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ヘリオスオーブ・クロニクル(旧題:刻印術師の異世界生活・真伝)  作者: 氷山 玲士
第一三章・披露宴に向けて
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ヴァルトの後嗣と特産品

 朝飯を食った後、俺、プリム、マナ、ミーナ、リディア、ルディア、アテナ、アリア、真子さん、アプリコットさんは天樹製獣車に乗り、ヴァルト獣公国公都オヴェストへ転移した。

 俺的には気が重いが戴冠式で話は出たし、ヴァルトの将来を考えると受け入れるしかないと諦めるしかない。


「なんて言ってるけど、プリムやアプリコット様と同じフォクシーだし、妖艶な狐耳美女なんだから、別にイヤってワケじゃないでしょ?」

「……心を読まないで下さい」


 真子さんの言う通り、ネージュ陛下が嫌だという事はない。

 ネージュ陛下はプリムの従姉でアプリコットさんの姪だから、容姿はよく似ている。

 従姉妹だと説明されてなかったら、プリムの姉だと思えるぐらいだ。

 そのネージュ陛下と子作りなんて、俺的には大歓迎だな。

 とはいえ、現状で18人の女性と関係を持ち、しかも全員が寝室に来る事もある訳だから、体力とか精力的に辛いのも事実だ。


「噂だと、一度に相手をするのは、多くても10人ぐらいらしいからね」

「それにシングル・マザーは、夫と行動を共にするワケじゃないから、年に数度会えたら良い方だわ。中には一度関係を持ったら、二度と会わないなんていうロクデナシもいるって言うじゃない」


 その話は、俺も聞いた事があるな。

 妻の数に制限は無いが、父なる神の妻とされる女神が12人という事もあって、妻は12人が最大だという慣習がある。

 俺もその慣習を盾にすれば、これ以上奥さんが増える事はないそうだ。

 代わりに妾が増える事になるんだが、俺の中では奥さんもお妾さんも同じだから、その場合はアルカに住んでもらう事になる。

 不用意に増やすつもりはないし、俺にも限界はあるから、これ以上はさすがに勘弁だっていうのが正直なところだ。


「ネージュ陛下を入れて19人ですか。それならいっそのこと、20人にしても良いんじゃありませんか?」

「キリも良いし、その方が良いわね」


 なのにリディアとプリムは、あと1人増やそうとか言ってやがる。

 1人増えるだけでも、マジで大変なんですよ、奥様方?


 道中、何故か妾の上限が決められてしまい、その話をしている間にヴァルト獣公の屋敷に到着した。


 ヴァルト獣公国は旧バリエンテ西の王爵領とガグン大森林周辺地域、そして旧ハイドランシア公爵領からなっている。

 バリエンテ地方としては珍しく森が少なく、代わりにいくつかの鉱山があるため、鉱業が主産業だ。

 木材も、国内で消費する分は問題なくあるんだが、農地は取りにくいため、食料は輸入品が多い。

 公都オヴェストには港もあるから、貿易都市としても栄えている。

 さらにガグン大森林が国土に加わったため、扶桑やガグン迷宮産の魔物素材も特産になり始めたとか。


「いらっしゃい、待っていたわ」

「お久しぶり、ネージュ姉様」


 応接室に通されると、そこにはネージュ陛下が待っていた。


「早速だけど、大和君。私はあなたとの子を、次のヴァルト獣公にしたいと思っているわ。構わないかしら?」


 座って紅茶が運ばれると、ネージュ陛下は単刀直入に要望をぶつけてきなすった。


「えーっと、本当に俺で良いんですか?」

「勿論よ。というか、大和君以上の男性はいないわ」


 なんかえらい過大評価されてるな。

 俺以上なんて、探せばいくらでもいるだろうに。


「ついでに言うと、ラインハルト陛下の承諾も得ているわ」


 手を打つのが早くないですかね?

 とはいえ、こういう場合、ラインハルト陛下は真っ先に選択から除外されるんだよな。


 天帝として即位したラインハルト陛下の子には、当然ながら天帝位継承権が発生する。

 子供にその気がなくとも、周囲がそそのかしたり勝手に動いたりなんて事もあり得るだろう。

 だからラインハルト陛下に限らず過去のアミスター王家の男性も、妾を持った事はない。

 それでいて妻の数は、多くても5人ぐらいらしいから、天帝位継承権を持つ子は多くなく、継承問題は常に起きていると言ってもいいだろう。


 それもあってか、優秀な部下が欲しいアミスターとしては、相手が王だろうが貴族だろうが、遠慮なく相手を紹介する事もあるらしい。

 ラインハルト陛下の承諾を得ているという事は、俺の子がヴァルト獣公を継いでも何の問題も無いという事になる。

 そういやメモリアのサブ・オーダーズマスター ダートも、先日ハンターの女性を紹介されたとかって言ってたな。


「あー、その、俺は奥さん9人に婚約者3人ですから、慣習通りに結婚は出来ません。それでも良いんですか?」


 答えは分かってるが、それでも聞かずにはいられない。


「もちろんよ。横から割り込むのは、私の趣味じゃないわ。それにプリムがいるんですもの、結婚なんてしたら問題しか起こらないわ」


 予想通りの答え、ありがとうございます。

 姉妹が同じ相手に嫁ぐ事は珍しくないが、その場合は姉の方が妻間の序列が高くなる。

 序列と言っても名ばかりのものだが、対外的には必要になる事もあるから、初妻以外は序列変更される事もそれなりにあったりするらしい。

 従姉妹同士でもこれは同じなんだが、プリムとネージュ陛下のケースだと困ったことになってしまう。

 プリムは俺の初妻だから、妻の中では最も序列が高い。

 だがネージュ陛下はプリムの従姉だから、そのプリムより上の扱いをするのかどうかっていう話になるし、俺と同じ天爵となったマナやユーリ、ヴァルトより格上となるトラレンシア女王のヒルデはどうなるんだっていう話にもなってしまう。

 だからネージュ陛下としても、無用な面倒を背負い込むつもりはないらしく、俺と結婚しようとは思っていないそうだ。


「あー、わかりました。ただ俺としては、子供の面倒も見るつもりはあるんで、この屋敷の私室とヴァルト城の私室にゲート・ストーンを設置させてもらいたいんですが」

「プリムから聞いてるけど、本当に良いの?他の公国には設置してないんでしょう?」

「どこにも設置する予定はないですよ。トラレンシアもヒルデが退位したら、撤去する予定ですから」


 アミスターは中心国だから例外だし、サユリ様っていう客人まれびともいるからな。

 それにヴァルトに設置する理由は、子供の面倒を見るっていうのもあるが、結婚しないだけで奥さんとして認識してるから、気軽に来てほしいっていう意味もある。


「そうなのね。でも、ありがとう。お言葉に甘えさせてもらうわ」


 容姿はプリムに似ているが、柔らかい雰囲気はアプリコットさんにそっくりだな。

 思わずドキッとしてしまったぞ。


 わずか10分足らずで要件は終了してしまったが、さすがにこれだけで帰るのは問題でしかない。

 いや、ゲート・ストーンは持ってきてるから、ネージュ陛下の私室に設置させてもらわないといけないし、もうちょい時間は掛かるか。


「陛下、ガグン迷宮の様子はいかがですか?」

「何とも言えませんね。入るハンターは多くなっていますが、多くはアミスターやバレンティアから来たハンターですから、本格的に入っているとは言い難いです」


 主要産業の1つになったとはいえ、ガグン迷宮の魔物素材はあまり流通していない。

 その理由は、入るハンターが少ないからだ。


 数ヶ月前まで内乱状態だった事もあり、旧バリエンテは高レベルのハンターが優遇されていた。

 戦力になるからっていうのが理由だが、そのせいで治安まで悪化してしまっていた。

 多くのハンターは礼節を弁えていたんだが、中には横暴な者もいたし、無法者の集団まで現れていたらしい。

 注意すれば相手側に付くと脅し、実際にそうした者も少なくなかったみたいだ。

 だが内乱が終結し、バリエンテが分譲独立した上で連邦天帝国に参加した今では、そんな連中は軒並み処罰されている。

 特に反獣王組織に参加していたハンターは、ライセンスの剥奪ばかりか投獄、処刑まであったんだとか。

 処罰されたハンターは、バリエンテに在籍していたハンターの3分の1にも及んだため、独立した獣公国にとっても大きな問題だった。

 防衛戦力としてビースターズギルドがあるとはいえ、高レベル、特にハイハンターともなると一騎当千の実力者も多いからな。

 しかも処罰されたハンターはレベル40前後の者が多く、ハイハンターも少なくなかったっていうから、元々無法が罷り通っていた事もあって、ガグン迷宮に入るハンターはさらに少なくなってしまった。

 ネージュ陛下もヴァルトのヘッド・ハンターズマスターも、その事は問題だと感じていたから、各国にハンターの派遣を依頼していたんだが、それでもガグン迷宮に入るハンターは、最盛期に比べると半分近くにまで減っているそうだ。


「余裕が出来たら、俺達も入ってみるか?」

「それはアリね。ガグン迷宮は、確か到達階層は第19階層だけど、道中にはクロウラーがいるらしいし、その辺から(ゴールド)ランクモンスターも出てくるそうだから、需要も多いでしょう」


 クロウラーがいるのか。

 クロウラーの糸は絹になるから人気は高いんだが、需要に反して供給は少ない。

 ハウラ大森林には生息しているそうだが、(シルバー)ランクモンスターだからノーマルクラスでは相手するのが厳しいし、吐く糸はハイクラスでも容易に斬れないそうだから、討伐される事はあまりないと聞く。

 それでも絹糸は、ハウラ大森林に生息しているクロウラーからっていうのが一般的だ。


 ガグン迷宮第19階層はアンデッド階層だったはずだから、それまでのどこかの階層に生息してるんだろう。

 合金製武具がもっとハンターに浸透すればクロウラーの討伐数も増えるから、需要も満たせるんじゃないだろうか?

 そうなれば絹は、ヴァルトの特産品って事にもなるんじゃないか?


「絹が特産品に?それは魅力的だわ」

「そういう事なら、あたしもガグン迷宮に入ろうかしらね」

「ありがたいけど、いいの?」


 ネージュ陛下は、俺達がヴァルトに肩入れしてもいいのかを心配している。

 だけどそこは、あんまり心配しなくてもいいんじゃないかな。


「あたしはヴァルトの獣公位継承権1位なんだから、それぐらいは別に構わないでしょう」


 そう、ヴァルトの獣公位継承権を持っているプリムがいるから、問題視されてもどうとでも出来てしまう。

 それに絹がヴァルトの特産品となれば、他国にも供給される事になる。

 絹は高級品だから、供給量が増えれば貴族とかにも喜ばれるだろう。


「いえ、ウイング・クレストが肩入れしてくれるのが問題なのよ。プリムだけならどうとでも出来るんだけど」

「大丈夫ですよ。ネージュ陛下が大和の子を産む事になるんなら、それは身内と言っても過言ではありません。身内を助けるのに理由は必要ありませんし、私達は自分達の都合で迷宮ダンジョンに入ります。ハンターがどこの迷宮ダンジョンに入ろうと、それはハンターの自由ですから、文句を言われる筋合いもありませんよ」


 ネージュ陛下の懸念を、マナがハンターの理屈で押し通した。

 無理矢理な気もするが、俺もその通りだと思う。

 貴族になってしまったとはいえ俺はハンターだと思っているし、ハンターがどこで活動するかはハンターの自由だから、貴族どころか国家君主が何を言っても気にする必要はない。

 文句を言ってくるようなら、その国に行かなければ良いだけだからな。

 乱暴だし極論ではあるが、これで押し通しても構わないだろう。


「強引ですね」

「それぐらいはね。問題視されたら、ハンターズギルドだって黙ってないもの」


 貴族でもギルドに登録しなければならないと法で定められてるとはいえ、ハンター登録する貴族は多くはない。

 それでもギルド活動って事で他の貴族領に行く事は珍しくないから、それぐらいで文句を言ってたら活動そのものが出来なくなるしな。


「なるほどね」


 苦笑しながらも納得するネージュ陛下。


 その後もガグン迷宮やガグン大森林、ヴァルトの様子を聞き、陛下の私室にゲート・ストーンも設置した。

 早速今夜、アルカにやってくるそうだ。

 真子さんと結婚したのが昨日なのに、まさかその翌日にお妾さんが増える事になるとは……。

 いや、こうなった以上、頑張るけどさ。

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