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ヘリオスオーブ・クロニクル(旧題:刻印術師の異世界生活・真伝)  作者: 氷山 玲士
第一八章・フィリアス大陸統一
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新しいランク

 凱旋式、そしてフィリアス大陸統一記念祝賀会の翌日、俺達は天樹城の大会議室に集まることになった。

 褒賞についての話やレティセンシア地方をどうするかっていう問題もあるから、それを決めるための国際会議サミットが開催されるからだ。

 そのために王達は、昨夜はアルカに泊まっている。


 ああ、褒賞についてだが、リッターには合金製の武器と金銭、ハンターは魔物素材と金銭だったな。

 俺達もハンターとしての参加ってことで、終焉種の素材をいくつか貰えたぞ。


 ただその際問題になったのが、俺やレックスさんのオーダーズランクだった。

 俺もレックスさんも(オリハルコン)ランクという最上位のランクだが、だからこそ昇格することはない。

 簡単にオーダーズランクの昇格なんてできないし、しない方がいいんだが、終焉種討伐の実績は大きいし、(オリハルコン)ランクオーダーだから討伐できるっていう訳でもないから、ラインハルト陛下は新しいランクを増設されることを決められた。

 (オリハルコン)ランクの上に瑠璃色銀ルリイロカネ、その上に日緋色銀ヒヒイロカネと、比較的早く新しいランクを決めてたな。

 翡翠色銀ヒスイロカネ青鈍色鉄ニビイロカネと同じようにそのままじゃなく、ヘリオスオーブ読みのラピスライトランクとフレアライトランクってことになったから、それぞれ(ラピスライト)ランク、(フレアライト)ランクってことになる。

 制度として登録されるのはまだ少し先になるが、(ラピスライト)ランクへの昇格は終焉種の討伐、最上位の(フレアライト)ランクへの昇格はエレメントクラスへの進化ってことにするらしい。

 それでも一気に昇格というのは問題だから、俺、レックスさん、ローズマリーさん、ミューズさんは(ラピスライト)ランクオーダーに昇格ってことになるんだそうだ。


 こんな簡単に(オリハルコン)ランクの上を作ってもいいのかと思うが、作らないと功に報いれないって言われちまったし、今後(オリハルコン)ランクオーダーは増える可能性があるから、それも踏まえてってことみたいだ。

 実際サヤさんはアウトサイドの(エメラル)ランクオーダーだが、天騎士アーク・オーダーの称号を賜って(ディライ)ランクオーダーに昇格し、アーク・オーダーズコートも下賜されることになったからな。


「このランクはリッターズギルドにも適用する予定だが、何か意見はあるだろうか?」

「1つあります。大和天爵のご両親はエレメントクラスの上と思われるアーククラスですが、そちらは考慮されないのですか?」


 オーダーズギルドだけじゃなくリッターズギルドにも採用と口にするラインハルト陛下だが、そこにネージュさんが質問を投げかけた。

 確かに父さんと母さんはアーククラスというエレメントクラスの上と思われるクラスだったし、もしかしたらその間にも何かある可能性は否定できない。

 もしそうだとしたら、あと1つか2つ、新しいランクを新設しないといけないんじゃないだろうか?


「そちらについては考慮していない。際限なくランクを増やしても、到達できる者がいない可能性も高いし、コモン・リッターの士気も下げかねないからな」


 確かにそれはあるかもしれない。

 一般のリッターとなるコモン・リッターからすれば、役職に就くためにはハイクラスへの進化が必須だが、役職に就かずとも(ゴールド)ランクが1つの目標、目安になっている。

 だけど名誉ランクに近いとはいえ、新しいランクをポンポンと作ってたりしたら、自分達が蔑ろにされたと感じるかもしれないし、それが士気の低下に繋がる可能性は否定できない。

 リッターは治安維持も担っているから、士気が低下してしまえば治安の悪化にも繋がるし、自分達を軽視したとして不満を持つ貴族と結託して反乱を企てるなんてこともあり得る。

 だからリッターズランクについては、(ラピスライト)ランクと(フレアライト)ランク、そして総合学園生であることを示す、鉛を意味する(レッド)ランクの15段階で最終決定とし、以後増やすことはしないんだそうだ。


 なんで(レッド)ランクなんて新しいランクを作ったかだが、これについては学生ハンターを守るためっていう理由が大きい。

 ハンターは魔物を狩るのが仕事だが、学生の間は許可が無ければ学園の敷地から出ることは出来ない。

 在学中の昇格は無いから、ハンターズランクも一番下の(ティン)ランクのままってことになるんだが、一般のハンターからすれば(ティン)ランクは登録したばかりのルーキーでもあるし、中にはそういった者を狙う不届き者も存在している。

 そういったハンターは発覚すればしっかりと処罰されるんだが、だからといって放置しておく訳にはいかないし、既存のランクだと学生かどうかも判断が難しいから、新しいランクは学生を守るためっていう意味もある。

 だから、在学中は(レッド)ランクから昇格することは無いが、卒業と同時に(ティン)ランクとなり、依頼を達成することで適性ランクへと昇格することにしたそうだ。

 これはハンターズランクについてだが、他のギルドも基本は同じだな。

 まあ、学園生がギルド登録するのは2年目からだから、実際に(レッド)ランクレジスターが出てくるのは来年の春からになるんだが。


「なるほど、確かに仰る通りですね。いえ、失礼致しました」

「ああ。他にはないか?」


 特に他の質問は出なかったため、次の議題へ移る。


「では次に移る。レティセンシア地方の今後についてだ」


 オーダーズランクについては、俺達への褒賞っていう意味もあったが、重要度はさほどでもない。

 むしろ次の議題へのウォーミングアップのために、あえてこの場で伝えたっていう理由の方が大きいかもしれない。


「既に知っていると思うが、改めて報告しよう。レックス」

「はっ!我々はコバルディアにおいて、約1万もの数の魔物と遭遇しました。あまりにも数が多いことから、レティセンシア内の迷宮ダンジョンが、未発見や新規誕生を含め、その多くが迷宮氾濫(スタンピード)を起こしているのではないかと予想しております」


 皇国としてのレティセンシアは滅んだし、コバルディアも跡形も残らず消滅してるんだが、広大な土地は残っている。

 しかもその土地には魔化結晶で進化したと思われる魔物もいるし、迷宮氾濫(スタンピード)で溢れた魔物も多いだろう。

 今となってはどちらも確認のしようがないが、このままではレティセンシア地方は魔物の蔓延る危険地帯になりかねないし、国境を接しているアミスターやヴァーゲンバッハ、隣接している三公国にも危険が及びかねない。


「よって当面の間、レティセンシア地方は封鎖致します。ですが調査にどれほどの時間がかかるか分かりませんし、何よりヴァーゲンバッハは国境線が長いため、警戒も容易ではありません」

「その通りだ。こちらに来る前にソルジャーズギルドに増員を依頼してきているが、終焉種まで現れていたとなれば、とてもではないが対処しきれん」


 眉を顰めるカタリーナ橋公だが、言いたいことはよくわかる。

 ヴァーゲンバッハは縦に長い国で、東側は全てがレティセンシア地方だ。

 その全てを警戒なんてできるはずもないし、ソルジャーズギルドはソレムネ地方や他の橋公国の治安維持も担当しているからとてもじゃないけど人数が足りず、加えて終焉種までいる可能性があるとなれば、それはもう亡国の危機と言っても過言じゃない。

 アミスターも国境に面しているが、多くはマイライト山脈やリネア渓谷といった険しい地形に囲まれているしエンシェントオーダーも多いから、こっちはまだ十分対処可能なんだけどな。


「はい。ですから当面の間は、何名かエンシェントオーダーを常駐させる予定です」

「おお、それは助かる」


 すぐにできる対策としたら、それぐらいしかないよな。

 あとはエンシェントハンターに行ってもらうことだが、その場合は指名依頼になってしまうし、何よりハンターには迷宮ダンジョンの調査を頼まないといけないから、それは難しいか。


迷宮ダンジョンの調査は、ハンターに依頼するのですか?」

「その予定だ。現在レティセンシア地方で所在が判明している迷宮ダンジョンは3つ。いずれも東部にある。だがレティセンシアのハンターはロクに入っていなかったようで、ハンターズギルドにも情報は少ない。また、未確認の迷宮ダンジョンがある可能性も捨てきれないため、攻略には複数のレイドでアライアンスを組んでもらうつもりだ」


 やっぱりハンターは、アライアンスで攻略になるか。

 エンシェントクラスが増えたとはいえ、迷宮ダンジョン内じゃ何が起こるか分からないから、安全を期すならアライアンスを組むのが一番だ。

 もちろん実は階層が少なく、守護者ガーディアン(プラチナ)ランクだったってこともあり得るんだが、だからといって調査に手を抜いたら無駄な犠牲が出るだけでしかない。


「未確認の迷宮ダンジョンも気になりますが、まずは確認されている3つの迷宮ダンジョンを攻略し、危険度を下げるのですか」

「未確認とは言うが、本当にあるかも分からねえからな。それにその迷宮ダンジョンが、本当に迷宮氾濫(スタンピード)を起こしたのかも分からねえ」

「仮に大丈夫だったとしても、近いうちに起こすのは間違いない。攻略しとくのは賛成だな」


 ウルス橋公とポラリス獣公の言う通り、全部の迷宮ダンジョン迷宮氾濫(スタンピード)を起こしてるのかも分からないし、迷宮氾濫(スタンピード)を起こしてなかった場合でも、近い将来迷宮氾濫(スタンピード)を起こす可能性も低くはない。

 だから確認済みの3つの迷宮ダンジョンの攻略は、緊急性が高かったりする。


「どの迷宮ダンジョンにどのレイドを送り込むかは、後程検討する。だがハンターも戦いを終えたばかりの者達が少なくないから、そちらも考慮しなくてはならない」


 だな。

 休養もなしに迷宮ダンジョン攻略なんて、死んでこいって言ってるのと同じなんだし、ハンターがそんな依頼を受ける訳がない。


「ということは、此度の戦いに赴いたハンターにも、指名依頼を出されるのですか?」

「そうだ。迷宮氾濫(スタンピード)の直後ならば迷宮ダンジョン内の魔物は減っているだろうが、それでも何が起こるかわからない。また、可能な限り迅速に攻略する必要もある。よって複数のエンシェントハンターを投入し、同時に攻略を試みる」


 迷宮氾濫(スタンピード)を起こさなかった迷宮ダンジョンもあるかもしれないし、深層の様子も分かってないからな。

 だからエンシェントハンターの複数投入は必須なんだが、同時攻略ってことは戦力を分散することになってしまう。

 過去の迷宮氾濫(スタンピード)で出てきた魔物で、最も高ランクだったのが(アダマン)(イレギュラー)ランクモンスター ディザスト・ドラグーンだったから、それを踏まえての判断なんだろうなとは思う。


「同時に、ですか。1つ1つ攻略する方が安全な気もしますが、エンシェントハンター全員を一度に動かしてしまえば、万が一の際の防衛戦力に不安が残りますか」

「そうだ。リッターを軽視しているわけではないが、再度の迷宮氾濫(スタンピード)がないとも言い切れない以上、3つの迷宮ダンジョンは同時に攻略しておく必要がある」


 あれだけの数の魔物を溢れさせたんだから当面は大丈夫な気もしなくもないが、ラオフェン迷宮は数百の魔物を数度に分けて溢れさせたから、ラインハルト陛下の懸念も当然か。

 1つの迷宮ダンジョンを攻略するのにかかる日数も分からないし、何より再度迷宮氾濫(スタンピード)が起きてしまったら、今度はヴァーゲンバッハ方面に向かわれてしまう可能性もある。

 縦に長い国境線となっている以上、そっちの方が被害は甚大だ。

 となると、ハンターにはリスクが高いが、3つの迷宮ダンジョンを同時に攻略しないとっていう判断になっても仕方ないか。


 その迷宮ダンジョン攻略だが、俺達ウイング・クレストは参加しないことになった。

 俺が天爵であり、エスメラルダ天爵領とアマティスタ侯爵領の代官っていう肩書もあるから、長期の離脱は好ましくないっていうのが理由だ。

 俺としては参加したかったんだが、貴族としての仕事もしろって言われてしまうと、奥さん子供がいる身としては従うしかない。

 他にも進化したとされている終焉種がどこにいるか分からないという問題もあるし、エンシェントハンター全員が迷宮ダンジョンに入ってしまうと、また迷宮氾濫(スタンピード)が起きてしまった場合対処できなくなってしまうから、それに備えてっていう理由もあるか。

 エンシェントオーダーは未発見の迷宮ダンジョンや新しく生まれた迷宮ダンジョンの調査を優先するため、攻略にはエンシェントハンターがいるレイドにアライアンスを組んでもらい、割り当てられた迷宮ダンジョンを最速で行ってもらうんだそうだ。


 過去ディザスト・ドラグーンを溢れさせたフェルサ迷宮は、グレイシャス・リンクス、ワイズ・レインボー、セイクリッド・バードが。

 一番難易度が低いと予想されているブルガル迷宮は、ブラック・アーミーとスノー・ブロッサムが。

 そして第1階層から高ランクモンスターが出てくるロウクーラ迷宮は、ホーリー・グレイブとファルコンズ・ビーク、リリー・ウィッシュが担当することになり、決行も1週間後に決まった。


 外から見てるだけしかできないが、どうか無事に帰ってきてもらいたい。

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