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ヘリオスオーブ・クロニクル(旧題:刻印術師の異世界生活・真伝)  作者: 氷山 玲士
第一八章・フィリアス大陸統一
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皇都攻略と侯国独立

インフルって更新遅れました、すいません。

まだ体調戻ってないので、しばらくは数日に一度にさせて下さい。

 父さんと母さんが日本に帰ってから1ヶ月経った。

 数日前にはエドとフィーナの娘でハーピーの紗月さつきも生まれ、日ノ本屋敷は益々賑やかになった。

 サツキの名前は、エドから日本の名前を頼まれたこともあって、意味も含めていくつか見繕っておいたんだが、その中からエドが選んだものになる。


「他にいくつもあるのに、なんでよりにもよってその名前を選ぶのよ……」


 というのが真子さんの感想だが、俺もまったく同感だった。

 なにせサツキというのは、俺の伯母であり真子さんの先輩でもある人の名前でもあるから、エドがその名前を選んだ時は、真子さんともども戦慄したからな。

 普段は優しいけど、怒らせたらマジで怖いんだよ。

 一度兄貴が伯母さんと呼んで、殺されかけたこともあるからな……。

 ちなみに「紗」とは生糸の織物の一種のことで、絹もそれに含まれる。

 フィーナは木工師だが、最近は仕立てや裁縫にも本格的に手を出し始めているから、エドとしっかり相談した上で、この名前を選んだようだ。


 それはさておき、今日は天樹城で、コバルディア攻略戦、及びフェブロ・レヒストレス侯国建国の最終会議が開催される。

 コバルディアを落とし皇王家を滅ぼせば、フィリアス大陸は名実ともにアミスター・フィリアス連邦天帝国の名の下に纏まることができるから各国の王も参加するし、リッターズギルドもグランド・マスターが参加だ。

 フェブロ・レヒストレス侯国はエネロ・イストリアスより領土は狭くなるが、ナダル海に面している立地を活かし、ソレムネ地方への物資供給が軸となる中継国という位置付けになるらしい。

 だからレヒストレス候王となるパルメ・ゴルトシュティア嬢、さらに妖太子のブリュンヒルド殿下も、今日の会議には参加している。


「諸君、遠路はるばる、よく集まってくれた。それでは会議を始めよう。レックス、コバルディアの現状を報告してくれ」


 ラインハルト陛下の宣言によって、大会議が始まる。

 まずはコバルディア攻略戦からだ。


「報告致します。先々月の敗戦以降、アバリシアからの援軍は確認されておりません。またレティセンシア側も、魔族の敗戦は知らないものと思われます」

「情報を得る手段もないのだから、それは当然だな」

「仮にあったとしても、皇王家は情報を軽視していますからね。ですから情報を入手できたとしても、誤報と考えるのではないでしょうか?」

「でしょうねぇ」


 建国当初は知らないが、ここ数代の皇王は暗愚ばかりで、情報の有用性や重要性はほとんど理解してないそうだ。

 というより、自分達に都合の良い情報は率先して受け入れるが、逆に都合の悪い情報は即座に切り捨てて、その情報をもたらした者を処刑するっていう、救いようのない無能さらしい。

 だから魔族敗退の情報を手に入れる手段もないし、まかり間違って入手したとしても、絶対に信じないだろう。


「それはそれで構わない。万が一情報を入手していたとしても、連中に逃げるところなど無いのだから」

「そうですな。籠城ぐらいはするでしょうが、それさえ無意味な結果となります」


 ラインハルト陛下とライアー大公の言う通り、連中にとってコバルディアこそが最後の拠点だから、フィリアス大陸のどこにも逃げるところはないし、逃がすつもりもない。

 特に皇王城は、俺と真子さんの神話級術式で消し飛ばす予定だし、コバルディアも同様だ。

 だけど皇王の首ぐらいはあった方がいいから、最初はオーダーを中心としたリッター、そして志願してきたハンターでコバルディアを攻めようという意見もあるし、俺もそうするべきじゃないかと思っている。


「それは最後の詰めだな。だがその前に、以前より伝えているように、まずは実力でコバルディアを落とす。レックス、そのための隊の選出は完了しているか?」

「完了しています。エンシェントオーダーはフロートに残って頂くアソシエイト・オーダーズマスターとロイヤル・オーダーを除き、全員が参加致します。またリッターズギルドからの志願者の受け入れも、先日終了しました」


 リッターズギルドは父さんと母さんの地獄の特訓によって、新たに10人がエンシェントクラスに進化した。

 特に天帝家の護衛や警護が主任務のロイヤル・オーダーからは、ロイヤル・オーダーズマスターを含めて6人が進化している。

 これによってエンシェントオーダーは13人となったんだが、フロートや天帝家の守りを疎かにする訳にはいかないから、アソシエイト・オーダーズマスター ミランダさんとロイヤル・オーダーが残るのは当然か。

 さらにファーターズギルド、ドラグナーズギルド、ビースターズギルド、フェイサーズギルドもグランド・マスターが進化しているから、全てのリッターズギルドにエンシェントクラスが在籍する結果にもなっている。

 グランド・ファーターズマスターにグランド・ビースターズマスターは、引退が遠のいたってボヤいてたけどな。


「了解した。では後は、日程を詰めるだけだな?」

「はっ。その日程も、1週間後を目途に準備を始めております」


 リッターズギルドからの志願者は、グランド・リッターズマスター達に次ぐレベルのハイクラスを筆頭に、ファーター、フェイサー、ドラグナーは約20人、レティセンシアと国境を接しているビースターとソルジャーは約50人となっている。

 そしてオーダーズギルドからは約200人が従軍するし、エンシェントハンター率いるハンターズレイドも参加を希望しているから、総勢約500人ぐらいになるか。


「移動に関しましては、ハンターは自前の獣車で、リッターはオーダーズギルドが所有する多機能獣車を、リッターズギルドごとに割り当てます。また皆無に近い可能性ではありますが、レティセンシア側へ情報が漏れている可能性も鑑み、トラベリングを使ってコバルディア前に出る予定です」

「それも予定通りだな。物資に関しては?」

「武器防具ともに、エンシェントリッターは既に一新しておりますので、魔力による疲労劣化は問題ありません。エンシェントハンターはまだ確認しきれておりませんが、聞く限りではこちらも大丈夫かと」


 エンシェントクラスに進化すると、(ゴールド)ランク以下の素材はすぐに劣化して、使い物にならなくなる。

 だから装備の一新はもちろん、生活必需品の調達も必須となる。

 だけど(プラチナ)ランク以上の素材なんて簡単に集まらないから、そのためにレックスさんが何度かクラテル迷宮に行って、グランシルク・クロウラーを狩りまくったらしい。

 俺達もそうだから、気持ちはよくわかる。


「ハンターについては、改めて確認を頼む。それから今回は、私も同行する。異議のある者はいるか?」


 コバルディア攻略戦には、ラインハルト陛下も同行する。

 理由は天帝自ら皇王の首を取り、フィリアス大陸を統一したと喧伝するためだ。

 既にどこの国でも、フィリアス大陸は天帝の名の下に統一されたと認識されてるんだが、同時にレティセンシアがまだ健在だということも知られている。

 だからこそ天帝自らが赴き、皇王の首を取ることで、真にフィリアス大陸を統一した証ってことにする。

 各国の王達もそれは理解しているから、誰からも反対意見は出てこない。

 いや、ネージュさんが手を上げてるな。


「陛下、妃殿下方はどうされるのですか?」

「此度は同行しない。特にマルカは、レジーナを出産して間もないからな。リハビリ代わりの狩りならばともかく、魔族の相手などさすがにさせられないさ」


 それは俺も同感だから、マナはアルカで留守番してもらうつもりでいる。

 当然、妊娠中のプリムとフラムも留守番だ。


 そしてレックスさんが、改めて作戦内容を告げた。

 ハンターはレイドごとに、リッターもリッターズギルドごとに編成され、移動はトラベリングを使用する。

 転移先はコバルディア正門前で、転移完了と同時に全軍で進軍し、最終目的地は皇王城となり、ラインハルト陛下が皇王の首を取る。

 皇王を含む王家を処断した後は、すぐにコバルディアの外に転移し、俺と真子さんが生成するクラウ・ソラスとアガート・ラム最大の神話級術式トゥアハー・デ・ダナンを使い、コバルディアを住民ごと消し飛ばす。

 コバルディアの消滅を確認後は、そのままフロートに帰還し、作戦の終了とする。

 雑な感はあるが、コバルディアにいるであろう魔族はレティセンシア軍の兵士や住民だから、アバリシアの魔族より一段も二段も劣るだろう。

 もちろん油断は禁物だが、レティセンシアのハイクラスは、少なくともハンターでレベル50を超えてた者はいないことが確定しているから、魔族になったとしてもエンシェントクラス1人で複数を相手取ることは十分可能だ。

 まあルクスよりは強いだろうが、エンシェントクラスの多くはあの時の俺よりレベルが上だから、そんなに苦労することもないと思う。


「大雑把ではあるが、戦後の統治は不要となる。もちろん魔物を警戒する必要はあるし、新たに開拓する必要もあるが、しばらくは無人の地となるだろう」

「コバルディア以外の民は既に生きていないそうですから、それも仕方ありませんか」

「進化している魔物も多いでしょうから、開拓するにしても時間はかかりそうですね」


 既に住民がいないんだから、統治もクソもないよな。

 去年スカウト・オーダーがレティセンシア北部にも調査に行ってるんだが、その時点で魔化結晶を使ったと思われる従魔系の魔物が多数確認できたそうだし、中には災害種もいたって話だ。

 神帝の魔力のせいで終焉種に進化してる魔物がいる可能性も捨て切れないから、開拓するならそれらの魔物を一掃しなきゃ厳しい。

 だが終焉種の相手は簡単じゃないし、町や村の跡地も整地しなきゃだから、開拓するにしても何年も先の話になるだろうな。

 というか、俺の領地になるっていう可能性も低くない気がするんだが?


「開拓するにしても、一度に行うつもりはない。場合によっては、新たな三公に即位してもらう可能性もあるからな」


 っていうラインハルト陛下だが、確かにその可能性もあるか。

 その場合、橋公はその名の通り橋上都市を公都にしてるし、獣公は旧バリエンテ地方になるから、大公ってことになるんだろうか?

 いや、新しい公王位を考えて四公にするっていう線もあるな。

 まあ、それこそ何年何十年も先の話になるから、今は別にいいか。


「そちらについては、まだ先の話になる。だから今回のもう1つの議題、フェブロ・レスヒトレス侯国の独立、そしてヒルデガルド妖王の譲位について移りたいと思う」


 コバルディア攻略戦については、既に何度も議論されているし、今回は最終確認だから、新しい内容はない。

 だけどフェブロ・レヒストレス侯国独立、そしてヒルデの退位並びにブリュンヒルド殿下の即位については、こちらも何度か議論がされてはいるが、ようやく本決まりになったこともあって、今回正式に通達されることになった。


「フェブロ・レヒストレス侯国の独立は、何事もなければ8月の予定だ。候王にはそちらのパルメ・ゴルトシュティア嬢が即位し、パルメ・レヒストレスとなる。さらにその翌月には、ヒルデガルド妖王が退位し、妖太子であるブリュンヒルド王女が即位する」


 俺達もいつフェブロ・レヒストレス侯国が独立するかは聞いてなかったが、8月に決まったのか。

 急な気もしなくもないが、独立のために何ヶ月も前から動いてたし、言う程急でもないか。

 さらにここで、ヒルデの退位についてまで言及するとはな。

 トラレンシア国内でも噂レベルではあるが、近いうちにヒルデが退位するって話は広まっているから、このタイミングでも特に問題はないんだろう。


「8月ですか。即位は国都で?」

「ああ。候都レヒストレスで行う」


 候都はレヒストレスで決まりか。

 エネロ・イストリアスの伯都もイストリアスだし、伯国や侯国の国都は国名を冠する都市ってことで決まりなんだろうな。

 まあエネロ・イストリアスやフェブロ・レヒストレス以外の国は、まだ独立どころか目途すら立ってないから、どれぐらい先の話になるかも分からないが。

 とはいえ、こっちの方がレティセンシアを滅ぼすことより重要だから、王達の意見も遠慮がない。

 だけどフィリアス大陸の平和に直結する内容だし、何気に俺にとっても参考になる話も多かったな。

 いずれ拝領する予定だし、その際にも役に立つんじゃないかと思う。


 そのためには今度のコバルディア攻略戦、絶対に成功させないと。

 トゥアハー・デ・ダナンは一度使ってるが、クラウ・ソラスとアガート・ラムの特性を完全に掴めたとは言えないから、また明日から狩りに出て、しっかりと把握しないとだな。

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