に少し触れた。

「あっ・・・」

その瞬間、楓の身体に電流のような火花が散った。

そして、明風の赤面の理由を理解する。


「明風は、私の身体に触れることが、とても恥ずかしい」

「私はずっと必死に怪我の手当てをしていたから、そこまでは感じなかった」

「でも・・・」

楓も赤面し、途端に恥ずかしくなった。

楓自身、身体全体が熱くなった。

しかし、このまま厠に一人で生かせることは危険である。

また転んで怪我でもしたら元も子もない。

楓は恥ずかしがっている場合ではないと考えた。

楓としては、明風がどう感じようと、明風を支えなければならないのである。

「絶対だめ!」

楓はしっかりと明風を支えた。

身体のどこが触れようとかまわない。

「ずっと離さない」

楓の「決心」は、ここで固まった。


 さらに数日過ぎ、明風は以前よりは身体を動かせるようになった。

しかし、まだまだ痛みは強いようだ。身体の痣も紫であちこちに残っている。

楓が身体を拭くたび、痛そうな顔をする。しかし楓は丁寧に身体を拭いていく。

明風の着物は既にほとんど脱がされている。

明風はその顔を赤くし、痛みと恥ずかしさに耐えている。

身体を拭き終えると、楓は身体をやさしく揉んでいく。

明風は、恥ずかしそうな顔をしながらも、心地よさにうっとりとしてしまうようだ。

少しずつ身体の緊張がほぐれ、優しい顔になる。

楓は、そんな顔をする明風がたまらなく愛おしい。

建礼門院様に言われるまでもない、明風は自分のものにしたい。

建礼門院様は明風と夫婦になれと言われた。そして明風との子が見たいと・・・

楓は男を知らない。明風も女を知らないだろう。

「ちゃんとできるだろうか・・・」

知らないが故の不安がある。

「明風から」は、ありえないと思った。

明風は仏門であることを強く自負している。

男女のことなど、考えてもいけないと思っている。

建礼門院様の言葉を思い出した。

「明風は僧侶におさまる器ではない」

つまり、明風が仏門であることを気にする必要はないとのことだろう。

その深い意味はわからない。でも、建礼門院様を信じようと思った。

何より楓自身が明風を愛おしくて仕方がない。

明風の身体を拭いている時、自分の身体が熱くなる。

明風の身体を揉み、明風が心地よさ気な顔をすると、自分の身体も心地よくなる。

「この人と、夫婦になりたい、この人と一つになりたい」

「この人の身体は少し、心配だけど・・・」

楓は完全な回復が待ちきれなかった。

それに完全に回復すると明風は明運の寺に戻ってしまうかもしれない。

そうなると、なかなか機会は生じない。

「私、待ちきれない、身体も・・・」

明風のことを見るたび、思うたびに身体全体が熱くなるのである。


二週間が限界だった。楓は今夜にすると決め、いつもより念入りに自分の身体を洗った。

緊張して明風の寝ている部屋に入った。

今夜は火桶を普段より強くしてあり、部屋の中は暑い。

明風は汗を多めにかいているものの、ぐっすりと寝ている。

「明風・・・汗ひどいから、拭くよ」

楓の声がかすれた

明風はうっすらと目を開け、楓はゆっくりと明風の服を脱がせた。

いつもの通り下帯だけになった。ゆっくりと丁寧に全身を拭いた。

「今夜の着替えはないよ」

いつもは、汗がひどい時は着替えを持ってくる。

明風が驚いた顔をした。

「これも・・・」

ほとんど声がかすれ聞き取れない。楓は明風の下帯に手をかけた。

あまりの速さに、明風は抵抗することが出来なかった。

一気に明風の全てがあらわとなった。


「しっかり見て」

楓も自分の服を全部脱いだ。

「明風」

楓は明風の目を見つめた。

明風はしっかりと楓の身体を見た。

美しいと思った。清浄さすら感じた。

「痛いかな・・・」

「でも、私を信じて」楓はゆっくりと腰をおろし、明風を包み込んだ。


激しい動きはなかった。明風の身体が無理だったせいもある。

何か生まれる前から一つだったような、やっと元に戻ったような安心感に包まれた。

二人の息遣いに逢わせて動いているだけだった。

ゆっくりとゆっくりと心地よさは高まった。そして二人同時に頂点に達した。

「明風」「楓」お互いに呼び合った。

二人の身体が同時に激しく震え、楓はゆっくりと明風の身体の上に身体を預けた。

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