プロローグ
六月中旬、大学にある待ち合わせ場所としてある程度支持を得ている噴水で待ち人が現れるまで待機していた。疚しい気持ちはなく、純粋な気持ちで女性を呼び出したのだが、罪悪感が付き纏う。
馴れ馴れしく、踏み込んだ文章を送信してしまうとこれまでの人間関係が全て水の泡になってしまいそうな、儚い感情に支配された結果。「明日の昼休みに噴水前に来れますか?」とだけ書かれた不愛想な文章を送信してしまい、やんわりと訂正しようと追加文の構想を練っていると「わかった」とメッセージが画面上に表示され、そのまま放置してしまった。
まず、第一に彼女の連絡先を把握してしまっていることが申し訳ない。(嬉しいことではある)いくら欠席分のノートとプリントを渡したいだけとはいえ、他にも渡す方法があったはずだ。そう考えると自己嫌悪に陥ってしまう。
時刻は十二時手前。二限目がなく、暇を持て余していた俺は待ち合わせの何分も前からベンチに考える人の如く、何とも言えない微妙な表情と体制で腰をかけていた。
――そんな時、講義の終了合図を意味する鐘の音が響き渡った。
そろそろ来るのかなと、緊張しながら平静を保っていると、騒がしい足音がこちら側へ徐々に近づいてくる。まさかと足音が聞こえてくる方向に目を向ければ一人の少女が向かってきていた。
頭のサイズに合っていなくて目元が隠れるほど大きなベージュ色の帽子が特徴的な、小柄な少女。彼女の特徴でもある、長髪は帽子の中でお団子にでもされているのだろうか。
そして、帽子の隙間からはみ出す綺麗な艶のある髪は風に揺らされている。ここまで離れていても苺のように甘酢っぱく醸し出される香りがしてしまい、鼻孔を膨らませてしまう。
すぐに頭は理解した。彼女が待ち人であり、彼女が可愛いのは当たり前だという事実を。
目の前で距離を詰めて俺を見下すように彼女は佇む。心なしか機嫌が悪いように伺えた。時間がないのにわざわざ合間を縫って来てくれたことに感謝し、すぐに立ち上がり彼女に要件を伝えようとする。
「羽籠さん。 この前のことで……」
言い終わるよりも早く彼女――羽籠梢さんは会話を遮り俺に向かって叫んだ。目元を覆った帽子のせいで表情を確かめることはできなかった。だが、目は不等号で作れる顔文字のようになっていただろう。
「ぼくは、アイドルなんだからプライベートで話しかけてこないでくれっ!」
突如、かわいい怒号が響く。幸いなことに授業終了直後だったこともあり、周りに学生の姿は見えなかった。誰にも目視されていないことを確認すると、ホッとため息をつく。
どうやら、俺は女の子に怒鳴られてしまったらしい。
勢いで書き上げたものを放置するのが勿体ないと思い、投稿しました。少しずつ添削してお見苦しくならないように投稿していきます。
よろしければコメントなど頂けると幸いです。