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ヘリオスオーブ・クロニクル(旧題:刻印術師の異世界生活・真伝)  作者: 氷山 玲士
第一五章・総合学園開校準備
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施設の名称

 特筆すべきことは一切なく、無事にトレントの森の伐採は終了した。

 出てきた魔物は(ティン)ランクや(アイアン)ランクが多く、稀に(ブロンズ)ランクの上位種が出てくる程度で、(ゴールド)ランクなんて1匹もでてこなかったからな。

 ハイクラスに進化して間もないアリア、ハンター登録をして間もないレイナやセラスには良い経験になったと思うが、ハイクラスとはいえ濃い経験をしているキャロルやカメリアには微妙だったと思う。

 俺達に至っては言わずもがなだ。


「だからといって、油断なんてしてないわよね?」

「「「もちろんです!」」」


 だから俺にプリム、ルディアは途中からダレてきてたんだが、真子さんに恐ろしい笑顔を向けられてしまって、心の底から恐怖した。

 視線だけで人を殺せるんじゃないかと思ったが、魔眼魔法を使えば出来なくもないって言われたから、更に恐ろしかったぞ。


「3日どころか、2日で作業を終えるとはな……」


 獣王城に戻ると、疲れた表情のグリシナ陛下に出迎えられた。

 トレントの森が消えゆく様は獣王城からでもしっかりと確認出来ていたそうで、木々が大量に倒れていく様を見たのはもちろん、気が付いたら森が消えていたっていう事態も目撃していたそうだ。

 開発の件はグラシオンどころかアレグリア中に通達されてるんだが、それでも思ってもいなかった光景を目にしてしまったし、グラシオンでは何か悪い事の前兆なんじゃないかとパニックになりだす人もいたんだとか。

 そんなつもりは一切無かったんだけどな。


「それで、成果はどうだったのだ?」


 グリシナ陛下に問われて、改めてステータリングを確認する。


 (ティン)ランクモンスター

  スライム 229匹

  キャタピラー 385匹

  リーフ・リーチ 187匹

  フライ・ホッパー 367匹

  リーフ・バグ 234匹


 (アイアン)ランクモンスター

  ストーン・スライム 49匹

  コットン・キャタピラー 167匹

  ホーン・ラビット 482匹

  フォレスト・ウルフ 356匹

  フォレスト・ボア 561匹

  フォレスト・リーチ 161匹

  ファイア・ホッパー 137匹

  ブライト・バグ 230匹

  ゴブリン 427匹


 (カッパー)ランクモンスター

  アース・スライム 38匹

  ウール・キャタピラー 24匹

  スパイラル・ラビット 32匹

  イエロー・ウルフ 81匹

  イエロー・ボア 102匹

  スターレス・ホッパー 56匹

  シャドー・バグ 116匹

  フォレスト・ビー 320匹

  フォレスト・ファンガス 265匹

  ホブ・ゴブリン 158匹


 (ブロンズ)ランクモンスター

  レッドキャップ・ゴブリン 21匹

  パラライズ・モス 47匹

  バトル・ホッパー 59匹

  アース・ロック 39匹

  フォレスト・ビー・クイーン 7匹

  アイアン・ビートル 33匹

  パニック・ファンガス 28匹

  トレント 863匹


 (シルバー)ランクモンスター

  ウッドカット・モス 14匹

  アースフット・ホッパー 8匹

  グランド・ロック 8匹

  ブラッディー・トレント 19匹


 こんなもんか。

 数で言えばトレントが一番多いが、伐採したトレントの木も含めると、これでも1割程度にしかなっていない。


 トレントの木と魔物のトレントは、木材としては同じ物になる。

 だけど魔物の方は生物扱いになるから、普通にトレントの木を伐採しただけじゃ討伐リストにはカウントされない。

 遭遇しやすいトレントの森と言えど、全ての木が魔物化する訳じゃないし、これでも一度の討伐で持ち込まれる数はダントツで多いそうだ。


「数は多いが、モンスターズランクとしては別段問題は無いか」

「ホブ・ゴブリンやレッドキャップ・ゴブリンの数が多いのは気になりますが、あれだけの範囲で狩りを行っていたのですから、判断は難しいですね……」


 俺達もゴブリンの数は多いと思ったが、潰した集落は8つだし、多くても100匹はいなかったから、それだけだと特に多過ぎるって訳でもない。

 実際異常種は確認出来なかったから、グラシオン近隣じゃ生まれてないと思ってもいいだろう。

 西側のトレントの森は全部探索出来た訳じゃないから、こっちは調査した方が良いかも知れないが。


「ブラッディー・トレントも、討伐したトレントの数からすると少ないな。稀少種になるとはいえ、それなりに持ち込まれていたはずなのだが」

「合金が出回った事で、ハイハンターにとっては(シルバー)ランクも狩りやすくなっていると聞きますからね。ですがブラッディー・トレントは、一説によれば春から夏にかけて多く出没すると聞きます。冬が差し迫ったこの時期では、魔力を溜め込むのが難しいのではありませんか?」

「そう言えばそうだったか」


 上位種はその名の通り通常種の1つ上の種族になるが、魔物によっては存在せず、通常種の上が稀少種になる事もある。

 トレントもこちら側の魔物で、上位種は存在していない。


 その稀少種ブラッディー・トレントは、狩ったトレントの数と比べるとあまりにも少ない。

 稀少種は数日に一度生まれるという説もあるから、言う程希少って訳でもないんだが、魔物によって出現率に差があるとも考えられている。

 実際ブラッディー・トレントは、春から夏にかけては1日に数匹が持ち込まれる事もあるそうだ。


 トレントは植物型の魔物だからなのか、暖かい地方という例外を除けば冬はほとんど活動をしない。

 魔物だから全く活動しない訳じゃないが、トレントの森であっても遭遇率が著しく低下する程だ。

 だからブラッディー・トレントが持ち込まれるのも、春から夏にかけてが一番多く、冬が近いこの時期だと見かける事すら稀らしい。


「ともかく、これらの魔物は其方達が狩ったのだから、我々がとやかく言うような事ではない。伐採したトレントの木は建材としても使いたいので、全てとは言わぬがなるべく多めにトレーダーズギルドに卸してもらえると助かる」


 狩った魔物は、トレントも含めて全部俺達の物にしていいようだ。

 さすがに素材としては微妙どころか使えないから、大半は売る事になるだろうな。

 特にゴブリンは亜人だから、魔石しか取れないし。


「さすがに数が数ですし、魔物トレントもけっこう狩りましたから、伐採したトレントの木は全部卸すつもりです」


 ブラッディー・トレントも含めると900匹近い数を狩ってるから、数としてはこれでも多過ぎる。

 トレントは魔物化すると一回り小さくなるが、それでも個体差はあるし、幹回りも3メートルはあるだろうから、それが900本ともなると逆に使い切れない。

 だから魔物トレントも、半分はハンターズギルドに売るか、もしくは獣王家に献上するかするつもりでいる。


「そうか、感謝する」

「いえ、施設が早く完成すれば、それだけ問題も減るでしょうから」


 普通材木は、乾燥させて水分を抜かないと使えない。

 天樹魔法を使う事で数日程度に短縮させる事が出来るそうだが、普通は何ヶ月も掛かる。

 トレントの木も同じで、乾燥させないと使い物にならず、これは桜樹や天樹であっても例外じゃない。

 だけど魔物トレントは魔物化しているからなのか、即座に木材として使う事が出来るから、本当に謎な生態だと思う。


「重ねて感謝するぞ。では予定より1日早くなったが、明日から作業を行う。リモーネ、すぐにヘッド・プリスターズマスターに連絡を」

「畏まりました」


 これで開発のための下準備は整った。

 まずはヘッド・プリスターズマスターとグランド・ランサーズマスターの儀式魔法アルターズマジックで結界を拡張し、その後でクラフターが予定地を整地する。

 整地作業が終わったら基礎工事を行い、加工した木材やアレグリア・コンクリートを使って施設の建造。

 今回は大量のトレントの木が手に入ったから、木材はトレント一択だ。

 アレグリア・コンクリートの配分比は獣王家の秘伝だが、リベルター地方の橋上都市にも使ってるから、頑丈さには定評がある。

 特に戦闘訓練にも使うコロシアムは、頑丈さが必要になるからな。

 ちゃんと鉄筋を入れてるところも、ポイントが高い。


 敷地面積だけで東京ドーム5つ分にも及ぶ施設の建設だから、地球なら何年もかかる大事業だ。

 ヘリオスオーブでも大事業っていうのは間違いないが、建設期間そこまでかからない。

 魔法があるからっていう理由が一番大きいが、クラフターの技術が高いっていうのも大きいな。

 精密な部品でさえ、クラフター次第だが工芸魔法クラフターズマジックで作れるから、精密部品を作るための精密機械が必要なかったり、無菌室だとか真空室だとかが無くても作業が出来るって反則じゃないかと思う。

 ちなみに完成予定は、半年後だったりする。


「ところでMARS(マーズ)施設だが、いずれは天帝国や三王国にも建造される予定だ。つまり施設の名称を我が国が決める事は出来んのだが、既に決まっていたりするのか?」

「ええ、まあ」


 MARS(マーズ)を設置するから、施設の名前もローマ神話に拘ってみた。

 とはいえさすがに俺1人じゃ無理だったから、真子さんやサユリ様にも手伝ってもらったんだが。


「正式名称はMonsters(モンスターズ) Ilusion(イリュージョン) Nature(ネイチャー)Engage(エンゲージ) Reproductionリプロダクション Village(ヴィレッジ) Area(エリア)、略してMINERVA(ミネルヴァ)になります」


 単語を並べただけでしかないが、元高校生の俺とヘリオスオーブに来て80年以上経ってるサユリ様だと、これが限界だった。

 意味としては、魔物の幻影を再現した研究と戦闘訓練を行う施設集落、となる。

 真子さんに交戦を意味するEngage(エンゲージ)っていう単語を教えてもらわなかったら、刃物を意味するEdge(エッジ)で妥協しようかと考えてたぐらいだから、マジで感謝だ。

 だけどミネルヴァは詩・医学・知恵・商業・製織・工芸・魔術を司る女神だし、ギリシャ神話の女神アテナと同一視されてる戦女神でもあるから、研究と戦闘訓練を行う施設の名称としてはピッタリだと思ったんだよ。


「なるほど、其方の世界における女神か。確かに知恵や工芸、魔術、そして戦をも司っているという事なら、これ以上ない名称よな」

「ありがとうございます」


 ラインハルト陛下やリカさんも、同じような事を言ってくれたからな。

 ミネルヴァはローマ神話の女神で、ギリシャ神話のアテナと同一視されている女神でもあるから、由来を知ったアテナは少し照れてたが。


「それではMARS(マーズ)施設は、正式にMINERVA(ミネルヴァ)として建設を開始する。完成予定は半年後だが、多少のズレは発生するだろう。だが完成したら、其方達も開発者として、祝典に招待させていただく」

「完成を楽しみにしています」


 MARS(マーズ)設置のためにまた来なきゃいけないが、これで俺達の仕事は一旦終わりだ。

 完成祝典は派手にするつもりだってグリシナ陛下は言ってるし、俺やフラム、ルディア、真子さんは開発者として招待されるから、その時はウイング・クレスト全員で参加させてもらおう。

 あ、メモリア総合学園は始まってるから、学生達は難しいか?

 いや、デイヴィッド殿下は参加する事になるだろうし、各国の王族も招待されるから、護衛っていう名目で参加出来るかもしれない。

 エネロ・イストリアス伯国の公太子候補も招待する事になるが、さすがにお歴々の前じゃ大人しくしてるだろうから、大きな問題は起きないだろうと思いたい。

 そこは俺の考える事じゃないか。


 それよりもMINERVA(ミネルヴァ)に設置するMARS(マーズ)の製作に、出来得る限りの改良も加えないとな。

 特に結界はメモリア総合学園より大きくなるわけだから、魔石から厳選しないといけない。

 執務もあるし、帰ったらまた忙しくなりそうだな。

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