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ヘリオスオーブ・クロニクル(旧題:刻印術師の異世界生活・真伝)  作者: 氷山 玲士
第四章・マイライト山脈の緊急事態
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獣車完成

 瑠璃色銀ルリイロカネの武器を受け取って、一夜明けた。

 今日はアライアンスの準備があるから、狩りには出られない。

 なので俺達はクラフターズギルドに行って、獣車を受け取る予定にしている。

 昼前には連絡が来るって言われてるから一度魔銀亭に戻って、アライアンスの集合場所を確認しなきゃいけないが、そこまで手間って訳でもないな。

 さらに今日はミーナもオーダーズギルドは休みなので、朝から機嫌が良い。


 それに準備と言ってもポーションの類はストレージに突っ込んであるし、プリムが回復魔法を使えるから、余程のことがなければ大丈夫だろう。

 さすがに部位欠損を治せるポーションはないから、これだけは注意しなきゃだが。


「おお、さすがに大きいな」


 普通の獣車は、奥行き5メートル、幅3メートル、全高2メートル程だが、俺達の獣車は奥行き6メートル、幅3メートル、全高2.5メートルと少し大きい。


「ジェイドやフロライトは今以上に大きくなりますし、異常種どころか災害種に進化する可能性もあるって聞いていますから」


 ヒポグリフ・フィリウス、ヒポグリフ・フィリアという希少種に進化していたジェイドとフロライトだが、最近はまた体が大きくなってきている。

 多分、4メートル近くはあるんじゃないだろうか。


「念のためですけど厩舎部の入口は改装できるように調整してありますから、ある程度の大きさでしたら何とかなると思います」


 フィーナが説明してくれるが、確かに獣車が大きいとはいえ、ジェイドとフロライトが中に入るためには、身を屈ませてもらわないといけない。

 今は何とかなると思うがこれ以上大きくなったりしたら、それこそ馬運車とかみたいな感じにしないとダメな気がする。

 それを予想して、厩舎の入り口だけ改装できるようにしてくれたってことだから、かなりありがたい。

 ちなみに厩舎への入り口は獣車の右側面に用意されていて、上に飛び出す収納式で、ワンタッチで展開できるようになっている。


「内装はご希望通りになっていると思います。お風呂が脱衣所を含めて50平米、皆さんの寝室が40平米でそれが3部屋、リビングが50平米、客間が20平米を2部屋、トイレが10平米、そして厩舎を含むお庭が180平米ですね」


 依頼した獣車のキャビンは15平米だが、ミラーリング30倍付与で総面積450平米だ。

 通常、ミラーリング付与は10倍が限界らしいんだが、それ以上の付与ができない理由は、普通のクラフターじゃ魔力が足りなくなるからだ。

 魔法付与には工芸魔法クラフターズマジックインフリンティングか天賜魔法グラントマジックマルチリングを使うことになるわけだが、俺の天賜魔法グラントマジックには付与魔法もある。

 なのでミラーリング付与は、俺も手伝った。

 エンシェントヒューマンの魔力があれば30倍どころか50倍でもいけそうだったんだが、そこまで広くする必要はなかったからな。

 いずれクラフター登録を考えている俺だが、これができるだけで、十分クラフターとしても食っていけるってフィーナが嬉しそうにしてたのが印象的だったが。


 庭は広く見えるかもしれないが、ジェイドとフロライトが4メートル近い体長で、ミーナの従魔バトル・ホース ブリーズも普通の馬と同じぐらいの大きさだから、今後、他のみんなも従魔契約をするようなら、少し手狭になるかもしれない。

 ちなみにミラーリング空間の高さも30倍になっているから、30メートル近くあるぞ。


「これはいいわね。4点懸架式で、さらに車輪の衝撃吸収用のダンパーもついてるから、普通に乗ってても快適そうだわ」

「そちらは標準に近い物ですから、特に問題はありませんでした。むしろ、内装の方が大変でしたね」


 そりゃそうだろう。

 なにせ、屋敷一軒作るのと大差ない資材を使ってるだろうからな。

 ちなみに車輪だが、木とか金属とかじゃなくて魔物の革にゴムと空気を入れた物が一般的らしい。

 ゴムタイヤよりは脆いが、普通に使う分には年に一度交換するぐらいで済むらしい。

 チューブリングっていう工芸魔法クラフターズマジックで簡単に作れるから、交換する際の工賃も魔銀貨程度でいけるっていうのも素晴らしいな。


「すごいな。ありがとう、フィーナ。注文以上だよ」

「そう言ってもらえると、私も嬉しいです。私も乗る機会があるそうですから、その分張り切ったのも間違いないんですから」


 今度王都に行く際は使わないが、それでもみんなで出掛けたりする時には使うからな。

 それにフィーナの実家はバリエンテだから、そっちが落ち着いたらエドは挨拶に行きたいって考えてるみたいだし。


「でも獣車って、バトル・ホースだと普通は2頭立てですよね?フロライトは獣車を引くのは好きじゃないみたいですけど、ジェイドだけで大丈夫なんですか?」


 ラウスの疑問もわかるが、それは大丈夫だろう。


「大丈夫ですよ。テストでグラントプスに引いてもらいましたけど、問題なく引けましたから」


 獣車を引く魔物で一番力が強いのはグラントプスだが、ヒポグリフもそれに匹敵する力がある。

 だからグラントプスが引けるなら、希少種のヒポグリフ・フィリウスに進化してるジェイドなら、問題ないって判断できる。

 一応2頭立てで引けるようにもなってるが、ミーナの従魔のブリーズとも仲良くなってるみたいだから、ジェイドやブリーズと一緒なら、フロライトも何とか引いてくれるだろう。


「それでお値段なんですけど、お伝えしていた通り、120万エルになります」


 これは仕方がない。

 なにせ当初の予定より部屋が増えてるし、その分内装を整える必要があったんだからな。


「わかった。支払いは、クラフターズギルドの受付で良かったんだよな?」

「はい。それで依頼完了になって、そこから私達に報酬が渡されることになっています」


 クラフターズギルドの依頼は製作依頼や解体依頼がほとんどだが、大口の依頼ともなると1人2人で受けるわけじゃなく、数人、場合によっては数十人で受けることになる。

 だから依頼完了の報告は、依頼者がクラフターズギルドの受付で行うことになっていて、そこで製作してもらった物の権利と引き換えに代金を支払い、クラフターへの報酬はその後でということになる。


 今回の獣車製作依頼は、基本はフィーナがやってくれたんだが、寝室や風呂、さらには厩舎ともなると、さすがに手が回らない。

 そっちは専門のクラフターがやってくれているから、そっちへも報酬が必要になる。


 こちらとしては予想以上の出来に満足してるし、同じ獣車なら数台は作れるぐらい貯えもあるから、支払うことに文句はない。


 中には出来上がった物にケチをつけて支払いを値切ったり、最悪の場合は一方的に依頼を破棄する奴もいるらしい。

 支払いに関しては、こちらの注文と明らかに違った場合はクラフターズギルドが精査して、それが認められれば受け入れられるが、依頼破棄ともなるとさすがにどうにもならない。

 もちろん依頼は契約魔法を使っているから、一方的な理由で依頼破棄となると、そいつは契約不履行ってことで処罰の対象になるし、場合によってはオーダーズギルドに捕まるから、よっぽどのアホでもそこまではしないみたいだが、レティセンシアじゃごく普通にあるって話だな。


 で、報酬の話だが、メインとなったクラフターには代金の1割が、中庭や内装などの一部の作業を行ったクラフターには、代金の3分から5分が渡されるそうだ。

 なのでフィーナは、(シルバー)ランククラフターとしては破格の12万エルという報酬を得ることになる。


「ありがとう、フィーナ」

「こちらこそ、大きなお仕事を任せていただいて、ありがとうございました」


 フィーナは大きな仕事を完遂させたし、俺達も念願の獣車が手に入ったから、お互いに笑顔だ。

 早速乗ってみたいもんだな。


「せっかく獣車も手に入ったし、少し乗ってみるか?」

「そうしたいんだけど、フィーナはまだお仕事があるし、エドとマリーナも作業中でしょ?あたし達だけ先にっていうのは、さすがに悪いわよ」


 そういやそうだった。

 フィーナはラベルナさんの奴隷から解放されてエドとも結婚してるんだが、それでもラベルナさんの秘書みたいな仕事は続けている。

 フィーナもウイング・クレストに加入したから、今は引き継ぎとかをしていて、すぐに時間が取れるわけじゃない。

 エドとマリーナはウイング・クレストの武器を作ってくれてる最中だから、さすがに連れ出すのは無理か。

 残念だが、初乗りはアライアンスが終わってからか。


 だけどまだ昼にもなってないし、明日の準備はだいたい終わってるからな。

 まだハンターズギルドからの連絡も来てないだろうし、どうやって時間を潰すか?

 

「それなら、普段着とドレスも買っときましょう。王都に行ったら必要になるだろうから」


 獣車を受け取った後、プリムがそんなことを言ってきた。


「ああ、そういや王様と謁見する可能性が高いんだったっけか。だけど俺とラウスは、このアーマーコートでも大丈夫だって話だぞ?」

「ですよね」


 王都に行くことが決まってる俺達だが、ユーリアナ姫の護衛にレティセンシア工作員の護送、合金の報告、そしてミーナの両親への挨拶と、何気にやることが多い。

 さらにフィールを救った俺とプリムへの褒賞なんかもあるし、ユーリアナ姫の姉マナリース姫がプリムに会いたがってることもあるから、王城へ登城することは確定事項だ。


 普通ハンターが登城する際は、装備をしっかり整えていればそれでいいらしい。

 だがハイクラスともなると財力にも余裕が出てくるから、ちゃんとしたドレスやタキシード、とまではいかなくとも、それなりの衣装を用意することが多い。


 それに今後も使う機会はあるだろうし、奏上したイークイッピングで簡単に着替えられるから、女性陣のドレスを用意しておくことは、俺としても賛成だ。

 俺はタキシードなんか着たくないし、アーマーコートでも十分すぎる礼装になるってリチャードさんに言われてるから、買うつもりはない。

 これはラウスも同意見だな。


「あんた達はそれで良くても、こっちはそういうワケにはいかないのよ。まあ、今回はハンターとして登城するつもりだから、着る機会があるかはわからないけど」

「それでも、用意しておくに越したことはありませんから」


 プリムの意見にミーナが賛成し、リディアとルディアも頷いているが、この4人は貴族の夜会とかにも参加したことがあるみたいだから、ドレスの必要性はしっかりと理解している。

 だがフラムとレベッカはそんなものには縁がなかったから、目を白黒させてるな。


「そういうワケだから、全員分買うわよ。大和、経費使うからね?」

「そうしてくれ。使うとしたらウイング・クレストとしてになるんだろうから、自腹を切る必要はないしな」


 そう言うと、女性陣は嬉々として服飾店に入っていった。

 フラムとレベッカのウンディーネ姉妹はいささか戸惑ってる感があるが、そのうち慣れるだろ。


「で、俺達はどうするんですか?」

「付き合うしかないだろ。幸い、と言っちゃなんだが、時間はあるからな。長引くようなら一度魔銀亭に戻って、伝言が来てるか確認しなきゃだが……」


 ラウスがどうしたもんかという目をしてこっちを見るが、俺としてもそう答えるしかない。

 幸いというか、みんな買い物に時間を掛けるタイプじゃないから、そこまで時間は掛からないだろう。


「なんて思ってた時期が、俺にもありました」

「ですねぇ……」


 現在時刻は2時。

 服飾店に入ったのは10時頃だったから、かれこれ4時間近くも待たされてることになる。

 もちろんただ待たされてただけじゃなくて、気になったドレスがあったら、その都度意見を聞かれてたから俺もラウスもぐったりだし、何より腹が減って仕方がない。


 意外にも、って言ったら失礼だが、一番時間が掛かってるのはルディアだ。

 あまり女の子らしい恰好はしたことがなかったみたいだし、武闘士なんてやってるから動きやすい服装を好んでることもあって、どんなドレスが良いのか、いまいち判断がついてないみたいだな。


「これ、ちょっとゴテゴテしすぎじゃない?胸元も開いてるし、あたしには似合わないって」

「大丈夫だって。大和だってそう思うわよね?」

「ああ。ルディアも可愛いんだから、似合うと思うぞ」


 なんて言ったら、凄い勢いで顔が真っ赤になってたな。

 結局、ルディアが選んだのは、その赤いドレスだったが。


 ちなみに他のみんなは、プリムは胸元が大きく開いて、胸を強調するかのような赤系のドレス。

 ミーナとリディアはシックで落ち着いた感じのドレスで、ミーナが白、リディアが青系。

 フラムはショールのついた、チャイナ系な感じがする水色のドレス。

 レベッカは動きやすそうな、それでいてフリルのついた薄い赤のドレスを選んでいる。


 試着も済ませているが、プリムのドレスはマジで胸元の破壊力がデカかったな。

 さりげなくミーナのドレスも谷間様は拝見できたし、フラムなんてスリットから太腿様がチラチラしてたからすごく眼福だった。

 リディアは胸が慎ましいが、それを感じさせないデザインを選んでたから普通に綺麗だと思ったし、ルディアは普段の活発な格好とは違うお淑やかな恰好だったから、こっちもドギマギしてしまったが。


 その後、遅めの昼食を食ってから魔銀亭に戻ると、俺とプリム宛に手紙が来ていた。

 予想通りハンターズギルドからで、ハイオーダーも5人が参加してくれることになったらしい。

 さすがに全員参加できないのはわかってたが、それでも5人も参加してくれるのはありがたい。


 集合は5時にフレデリカ侯爵の屋敷となっていたが、けっこう頻繁に集まってるから侯爵家の財政が気になるところだ。

 領代としても、ブラック・フェンリルやエビル・ドレイクより大きな問題だから、捨て置く訳にはいかないってのは分かるけどな。


 ともかく、まだ時間までは2時間ぐらいあるから、少し時間を潰しさないとだな。


「というかさ、あたし達も行っていいの?」

「いいんじゃないか?実際に関係あるのは俺とプリムだけど、みんなも無関係って訳じゃないし」


 アライアンスの前は、レイドメンバーも狩りを自粛することが通例になっている。

 アライアンスは過酷って相場が決まってるから、少しでも参加者が安心して参加できるようにっていう配慮らしい。

 実際、仲間が意識不明とかで運び込まれてきたりなんかしたら集中力も欠くだろうし、他の参加者にも迷惑をかけることになるからな。

 もっともアライアンスは危険な依頼を果たしに行くわけだから、こっちの方が心配ってことで、待ってるメンバーが狩りに出ると怪我をする確率も高いらしいが。


「おお、そうだ。どうせなら、フレデリカ侯爵にお土産でも持っていくか」

「いいですね」

「だね。それに集まるのって、大抵大和とプリムがやらかした時なんでしょ?お詫びも兼ねて、何か持っていくっていうのはアリだと思う」


 ルディアが失礼なことを言うが、別にやらかしたつもりはないぞ?

 確かに数日に一度はフレデリカ侯爵の屋敷に呼ばれてるが、俺達は解決した側だからな?


「その頻度が多すぎるから、やらかしたって言われるんじゃないですか?」


 リディアも辛辣だな。

 だが確かに頻度が多いのは間違いないから、俺も何も言い返せない……。


「ところで、何をお土産にお持ちするんですかぁ?」


 呆れた様子でレベッカが話を本筋に戻すが、確かに何を持っていくべきかは悩むところだ。


「今回集まるのはあたし達にホーリー・グレイブ、領代、ギルドマスター、それと選抜されたハイオーダーもだから、30人は超えるわね。時間も時間だから、お菓子っていうのは辛いし……」

「いっそのこと、食材にした方がいいかもしれませんね」

「ああ、夕食はフレデリカ侯爵の屋敷になるからか」


 時間が時間だし、内容も内容だから、すぐに話が終わることはない。

 となると晩飯はどうすんだって話になるんだが、それはフレデリカ侯爵の屋敷で用意してくれるだろう。

 今までもそうだったからな。


「食材ね。いいかもしれないわ。フェザー・ドレイクやウインガー・ドレイクはもちろん、アビス・タウルスもあるから、食材としては申し分ないはずよ」


 申し分ないどころか、超高級食材だけどな。

 フェザー・ドレイクでさえ高級食材だっていうのに、その希少種のウインガー・ドレイクはもちろんブルーレイク・ブルの災害種になるアビス・タウルスの肉なんて、金を出しても買えるもんじゃない。


 魔物の肉は、種類によっては食べられないが、食べられる魔物も多い。

 しかも食べられる魔物は、モンスターズランクが上がるほど美味くなる傾向があって、それに比例してお値段も上がっていく。


 美味と評判のフェザー・ドレイクは(ブロンズ)ランクモンスターだが、それでも住処がマイライトみたいな山奥だから、出回ることが少ない上にけっこう高い。

 その希少種のウインガー・ドレイクは数年に一度出回るかどうかだから、こちらはさらに高い上に一瞬で売り切れるって話すらある。


 だがアビス・タウルスは、そんな次元じゃない。

 なにせ災害種なんだから、素材の確保を考える余裕なんてある訳がない。

 そもそもの話災害種は数十年に一度現れるかどうかって言われてるし、どの魔物が災害種になるのかもわからないからな。

 だからグランド・ハンターズマスターでさえ、アビス・タウルスを食ったことはない。


 それを知ってたから、ハンターズギルドにも肉は売ってないし、クラフターズギルドで依頼を出して、しっかりと解体もしてもらってたりする。


「それじゃあ、アビス・タウルスの肉にしとくか。明日の景気付けにもなるしな」

「賛成よ」


 俺達もまだ食ってないから、密かに楽しみだ。

 仕込みも必要だろうから、早めにフレデリカ侯爵の屋敷に行った方がいいな、これは。


「フレデリカ侯爵といえば、気持ちの整理はついたんですか?」


 このタイミングでそれを聞きますか、ミーナさん。

 プリムやフラムも、気になるって感じを隠そうともしてないな。

 確かにフレデリカ侯爵の事は嫌いじゃないどころかむしろ好きだし、綺麗だと思ってるが、そんな簡単に気持ちの整理は……。

 いや、プリムが言ってたように、子供が家を継いだら結婚するって考えておけば、少しは楽になるか。


「まだ微妙ではあるが、貴族にとって後継ぎは切実な問題だからな。ただ俺としては、やっぱり責任は取るべきだと思ってるよ」

「それでいいわよ。その方が大和らしいし」

「それにメモリアまでは、ジェイドがいればそんなに遠いっていうワケじゃありませんからね。やろうと思えば、日帰りもできると思います」

「侯爵も気にされているでしょうから、答えは早い方が望ましいですしね」


 プリム、ミーナ、フラムは、フレデリカ侯爵がシングル・マザーになることを了承済みだ。

 ユーリアナ姫は婚約者じゃないが、それでも褒賞の1つとして俺に嫁ぐことを内々で打診されているし、何より本人がそれを望んでいるから、プリム達は既に俺の婚約者って認識している。

 そのユーリアナ姫の許可も得ているわけだから、俺がこれ以上ゴネてると、みんなに対しても不信感を与えるんじゃないかとも思えるんだよな。

 リディアとルディアは婚約者じゃないけど、エンシェントヒューマンの俺がシングル・マザーを懇願されるのは普通の事だって考えてるみたいだから、特に何も言ってきていない。


「それじゃあアライアンスが終わったら……は、なんかフラグっぽいから、この後伝えることにするか」


 戦いが終わったらあなたを迎えにいきます、なんて、どう考えたって死亡フラグだからな。

 そんなつもりは微塵もないが、余計なフラグを立てるのは止めておくべきだ。

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