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ヘリオスオーブ・クロニクル(旧題:刻印術師の異世界生活・真伝)  作者: 氷山 玲士
第一九章・発展に向けて
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学園生達

Side・真子


 クラフターズギルドで多機能獣車のオプションとなる艇体を受け取ってから1週間、反響は凄まじく大きいけど、すぐに沈静化した。

 実物を見てないこともあるから、実際に使われだしたらまた再燃するだろうけどね。

 私達も、普段の移動はトラベリングを使えば事足りるから、今のところは使っていない。

 だから再燃するにしてもしばらくは先になるだろうし、もしかしたら天帝家用の艇体が完成してからになるかもしれないわ。

 それはそれで、別に構わないけど。


 11月も終わりに差し迫った今日、私は授業のために、メモリア総合学園にやってきた。

 私は非常勤講師でもあり、春からはハンターとヒーラーの授業もいくつか受け持つ予定でもいる。

 非常勤だから月に1度か2度程度だけど、それ以上だと私への報酬がとんでもない額になるのよね。

 非常勤講師の報酬は、ノーマルクラスで最大3万エル、ハイクラスで10万エル、エンシェントクラスで20万エルで、さらに個別で技能報酬が同額加算されることになってるの。

 私はエレメントハンターでありエレメントヒーラーでもあるから、1日の報酬は30万エルにハンター技能とヒーラー技能で30万エルずつ加算されるから、なんと最大で90万エル。

 いくらなんでも多過ぎだけど、ここで私が遠慮しちゃうと他の人達が困ることになるから、辞退できないのよ。

 まあ技能報酬は4月からなんだけど、それでも1日で30万エルっていうのは破格の報酬だわ。

 だから授業は、しっかりとやってるわよ。


「以上がマタニティ・ヒーラーの役割よ」


 というワケで今日はメモリア総合学園で、ヒーラーについての授業を行っているわ。

 非常勤講師の私の授業は前もって日時が決められているんだけど、今は1年生しかいないこともあって、毎回講堂で授業をしている。

 さすがに人数が多いけど、既に何度かやってることでもあるから、私も慣れてきてるのよね。

 今回私が呼ばれた理由は、私がエレメントヒーラーでありマタニティ・ヒーラーでもあり、さらにはエコーイングとブリーチングを奏上した本人でもあるからよ。

 だから初めてのマタニティ・ヒーラーの授業で、私にお声がかかったっていうことなの。


 ただ毎回思うんだけど、既に進路を決めている子達は、あんまり身を入れて聞いてないのよね。

 ヒーラー志望の子達は最前列で聞いてくれてるし、悩んでる子達も中列辺りに陣取っている。

 クラフターやトレーダー、スカラー志望の子達は退屈そうにしてるけど、何より問題なのはハンターやオーダー志望の子達、特に現役ハンター達ね。

 ハンター達は最後列にいるだけならともかく、ロクに話も聞いてない上に雑談までしている。

 私の授業じゃ初めての事だけど、どうも慣れてる感じもするから、多分今までのヒーラーの授業はこんな感じだったんでしょうね。

 さすがに舐めすぎだわ。


「じゃあここで質問するわ。逆子の場合、何に注意が必要?はい、最後列のあなた」

「え?」

「え?じゃないわ。聞いてたなら、ちゃんと答えられるわよね?」

「えっと……その……」

「答えられないのね。じゃあ隣のあなたは?それとも反対側のあなたは?」

「えっと……」

「……」


 そりゃ答えられないわよね。

 なにせ話を聞いてなかっただけじゃなく、雑談に興じてたんだから。

 壇上から最後列まではかなりの距離があるから、講師も全てを見渡すことはできないし、ノーマルクラスじゃ聞き取れないほどの声量で話していたようだけど、エレメントクラスの視力と聴力を舐めるんじゃないわよ?


「ふざけるんじゃないわよ。出産は本当に命がけなの。実際に命を落とした人だって、数え切れないのよ?特に男子、自分達には関係ないとでも思ってるんでしょうけど、いずれはあなた達も結婚するでしょう?その時に奥さんがそんな目にあって、それでも知らんぷりできるの?」


 事実、プリムは本当に危なかった。

 私がエレメントクラスに進化していなかったら、ベテランのマタニティ・ヒーラー アイラさんがあと少しでも遅かったら、母子のいずれか、最悪は両方とも命を落としていたかもしれない。

 だからこそ私は2つの魔法を奏上したし、マタニティ・ヒーラーとしての勉強にも力を入れている。


 だというのに授業を聞かない、それどころか無用の長物のように扱うなんて、ヒーラーに対する侮辱でしかない。

 しかもあのハンター達は以前の魔物狩り実習で、立入禁止にされていたはずの西の森奥地に足を踏み入れ、一歩間違えばメモリア崩壊の危機に陥れかけた子達でもある。

 まだ2ヶ月程しか経っていないけど、どうやら何も成長できていないみたいね。


「す、すいません……」

「あなた達には話があるから、授業が終わったら教員室まで来なさい。いいわね?」

「分かりました……」


 地球でもそうだったけど、この程度で反省するかどうかは疑問でしかない。

 だけど注意はしないといけないし、何よりヒーラーを舐めてるままっていうのは許容できない。

 出産もだけど、ハンターならお世話になることも多い職業なんだからね。


 後で聞いた話だけど、やっぱりあのハンターの子達は、ヒーラーだけじゃなくトレーダーやスカラー、果てはプリスターの授業でさえもロクに内容を聞いておらず、それどころか最近じゃ授業後に平然と批判までしだしていたらしい。

 舐めすぎも舐めすぎだけど、よく王家の方々が黙ってたわね。

 特にハイヒーラーのユーリ様とハイプリスターのアリア、そして何よりエンシェントヒーラーのキャロルの3人。

 まあ、私が来るって聞いてたから、あえて放置してたってとこなんでしょうけど。

 初年度からこんな子達が出るなんて、本当に頭痛い問題だわ。

 今回は未遂だけど、放置してたら授業の邪魔をしてくる可能性も否定できないから、前回の魔物狩りの件も合わせて、大きめの釘を刺しておくとしましょうか。


Side・ラウス


 真子さんの授業が終わった後、授業を聞いてなかったハンター達は真子さんに教員室に連れて行かれた。

 その日は真子さんも遅くなってから帰ってきたけど、どうやらお説教の後に、MARS(マーズ)を使ってゴブリン・クイーンと戦わせたみたいだ。

 最初は真子さんがゴブリン・クイーンの攻撃を引き受けていたけど、彼らはクイーンには一切ダメージを与えられず、その後は何度か正面から戦わせて、彼らのプライドをへし折ったって言ってた。

 ゴブリン・クイーンは(シルバー)(カタストロフ)ランクで、(プラチナ)ランク相当の魔物ってことになるから、エンシェントクラスなら単独討伐も容易な部類に入るし、ハイクラスでも熟練なら2人で行けるって考えられている。

 あと過去には、ノーマルクラスだけでの討伐もあったらしいから、彼らのレベルでも傷を付けるぐらいはできるはずなんだけど、それでも無傷っていうことは、彼らのハンターとしての実力がレベル以下でしかないっていう証明になってしまった。


「それでもMARS(マーズ)だからってことで納得しなくてね。正直、あの子達はダメだと思うわよ」

「ハイクラス間近のハンターでも、そんなこと考えてる奴が少なくないって話だしなぁ。ケガどころか再戦すら簡単だから、ゲーム感覚になってるのかもしれない」

「あり得るわね」


 ゲーム、つまりお遊び気分でMARS(マーズ)を使ってるから、実際の戦闘じゃ活かしきれてないってことかな?


「あれ?真子さんは相手してないんですか?」

「する気も起きなかったわ。そもそもあの子達、私が魔導士ってことで、近接戦なら勝てるって思いこんでたもの」


 どうりで真子さんが帰ってきた時、少し機嫌悪いと思った。

 確かに魔導士は近接戦が苦手な人が多いけど、それでも真子さんはエレメントヒューマンなんだから、ノーマルクラスが何百人集まったって掠り傷どころか触ることさえできるはずないのに。

 そもそも真子さんは、近接戦でも多くの魔物を倒してるし、その中には異常種や災害種だって存在している。

 そんな人相手に近接戦で勝てるだなんて、思い上がりどころか自惚れでしかないよ。


「うん、それはダメね。というか、エレメントクラスを舐めすぎじゃない?」

「自分達ならできるって思ってるみたいなんですよ。本来なら矯正すべきなんでしょうけど、もう成人してる子もいますからね。いっそのこと、自主退学でもしてくれないかって思ったぐらいです」

「教師として、それはそれでどうかと思うけどね」

「そういった奴を減らすための学園なんだけど、主旨を理解してないってことか。一度ガツンと行くべきか?」


 学園の主旨は、どのギルドに登録するか迷ってる子達に選択肢を与えるため。

 だけど成人してからも、自分にあってないギルドに登録してしまったっていう話はよく聞く。

 だから成人も一定数入学してもらうことになってるんだけど、だからこそ既にギルドに登録して活動している人には、入学する意味はあまりなかったりする。

 俺達もそうだけど、彼らも既にハンターとして活動しているから、正直何で入学したのかが分からない。


「多分だけど、実戦訓練や大和達に稽古をつけてもらえるって勘違いしてたんじゃない?」

「ああ、それはあり得るわね。実際、そんな話もチラホラ聞くし」

「そもそも俺は、何度か講義したとはいえ、非常勤講師ですらないんだけどな」

「かといって真子さんの事を侮っているというお話ですし……」


 既にギルドで活動してる人の場合、ギルドについての詳しいことを学んだりするために入学することを目的にしてもらってる。

 特にハンターは、MARS(マーズ)を使った模擬戦闘や対人戦、それに秋に行った魔物狩り実習が予定されてるし、魔物に関しての授業もあるから、ルーキーだけじゃなく(ブロンズ)ランク辺りのハンターまでは、十分に入学する意味はある。

 それに真子さんがヒーラーとハンターの非常勤講師として月に何度か依頼を受けてるし、大和さんもアマティスタ侯爵領領主の夫ってことで顔を出すこともあるから、運が良ければ稽古をつけてもらうこともできる。

 エレメントクラスは大和さんと真子さんの2人しかいないからね。

 あ、プリムさんも体調戻ってきてるそうだから、年が明けたら本格的にエレメントフォクシーへの進化を目指すって言ってたな。


「言っとくけど、私は相手しないからね?」

「侮ってる奴の相手なんて、気が乗らないわよね。無理にする必要もないと私も思うわ」

「それは俺も同感ですよ。だから一度だけ、俺が相手をしてみます。それでもダメなら放置して、素行状態によっては退学でしょう」


 そうなるよね。

 だけど大和さんが、一度だけとはいえ相手をするって、それはそれで調子に乗らないかな?

 いや、授業の一環として、他の生徒も平等に相手すればいいだけか。

 ただ問題は、俺とレベッカ、キャロルさんは相手してもらうのが難しいってことかな。

 3人がかりでも大和さんの相手にはならないけど、それでも俺達もエンシェントクラスに進化してるから、俺達はもちろん大和さんもある程度力を出さないといけない。

 それはそれで面倒なことになりかねないから、俺としては避けたいんだよなぁ。


「それはいいけど、ラウス達はどうするの?」

「アウローラ様と婚約もしたし、ラインハルト陛下にも相談はするけど、そのタイミングで3人のレベルも一緒に公表してもいいかなと思ってる。そもそもの問題は、あいつらがラウスに隔意、というか敵意を抱いてるからだろ?なら公表して、絶望的なまでの差を教えてやった方がいいんじゃないかと思ってな」

「えっ!?」

「そもそも非公開にしてた理由は、エネロ・イストリアスのアホに対する保険だったし、アウローラ様とも婚約した以上、貴族も何も言えないだろうよ」

「それはあるわね」


 このタイミングでレベル公開って、面倒なことにしかならないんですけど!?

 いや、確かに俺達のレベルが非公開だったのは、大和さんが言うような理由の他に貴族達がちょっかいかけてこないようにっていう意味もあったよ。

 キャロルさんがベルンシュタイン伯爵令嬢で現時点では正式な後嗣で、セラスさんがリヒトシュテルン大公位継承権第2位だけど、どちらも実際に跡を継ぐことは無いだろうから、それを理由に引き抜きとかを無茶ぶりをしてくる貴族は出てくると思う。

 だけどアウローラさんは、立太子こそしてないけど、次期フリューゲル獣公になることは決まってる。

 つまり俺に手を出すってことはフリューゲル獣公国を敵に回すことになるし、それだけじゃなく自国やアミスター天帝国だって良い顔をしない。

 だからなんだろうけど、学園内でどんな扱いをされるのか、今から怖くて仕方ないんですけど?


 ちなみにその話は、翌日にはラインハルト陛下にも伝わっていて、やっぱりアウローラさんとの婚約を理由に公開することが決まっちゃったよ。

 レベッカは俺と同じくイヤそうな顔してたし、キャロルさんは苦笑してたけど、公開するのは何ヶ月か先になるみたいだ。

 それまでにどうやって学園内で過ごすか、話し合っておかないと。

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