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桜姫の適性

Side・マナ


 無事に新年を迎え、私と大和の娘サキも1歳になった。

 ヘリオスオーブでは満1歳を迎えるとプリスターズギルドに足を運んで、魔法の適性や神々から授かった天嗣魔法グラントマジックの確認をしてもらうことが慣例となっている。

 1歳の誕生日にっていうのが一番多いんだけど、お仕事とかが絡んだりすると数日はずれ込むことも珍しくないし、年末年始はどこも忙しいから、その辺りで生まれた子達は年が明けてから1週間以内っていうことが多いわね。

 サキが生まれたのは1月1日の深夜早朝と、まさに新年になった直後だから、1月3日になってからプリスターズギルドで確認してもらうことにしたわ。

 どこのプリスターズギルドにするかは悩んだけど、フィールは私や大和の領地じゃないし、同じ理由でメモリアも候補から外れる。

 かと言って私が拝領予定のコバルディア跡地はまだ何もないから、候補はフロートにある総本部かエスペランサにある支部のいずれかになるかしら。

 天帝家、というかアミスター王家としては、慣例的にエスペランサにある旧総本部で確認をしてもらっていたけど、総本部はフロートに移ってるし、今年の夏頃になると思うけど、総本部を天樹城の根元の一画に移転させるっていう計画もあるそうだから、フロートで確認してもらうことにするべきかしらね。


 というわけで今日はサキを連れて、大和と3人でフロートのプリスターズギルド総本部へやってきた。

 1歳の祝事でプリスターズギルドを訪れる際は、同妻の同行は、例え初妻であっても好ましくはないとされているからよ。

 同妻も家族であることは間違いないんだけど、それでも実際に血が繋がってるワケじゃないから、初めての大きな行事は血の繋がった実の両親だけにしておくべきっていう、一種の儀式になってるわね。


「お待ちしておりました、マナリース天爵殿下、大和天爵殿下」

「今日はお世話になります」

「よ、よろしくお願いします」


 総本部に行くと、すぐにグランド・プリスターズマスター イデア様が出迎えて下さった。

 ただその際、大和が慣れない敬称に戸惑っちゃったけど。


 天爵は天帝家に、公爵は王家に連なる貴族だから、殿下という敬称で呼ばれている。

 私やユーリは以前からそう呼ばれてたから何の問題もないんだけど、大和は元は平民だから、慣れてないのよ。

 こればっかりは子供達や子孫達にも関係する問題だから、早く慣れてもらうしかないんだけどさ。


「それでは参りましょう」

「はい」


 イデア様に促されて、私達は儀式の間へ進む。

 大和に抱っこされているサキは、初めて見る人達がいっぱいだからなのかキョトンとしてるけど、少し慣れてきたのかすぐに周囲へ視線を移す。

 プリスターズギルドに来たのは初めてだし、アルカから出ることもほとんど無かったから、見るもの全てが珍しいんでしょうね。

 アスマは好奇心旺盛だから大変だけどサキは大人しいから、こういう時は助かるわ。

 あ、でも生後7ヶ月になるアスマは早くもつかまり立ちができるようになってるけど、サキはまだ自分で立つのが精一杯なのよね。

 そろそろ歩いてもらいたいし、帰ったら練習させようかしら?

 でも急かさない方が良いとも言われてるし、悩ましいわね。


「それではサキ様には中央にお立ち頂き、大和殿下は右側、マナリース殿下は左側にお並び下さい。その際、サキ様がお倒れになられないよう、お支え頂きたく」

「分かりました」

「サキ、すぐに終わるから、良い子にしてね」


 そんなことを考えていると儀式の間に到着していた。


「それでは始めます」


 主神である父なる神の神像の前に立ったイデア様が、祝詞を唱える。

 すると儀式の間に祀られている13の神像が光を放ち、その光がサキに集まっていく。

 これが満1歳を祝う天嗣の儀式と呼ばれる祝事で、この儀式を経ることで神々から天嗣魔法グラントマジックを授かるの。

 属性魔法グループマジックは生まれると同時に授かるけど、この天嗣の儀式までは属性も分からないし、使えないようにもなっているわ。

 あと、プリスターズギルド総本部だから13の神像が揃ってるけど、場所によっては神像の数が1つか2つしかないこともある。

 その場合でもその神像を介することで、ちゃんと儀式は行えるようになってるわよ。


「こちらがサキ様の適性と天嗣魔法グラントマジックでございます」


 光が収まると、イデア様の手元にサキのライブラリーが現れた。

 ライブラリーは個人情報であり、ライブラリングという奏上魔法デヴォートマジックを使うことで確認できる。

 だけど生後1歳前後の子がライブラリングを使うことは出来ないし、そもそも奏上魔法デヴォートマジック天嗣魔法グラントマジックを含む天与魔法オラクルマジックの一種だから、天嗣の儀式を終えないと使えない。

 だから儀式を行うプリスターの担う役割は重要であり、だからこそプリスターを迫害し虐殺したソレムネ、神々を貶し偽りの神を崇拝したレティセンシアは、天与魔法オラクルマジックを使えなくなったの。


 って、既に滅んだ国のことなんて、どうでもいいわよね。


 イデア様から手渡されたライブラリーを受け取って視線を落とす。

 そこにはこう記されていた。


 サキ・ミカミ・ラピスラズライト

 1歳

 Lv.1

 人族・エルフ

 ラピスラズライト天爵家長女、フレイドランシア天爵長女


  属性魔法グループマジック風属性魔法ウインドマジック

  天嗣魔法グラントマジック:念動魔法


 本来のライブラリーには、属性魔法グループマジック天嗣魔法グラントマジックは表示されない。

 だけど天嗣の儀式の際は、こうして表示される。

 だからこそ子供の親が、こうして確認することができるの。


風属性魔法ウインドマジックと念動魔法か。こうしてみると、俺の天嗣魔法グラントマジックとマナの属性魔法ウインドマジックを受け継いだって感じだな」

「本当にね」


 大和の言う通り、サキは私の風属性魔法ウインドマジックと大和の念動魔法を授かっていた。

 念動魔法は人族に多い天嗣魔法グラントマジックで、エルフでも使える人は多い。

 だけど人族に多いっていうだけだし、13種ある天嗣魔法グラントマジックの内、竜族専用の竜精魔法や獣族専用の魔獣魔法、翼族専用の羽纏魔法、翼や角、尻尾を消すことができる人化魔法以外のどの魔法を授かるかは、その時にならないと分からない。

 専用の天嗣魔法グラントマジックであっても、授からない竜族や獣族も珍しくないからね。

 必ず授かるのは羽纏魔法と人化魔法のみだけど、人化魔法はカウントされないみたいだから、実質的には羽纏魔法のみって言ってもいいかもしれないわ。

 だからサキが念動魔法を授かったことは、嬉しくもあり残念でもある。

 できれば私と同じ召喚魔法を授かってもらいたかったけど、こればっかりは仕方ないわ。


「レベルは1なのか。1歳じゃ無理もないけど」

「1歳じゃ魔法なんて使えないしね。まあ魔法を教えるのも、だいたい3歳ぐらいになってからだし、しばらくはこのままかしらね」

「ああ、やっぱりそれぐらいになるのか」


 天与魔法オラクルマジックは生活に密着している魔法も多いから、3歳ぐらいから使い方を教えることが一般的ね。

 属性魔法グループマジックはさらに遅くて、だいたい10歳前後かしら?

 私はハンターに憧れてたから8歳ぐらいから教えてもらってたけど、今だと総合学園も開校してるから、教育は学園に丸投げする家庭もあるかもしれない。

 それも含めて学園の役目になっていくんでしょうね。

 サキ達の教育をどうするかは、大和やみんなとしっかり話し合わないとだわ。


「おとーた、おかーた。こえ、あに?」

「サキのライブラリー、って言っても、まだ分かんないか」

「神様が、サキにくれた魔法よ」


 たどたどしい口調で、目の前のライブラリーを見つめるサキ。

 まだ歩けるようにはなっていないけど、喋れるようになったのは比較的早くて、9ヶ月になる前には片言だけど喋ってくれた。

 初めての言葉はおとーたでもおかーたでもなく、リーアだったけど。

 リディアに抱っこされてた時だから、多分リディアの名前を呼んだんでしょうね。

 大和共々、リディアにものすごい嫉妬心が沸いたものだわ。


「まほー?」

「そうよ。3歳になるまでは使えないけど、使えるようになったらお母様が教えるからね」

「うん!」


 か、可愛い……。

 赤ちゃんのことを天使って呼ぶ人がいるけど、サキの笑顔はまさに天使そのものだわ。


「マナ、これで終わりでいいんだよな?」

「ええ。あとは説明した通りよ」

「了解」


 天嗣の儀式はこれで終わりになる。

 後は何をするかと言うと、いくばくかの金銭を寄進することね。

 天嗣の儀式は結婚の儀式に並ぶプリスターズギルドの重要な財源だし、平民ならともかく王族や貴族は一度の儀式でかなりの額を寄進することが習わしとなっている。

 ああ、平民の場合でも高ランクレジスターになると、貴族に匹敵かそれ以上の額を寄進する事もあるらしいわよ。


 私達の場合だと、私が元王女で現天爵ってこともあって、天帝家に準ずる扱いとなる。

 それでいて大和がヘリオスオーブ最高レベル保持者でもあるから、貴族どころか王族並の額を寄進するべきだってことで話が纏まってるわ。

 もちろんプリスターズギルドとの話し合いじゃなく、私達家族内での話し合いよ。

 これは私だけじゃなく、妾を含む全員の子供も同じ額を寄進するわ。

 母親が誰かとか立場や身分がどうとか、そんなことは関係ないからね。


「えっと、グランド・プリスターズマスター、今日はありがとうございました。こちらをお納めください」

「これはご丁寧に」


 大和から手渡された小袋を受け取ったイデア様は、中を確認しないまま近くに控えていたプリスターに手渡した。

 建前上は気持ちってことになってるし、本人達の前で見るのは礼儀に反する上にプリスターとしてのメンツに関わる問題だから、この場で中を確認するようなプリスターはいない。

 もしいたら、最悪の場合はプリスターズギルド除名っていう重い処分を受けることもあるんですって。


「それでは失礼します」

「本日はありがとうございました。ほら、サキも」

「あいがとーごじゃいましゅ」

「サキ様が健やかに育ちますよう、心よりお祈り申し上げます」

「ありがとうございます」


 サキも言葉足らずながらも、しっかりとお礼を述べ、私達はプリスターズギルド総本部を後にした。

 無事にサキの天嗣の儀式が終わって、私もホッとしたわ。

 3ヶ月後にはアスマも天嗣の儀式を行うし、帰ったらみんなにもサキのことを伝えないとね。

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