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ヘリオスオーブ・クロニクル(旧題:刻印術師の異世界生活・真伝)  作者: 氷山 玲士
第四章・マイライト山脈の緊急事態
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ステータリングの付加価値

 アビス・タウルスを討伐したということで、またフレデリカ侯爵の屋敷に呼ばれた俺達だが、今回はけっこう早く解放された。

 プリムがエンシェントフォクシーに進化したことは、さすがに驚かれたけどな。


 もっともフレデリカ侯爵に……


「ユーリアナ殿下の許可も得られたし、あなたの子供を産ませてもらいたいんだけどいいかしら?」


 なんて真顔で聞かれたから、すげえ返事に困ったな。

 プリム達は俺が望むなら構わないって言ってたが、それもそれで頭が痛い。


 とりあえず、同じシングル・マザーという言葉ではあっても、地球とヘリオスオーブじゃ意味が真逆だってことを伝えて、気持ちの整理をするための時間を貰うことにしてきたが、マジでどうしたらいいのかわからん。


 確かリベルターに、レイドのメンバー全員を嫁にして、さらに多くの女をシングル・マザーにしたハンターがいるんだが、マジでその人のアドバイスを聞いてみたいぞ。


 それはともかくとして、結局は俺の問題だから、ヘリオスオーブで生きていくと決めた以上、どこかで気持ちの折り合いをつけるしかない気もするんだよな。


「そうしてあげて。跡取りの問題もあるし、どうしても気になるんなら、子供が家督を継いでから結婚するって手もあるんだから」


 プリムにもそう言われてるから、近日中に答えを伝えるしかないか。

 実際、子供が家督を継いでから結婚するってのは、俺の頭にはなかったからな。


 そんなわけでアルベルト工房に来た俺達だが、ただ遊びに来たわけじゃない。

 武器の進捗状況が気になるから、最近じゃ2日に1回は来てるんだよ。

 急かしてるつもりはないんだが、どうしても気になるからな。


「今日は朗報だぞ。じいちゃんが日本刀とやらの製法のコツを掴んだみたいだから、王都に行くまでには出来そうだ」


 それはまさに朗報だ。

 王都に行くまでまだ10日以上あるとはいえ、それまでに出来るってのはかなりありがたい。

 もちろん今使ってる試作翡翠合金刀も良い刀だし、今日もアビス・タウルスを倒してるのに、魔力劣化や魔力の淀みも感じないし、それどころか細かい刃毀れの修復も問題ないから、エンシェントクラスでも問題なく使えるってのが分かってきた。


「なるほどな。だけどやっぱり、一般的なハイクラスの意見ってのも欲しいとこだな」


 だがエドからすれば、俺とプリムは特殊枠になっているため、参考意見にはなるが試験評価の対象にはなっていないらしい。

 俺はエンシェントヒューマンだしプリムもエンシェントフォクシーに進化したから、何も言えないのが微妙に辛い。


「それなら、ホーリー・グレイブに頼めば良いんじゃない?」

「そうですね。魔銀ミスリルを使っている方が3名、金剛鉄アダマンタイトを使っている方が2名ですから、バランスも良いと思います」


 ルディアとフラムが、ホーリー・グレイブに合金の品評依頼をしてみたらどうかと提案してきたが、確かに悪くはない気がする。

 特に青鈍色鉄ニビイロカネは使ってないから、どんな感じなのかが分からないってのもある。

 ホーリー・グレイブは使ってる武器も各々違うから、品評はしやすいんじゃなかろうか?


「それは良いな。それにホーリー・グレイブはマナ様が懇意にしてるレイドだから、十分に信頼できる。さすがに俺達は手が回らないが、そこはクラフターズギルドに任せればいいだろうしな」


 確かに、エドやリチャードさんが対応する必要はない。

 それにクラフターズギルドだって、実際に使ってみたいだろう。

 今は翡翠色銀ヒスイロカネ青鈍色鉄ニビイロカネのインゴットを用意してるだけで、しかも厳正に管理してるから、勝手に使うことも出来ないって聞いてるぞ。


「それなら、後でクラフターズギルドに行ってみるか?」

「そうするか。っと、それより聞きたかったんだけどよ、俺とマリーナ、フィーナのコートも、ウインガー・ドレイクの革を使っていいのか?」

「当然だろ。まだ十分在庫はあったはずだから、足りないってことはないだろうしな」


 俺達が着ているクレスト・アーマーコートは、ユニオンの標準装備と決まっている。

 だからクラフターのエドやマリーナ、フィーナの分も仕立てるになっているんだが、そろそろウインガー・ドレイクの革の在庫が怪しくなってきてるから、エドが確認してきてるんだろう。


「在庫は十分あるけど、あとどれだけ使うことになるか分からないからね」


 そんなことをマリーナが言ってくるが、お前らの分を仕立てたら、当分は必要ないと思うんだが?


「ユーリ様がウイング・クレストに加入するのは、ほとんど決定だろうが」

「あー、まあ、確かにそうなんだが、そうなると足りないってことか?」

「じゃなくて、王都に行ったら大和は新しい女が増えるだろうし、ラウスだってそうなる可能性が高いから、余裕を持ってストックしときたいんだよ」


 そのセリフは聞き捨てならないが、ストックを持っておきたいって考えには賛成だ。


 俺はエンシェントヒューマンだから、王都に行けば貴族に言い寄られる可能性が高いと言われている。

 ユーリアナ姫との関係が確定すれば減るだろうが、それでも完全になくなることはないだろうとも言われてるが。


 だが、ある意味じゃ、俺より凄いことになると思われているのがラウスだ。

 ラウスは俺の弟子ってことになってるし、まだ13歳だっていうのにレベル30近くまで上がってるから、将来性はかなり高い。

 プリムが13歳の頃はレベル30までいってなかったって話だし、成人前にレベル30を超えた人は全員が(プラチナ)ランク以上になってるそうだから、これだけでも凄いってのがわかる。

 さらには同じレイドってことで俺との縁もできるし、恋人もレベッカだけだから、貴族からしたらかなりの優良物件に見えるみたいだな。


 そういや今日のスカイダイブ・シャーク狩りで、またレベルが上がってるんじゃなかろうか?

 聞いてみるか。


「ラウス、今日はレベル上がったのか?」

「え?えーっと、その……はい、レベル30になりました」


 レベル30近く、じゃなくてレベル30になってたか。

 他のみんなも、1つずつレベルアップしてたみたいだな。

 プリムもレベル63になって、さらに進化できたが、これからはペースが落ちる気がする。

 俺もレベル66になったが、上がったのは久しぶりだからな。


「あ、そうそう。大和、刻印具貸して?」


 突然、マリーナがそんなことを言ってきた。

 今度は何が見たいんだ?


「構わないが、今度はどんな武器や防具なんだ?」

「そっちじゃないよ。大和の世界の色がどんなのか、それが知りたいんだ」


 色?

 エドも首を捻ってるが、俺の世界の色もヘリオスオーブの色も、意味は同じだったはずだが?


「ああ、ごめん。説明が足りなかったね。実はカラーリングって、ステータリングと連動させて、自分が使った色を登録しておくこともできるみたいなんだよ」


 色の登録ってことは、つまり今までは自分の感覚や見本を見ながら染色してたのが、これからはステータリングに登録した色を読み出すことができるようになるから、手間が大幅に減るとか、そんな感じになるのか?


「まさにそうだよ!」


 嬉しそうだな、マリーナ。

 登録できる色の数も多いみたいだから、今まで使ったことや見たことすらない色も、記録さえしておけば使えるから、確かに便利だよな。

 自分で奏上しといてなんだが、すげえぶっ壊れ魔法じゃないか?


「わかった。と言っても刻印具でわかる色にも限りがあるし、名称とかも俺の世界のものだけど、それはいいのか?」


 俺の刻印具に記録されてる色名は、和名も多いからな。


「大丈夫だよ。自分の分かりやすい名前で登録できるみたいだから、むしろあたしとしても、そっちの方がありがたいかな」


 そういやイークイッピングも、カテゴリー名は変えられたな。

 カテゴリー1に試作翡翠合金刀、クレスト・アーマーコート、レザー・グローブ、ミスリル・ソルレットを登録してあるが、俺も何か考えてみるかな。


 今更ではあるが、俺達のクレスト・アーマーコートはウインガー・ドレイクの革を使った、基本デザインは同じ膝下丈のロングコートだが、装甲は個人の好みが反映されているため、ぱっと見じゃ別物に見える。

 男はズボンというかトラウザー、女はスカートを標準にしているが、こっちも当然ウインガー・ドレイクを使っているぞ。


 俺のアーマーコートは瑠璃紺色で、胸部から腹部を覆う装甲と大きめの肩甲を装備している。

 見た目は鎧に見えなくもないから腹部を装甲で覆うのはやめようかと思ったんだが、トータルデザインで見るとおかしくなるから断念した経緯がある。

 まあ、これはこれで気に入ってるけどな。

 あとトラウザーも、翡翠色銀ヒスイロカネで太ももを覆ってもらっているぞ。


 プリムのアーマーコートは緋色で、肩甲は翼を模したデザインになっている。

 胸甲は俺と異なり胸だけを覆っているが、その代わりとばかりに腰部にスカート状の装甲を配している。

 翼族の象徴でもある翼は魔力で作り出されているから翼用のスリットはないが、プリムに言わせるとちゃんと背中から、具体的には肩甲骨の辺りから生えてる感覚はあるそうだ。

 スカート膝下丈だが、色は白を基調としていて、こちらには装甲はない。


 フラムは露草色っていう、露草の花にちなんだ明るい薄青色が気に入ったみたいで、アーマーコートもこの色で染められている。

 弓術士らしく腰に予備を含めて2つの矢筒を吊るすことができるベルトがあり、肩甲は弓を構えることを考えて、左側が大きく上腕部や左胸まで覆っている。

 右側の肩甲は小さいが、それでも右胸はしっかりと覆っているため、胸甲の代わりにもなっている。

 スカートは脛の真ん中ぐらいまであるロングスカートで、紺に近い色になっている。


 この場にはいないが、ミーナのアーマーコートも紹介しておく。

 白百合色っていう少し黄色がかった白を基調としていて、肩甲は騎士みたいなデザインで付けられているが、大きいは必要最小限だ。

 胸甲は腹部から腰部まで覆っているから、見た目は完全に鎧に見える。

 スカートも白百合色に染められていて丈は膝下だから、見た目は完全に麗しの白騎士様だな。


 リディアは白藍色っていう、淡い水色をした色を選んでいる。

 装甲は動きを妨げないような感じの肩甲、胸甲だけだから、かなり身軽そうだ。

 スカートは膝下丈で、色合いは少し濃くなっている。


 ルディアが選んだ色は銀朱色。

 胸甲、肩甲はリディアよりさらに小さいが、腰の周りにも装甲を配している。

 スカートは太ももの真ん中ぐらいまでしかないキュロットスカートだが、スパッツと一体化しているため、安心して闘器を使えるデザインになっている。


 ラウスのアーマーコートはミーナに次ぐ重装備になっているが、デザイン性は真逆だ。

 装甲にはウインガー・ドレイクの牙や爪が随所に散りばめられていて、刺々しいデザインになっているんだからな。

 色が紺桔梗色っていうのもあるが、暗黒騎士っていう見た目が一番近い。


 最後にレベッカだが、珊瑚色のアーマーコートは同じ弓術士のフラムとは異なり、胸甲以外は左右対称だ。

 胸甲はにフェザー・ドレイクの翼をあしらった意匠があるが、左側が大きく右側が小さい。

 肩甲は弓を構えた際に邪魔にならないよう、最小限の大きさだ。

 さらに矢筒は、近接戦の邪魔にならないように背負うことになっている。


 その後日が沈むまで、マリーナにカラーリング設定に付き合わされることになったが、俺が思ってたよりも種類があって、けっこう驚いた。

 マリーナは100種類近くの色を登録できたからかなりご満悦だったが、俺としても面白かったな。

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