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ヘリオスオーブ・クロニクル(旧題:刻印術師の異世界生活・真伝)  作者: 氷山 玲士
最終章・ヘリオスオーブの勇者
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フィリアス連合軍出陣

 天樹暦638年7月10日、今日はとうとう、グラーディア大陸に向けて進軍を開始する日だ。


 参加リッターは以下の通りだ。


  オーダーズギルド  ハイオーダー250名、エンシェントオーダー30名

  ファーターズギルド ハイファーター200名

  ドラグナーズギルド ハイドラグナー120名、エンシェントドラグナー1名

  ビースターズギルド ハイビースター170名

  ソルジャーズギルド ハイソルジャー200名

  フェイサーズギルド ハイフェイサー30名


 ジェネラル・オーダーはレックスさんが務め、ルーカスもセカンダリ・オーダーに任命されている。


 ハンターも参加するが、ホーリー・グレイブ、ファルコンズ・ビーク、リリー・ウィッシュ、フューリアス・レイディ、そして俺達ウイング・クレストのみで、50人にも満たない少数だ。

 なのでハンターの役割は、フューリアス・レイディや俺達の護衛という意味合いが大きい。


 それに加え、各国の王族も、ラインハルト天帝陛下を筆頭にブリュンヒルド妖王陛下、グリシナ獣王陛下、ハルート・ペンドラゴン公爵、アイスリヒト・グランレーヴェ橋公陛下、ポラリス・フリューゲル獣公陛下も同行される。

 あ、ハルート・ペンドラゴン公爵はグランド・ドラグナーズマスターでもあるから、セカンダリ・ドラグナーも兼ねているぞ。

 竜王兄でもあるから王族としての参加でもあるという、少しややこしいことにもなってるが。

 王位継承権を放棄したことで公爵となり、ペンドラゴンの家名を名乗ることになったが、元ネタは知っての通りアーサー王伝説で、俺がこんな物語もありますよと教えたら凄まじく気に入って、家名にしちゃったんだよ。

 どうでもいい話だけどな。


 天樹城前に集ったリッターの前でラインハルト陛下が演説を行い、鼓舞し、士気を上げていく。

 それをフロートの住民の多くが見学していたんだが、一番盛り上がったのは天樹城のドックから大型飛空艇ウイング・オブ・オーダー号がその姿を現した瞬間だろう。

 現在ウイング・オブ・オーダー号はフロートの港に着水し、桟橋に大きな船体を寄せて係留されているが、デッキの上は平らとなっている。

 その理由は、多機能獣車としても使えるキャビンを港までの移動手段として使うためで、今は全て天樹城前広場にあるからだ。

 出陣式が終わると、そのキャビン型を含む多機能獣車に乗り込み、港へ向かっていく。

 キャビン型獣車は定位置に設置され、それ以外の多機能獣車はデッキ下に設けられた駐車スペースへ繋がる通路を進む。

 俺達も同様で、天樹製多機能獣車を駐車スペースに進ませる。


「ここですね」

「だね。思ったより広いけど、だからこそ使うのがハンターだけっていうのがもったいないよ」

「そう言うなって。あ、ジェイド、お疲れさん。フロライトのことが心配だろうから、すぐに送還するな」

「クワッ!」


 今日獣車を引いてくれたのはジェイドだが、見栄えを重視した結果でもある。

 だがジェイドと番いになったフロライトは、現在妊娠中ってこともあって、最初ジェイドは嫌がった。

 それをなんとか宥めて頼んで、式典が終わるまでっていうことでやっと了承してもらえたんだよ。

 ジェイドとフロライトは、生まれてすぐぐらいにエビル・ドレイクに襲われ家族を含む群れを全て失い、俺とプリムが助けたことが縁で従魔契約を結んだ。

 だからなのか2匹は非常に仲が良く、俺やプリムが召喚していない間はアルカで仲睦まじく過ごしている。

 だからフロライトの妊娠は、俺やプリムはもちろん、ジェイドも非常に喜んだもんだ。


「これで良しっと。大和、終わったよ」

「了解。ジェイド、悪かったな。しばらくは召喚する予定はないから、アルカでゆっくりしててくれ」

「クワアッ!」


 駐車も済んだから、ジェイドはアルカに送還させる。

 グラーディア大陸ではトラベリングが使えず、同じ転移系に属する従魔召喚魔法コーリングやサモニングも使えない。

 だからグラーディア大陸での移動は飛空艇か徒歩かになり、多機能獣車は宿泊用として使うことになっている。

 とは言っても、グラーディア大陸に上陸したら真っ直ぐに神都アロガンシアを目指すから、徒歩どころか獣車を使うような事態はないだろう。


「それじゃ行きましょうか」

「はい」

「あたし達的には獣車でもいいんだけど、やっぱりそういうワケにはいかないわよね」

「そりゃね」


 いつもなら天樹製多機能獣車で寝泊まりするんだが、俺が天爵兼アーク・オーダー、マナが天爵兼天帝妹、そしてプリムが天爵夫人兼ヴァルト獣公女、加えて俺達が作戦の肝ってこともあって、貴賓室を宛がわれることになっている。


 ウイング・オブ・オーダー号は5階建てとなっていて、最上階となる5階には、貴賓室が10部屋用意されている。

 貴賓室もミラーリングで拡張されているから、かなり広い。

 俺達はその貴賓室の1室を使うことになっているんだが、俺達が使う貴賓室は最後尾の一番広い部屋となっている。

 理由は単純で、人数が多いから広い部屋を希望したっていうだけだ。

 広くてもベッドはそんなに大きくないから、それだけは自前で持ち込んだが。


 他にも貴賓室は最前部に5部屋、左右に2部屋ずつあり、中央の部屋にラインハルト陛下達が、右隣の部屋にブリュンヒルド陛下と妖王配アルベルト殿下が、左隣にグリシナ陛下と獣王配となったハイウルフィーのハンター ヴォルク殿下、一番右の部屋にグランド・ドラグナーズマスター ハルート卿と奥方でハイドラゴニアンのテミス夫人、一番左の部屋にフューリアス・レイディが割り振られている。

 ポラリス獣公陛下とアイスリヒト橋公陛下は、左右にある貴賓室に入られるから、2部屋余ることになるか。


「一番広いっていうだけあって、本当に広いわね」

「というか、広すぎじゃない?」

「この貴賓室は、天帝家が使うことを前提に作られてるからね。そうよね、大和?」

「ああ」


 一番後ろの貴賓室は、マナの言うように天帝家の使用が想定されている。

 だから本来ならラインハルト陛下が使う予定だったんだが、前方の5つの貴賓室は景観も良く、陛下達も一度は使ってみたいと希望されたことで、この部屋割りになった。

 他にも、貴賓室を使うメンツの中で一番人数が多いのが俺達だっていう理由もあるが、一番大きな理由は神帝を倒せるのが俺達だけだと目されているから、俺達は一番安全な位置にいてもらう必要があるってことだ。

 俺達にそんなつもりはないんだが、この親征にはヘリオスオーブの未来が掛かっているから、ラインハルト陛下だけじゃなく各国の王達もかなり神経質になっているため、この部屋割りを受け入れることにしたという訳だ。


「なるほどね。だからロフトがあるのか」

「ロフトというか、ルーフバルコニーに近いですよ。さすがに転落防止、侵入防止の結界は施されてますけど」

「当然でしょ」


 最上級ということで、広大な室内以外にも、この貴賓室にはロフトスペースから繋がるルーフバルコニーも完備されている。

 これによって後方のみならず全周囲の景色を一望できるようになっているんだが、オーダーズギルド用の飛空艇に必要かどうかは微妙だ。

 まあウイング・オブ・オーダー号は、オーダーズギルドだけじゃなくリッターズギルドの旗艦としても機能することになる予定だから、要人が乗り込むことは今後もあり得るだろうが。


「そうだったんですね。ということは、バルコニーから演説を行うことも考慮されてるんですか」

「そういうこと」


 ルーフバルコニーを使えば、演説も行いやすい。

 奏上魔法デヴォートマジックにスピーキングっていう拡声魔法があるから、ルーフバルコニーからでも問題なく演説を行えるからな。


「とはいえ実際に演説を行うのは、出発前に集まった人達み向けてになるけどな。さすがに乗組員全員をデッキに集めてっていうのは無理だし、最悪落ちるだけだ」

「ああ、それもそっか」


 限界荷重量やスペースの問題もあるから、飛行中に1,000人を超す乗組員全員をデッキ上に集めるなんて、墜落するしかないからな。

 魔物素材のランクによっては問題ないかもしれないが、それでも危険なことに違いはないから、飛行中に全員を集めるのは、デッキ下のミラーリング付与の訓練場ぐらいだろう。

 まあ緊急連絡用として、各階にはいくつも伝声管やスピーカーもどきが設置されてるし、4階にあるメインブリッジには通信具も設置してあるけどな。


「っと、俺と真子さんは、これからメインブリッジに行くことになってたっけか」

「主戦力、というか必須戦力だしね。そもそも大和と真子がいなきゃ、神帝を倒すことができるかどうかも怪しいわ」

「エレメントクラスに進化したあたし達なら可能性はあるかもしれないけど、無傷でっていうのは無理だし、神帝だって何もしてないとは言い切れないものね」


 それはそうだが、神帝がエレメントクラス対策をしてるかと聞かれると、そこは激しく疑問だ。

 だけどプリム達でも、神帝の相手をするのが厳しいのは間違いない。

 俺と真子さん以外のエレメントクラス全員でかかれば、おそらくだが倒せると思う。

 だけど誰かが犠牲になる可能性は高いし、神帝の用意した戦力によっては相打ちっていう可能性も否定できない。

 当然そんなことは俺が許さないし、前回の借りを返す意味も込めて、神帝は俺が相手をする。

 まあ刻印神器を生成して一気に倒すつもりだから、借りを返せたとしても半分程度になるか。

 だけどヘリオスオーブ存続の瀬戸際でもあるから、俺の小さなプライドなんぞにこだわってなんかいられない。


「あいつが対策ねぇ。断言するけど、そんなものはしてないわよ。さすがに戦力の立て直しはしてるでしょうけど、量はともかく質はどうかしらね」

「それは俺も同感。刻印術師優位論者っていうのは、何の根拠もなく自分が最強だって自惚れてる連中だからな。俺のウイングビット・リベレーターへの対策ぐらいは考えてると思うが、その程度が関の山だと思う」


 刻印術師優位論者は、世界が自分中心に回ってると頭から信じている連中しかいない。

 ヘリオスオーブには進化優位論者っていう、進化した者が全てを支配し、英雄になると考えてる連中がいるが、それに近いな。

 神帝の正体はその刻印術師優位論者で、父さんに殺される寸前に何らかの奇跡でグラーディア大陸に転移し、そこで成り上がったこともあって、進化優位論にも傾倒してるだろう。

 そんな奴が俺達への対策を考えるなんて、はっきりいってあり得ない。

 俺のウイングビット・リベレーターは融合型刻印法具だから、それに関しては対策を考えてると思うが、真子さんのスピリチュア・ヘキサ・ディッパーは形状を含めて覚えてないだろうし、何より刻印神器については知る術もないから、対策のしようもないだろう。


 だけどそんなことは、俺の知ったことじゃない。

 ヘリオスオーブを守るためにも、神帝は必ず倒す。

 俺のちっぽけなプライドを優先してしまい、リネア会戦で神帝を逃がしてしまった責任も取らないといけないしな。

 だから神帝、首を洗って待ってろよ。


 そんな俺の決意を乗せて、ウイング・オブ・オーダー号はフロートを飛び立った。

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