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ヘリオスオーブ・クロニクル(旧題:刻印術師の異世界生活・真伝)  作者: 氷山 玲士
第一三章・披露宴に向けて
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しんごうの意味

申し訳ありません、予約投降ミスりました。

 なんかマナが真子さんに視線を向けてるが、なんかあったか?


「真子、もしかしてだけどあなた、意味が分かってるんじゃない?」


 そうなの?


「心当たりが無いワケじゃありませんけど、まさかとしか思えなくて。それに仮にそうだったとしても、今の私達じゃ絶対に無理ですから」


 マジで心当たりあるのか。

 だけど俺にはサッパリだから、無理でもいいから教えて下さい。


「私より大和君の方が身近なんだけどね。まあいいわ。多分としか言えないけど、『心合』、つまり心を合わせるっていう意味だと思うわ」

「心を合わせる?」

「刻印術師ならば分かるとの事だが、我々にはサッパリ分からないな」

「心を……あっ!二心融合術か!」

「多分だけどね」


 プリムとラインハルト陛下は首を傾げているが、そこまで言われて理解出来た。

 というか、なんでヘリオスオーブの神様が二心融合術の事を知ってるんだよ?


「二心……融合術?」

「何なの、それ?」

「簡単に言うと、2人の刻印法具を1つに融合させる事よ。ただ口で言うのは簡単だけど、大和君のお父さんとお母さんが実際に行うまで、成功させた人達はいないって言われているんです」


 二心融合術は、御伽噺とかではよく目にする事が出来る。

 だから言葉だけなら誰でも知ってるんだが、成功させた人はいないと言われていた。

 だが神槍事件と呼ばれる刻印術師優位論者のクーデターで、俺の父さんと母さんが歴史上初めて二心融合術を行い、首謀者はおろか便乗して攻めてきた隣国の艦隊を纏めて消滅させている。


「今じゃ他にもいるけど、それでも父さん母さん含めて3組6人だな」


 二心融合術で生成される刻印法具は、超常的な力と自らの意思を持つため、刻印神器と呼ばれている。

 現在確認されているのは魔弓ガーン・デーヴァ、聖杯カリス、そして神槍ブリューナクの3つだけだ。

 まあ刻印神器ごとに特性が異なるから、研究は全く進んでないらしいが。

 ガーン・デーヴァは弓の両弦が刃に、矢は槍にもなるらしいし、カリスは二心融合の時点で聖剣エクスカリバーが関わってるし、そのエクスカリバーの鞘でもあったりする。

 極めつけがブリューナクで、2振りの神剣にもなるだけならともかく、父さんの聖剣カラドボルグと母さんの聖弓フェイルノートにも分離するから、奇天烈さでは全刻印神器中ダントツのトップだ。

 ちなみにガーン・デーヴァが生成されたのは10年ぐらい前だから、真子さんは俺が口にするまで存在を知らなかったりもする。

 仕方ない話なんだけどな。


「大和の世界の艦隊っていうと、ソレムネの蒸気戦列艦よりすごいんだったわよね?」

「発展型ではあるが、蒸気戦列艦程度じゃどう頑張っても沈めるのは不可能だな」


 デカいし、隔壁なんかも標準装備だから、船底に穴を空けても簡単には沈まないしな。


「大和君達の世界の軍船は、そんなに巨大なのか……」


 空母のサイズを口にしたら、ラインハルト陛下が驚きながらも考え込む素振りを見せた。

 ヘリオスオーブの船は最大でも50メートル程だから、地球の軍艦に比べると小さく見える。

 確か軍艦が巨大になった理由は積み込む大砲も影響してたはずだし、乗員の数にもかなりの差があるから、ヘリオスオーブでは大型船は発展していない。

 魔法があるから作ろうと思えば作れるんだが、その意味も薄いしな。


「大きくなった分、小回りは利きませんけどね。それはそれとして真子さん、心融合術なんていう言葉が神託で来るとは思わなかったけど、試してみます?」

「構わないけど、その前に大きな問題があるでしょう?」


 質問に質問で返されてしまったが、確かに大きな問題がある。

 二心融合術はお互いの刻印法具を融合させる刻印融合術の一種だが、俺のような双刻の生成者の場合は融合型刻印法具が対象になる。

 だがその融合型刻印法具を、俺はまだ生成する事が出来ていない。

 元々融合型刻印法具の生成者は地球でも十数人しかいないと言われているし、日本で生成できるのは父さんと母さんだけだ。

 S級刻印術ミスト・ソリューションを完成させたら教えてもらえる事になってたんだが、その前に俺はヘリオスオーブに転移してしまったから、独力で何とかしないといけない。


「あとは、融合型と複数属性特化型しか成功例がないから、単一属性型でしかない私のスピリチュア・ヘキサ・ディッパーでもいいのかっていう問題ね」


 それは確かにそうだが、神託が下った訳だし、不可能って訳じゃないと思うけど?


「というかスピリチュア・ヘキサ・ディッパーって、単一属性型だったんですか?」

「ええ、風属性よ。スピリット・ディッパーはオプションだから、カウントされないの」


 そういやスピリチュア・ヘキサ・ディッパーって、生活型だったな。

 生活型に分類される刻印法具は、刻印術の処理能力が高いため、基本属性以外の刻印術でも問題なく使える。

 しかも真子さんのスピリチュア・ヘキサ・ディッパーは、各属性に特化したスピリット・ディッパーっていう柄杓まであるから、てっきり複数属性特化型だと思ってた。


 複数属性特化型刻印法具は、基本属性が2つとなり、処理能力も生活型並みに高い。

 刻印法具の処理能力は、形状にも左右されるが、最も高いのが設置型、次いで生活型となっている。

 その下にほぼ横並びで武装型、携帯型、装飾型あり、一番処理能力が低いのが消費型だ。

 俺のミラー・リングは装飾型、マルチ・エッジは消費型だから、処理能力はスピリチュア・ヘキサ・ディッパーの足元にも及ばない。


 複数属性特化型は、2つの属性を高レベルで使いこなし、高い処理能力を活かせることから、刻印神器に匹敵するとまで言われている。

 だからスピリチュア・ヘキサ・ディッパーは、その複数属性特化型だとずっと思ってたんだよ。


「生活型や設置型は分かりにくいからね。それで大和君、刻印融合術の方はどうなの?」

「サッパリです」


 ヘリオスオーブに転移してからずっと頑張っているんだが、まったくもって刻印融合術が成功する気配が見られない。

 刻印融合術は双刻で生成した2つの刻印法具を融合させ、新たな1つの刻印法具に融合させる術式なんだが、双刻の生成者も全員が成功する訳じゃないどころか一生出来ない人の方が多かったりする。

 だが成功すれば、属性は1つのままだが処理能力は大幅にアップするし、刻印術の威力も底上げされる。

 どんな形状になるかは生成してみないと分からないが、戦力アップにも繋がるから、俺としても是非とも成功させたいところだ。


「頑張るしかないのは分かるけど、教えてくれる人がいないっていうのは致命的よね」

「そうなんですよねぇ……」


 とはいえ、今のままじゃ一生かかっても成功させられないだろう。

 さすがの真子さんも、刻印融合術なんて試せないからな。


「前に聞いた時は、確か『初心忘るべからず』って言ってたんだけど、こんな事ならもっとしっかりと聞いとけば良かったわ」

「さすがにこんな事態は考えないし、考える人もいないですけどね」


 異世界転移なんて、小説とかゲームとかでしかお目にかかれないと思ってたしな。

 しかもその転移で両親の親友が若い姿のままで現れるなんて、予想しろってほうが無理だ。


「刻印融合術は、試行錯誤を続けますよ」

「それしかないわね。それに聞く限りじゃ、大和君が魔族に囲まれる時でも出来てないみたいだし、慌てる必要もないか」


 それがあったな。

 ガイア様の予知夢では、俺は遅くても2年以内に魔族の大群に囲まれ、孤立してしまう事になっている。

 しかもマナは子供を産んだ直後、プリムとリカさん、フラムは妊娠中だって話だったな。

 ガイア様が言うには、俺は薄緑の他に短剣を持っていたそうだから、マルチ・エッジを生成していると判断してもいいだろう。

 マルチ・エッジを生成しているという事は刻印融合術を使っていないという事になるから、少なくともその時点で、俺が刻印融合術を成功させてはいないと判断できる。

 刻印融合術が使えるなら、間違いなく融合型刻印法具を生成してる状況だから、この推測は間違いないだろう。


「もしかしたらだけど、神々も二心融合術っていう言葉を知ってるだけで、条件までは知らないのかもしれないな」

「でしょうね」


 なんで知ってるのかっていう疑問はあるが、神帝から漏れたっていう可能性もあるしな。


「私達にはよく分からない話だな」

「本当にね。そういえばその刻印神器って、そんなに凄いの?」


 何度か話してはいるが、実際に目にした事が無いから、マナがそんな疑問を口にした。

 俺は刻印神器を見た事は何度かあるが、神話級刻印術は見た事がないから、気持ちは分からんでもない。


「凄いっていうレベルじゃないですね。あまりにも威力があり過ぎるから、気軽に使う事が出来ないんですよ」


 真子さんは父さん達と一緒に戦った事があるそうで、刻印神器も神話級刻印術も何度か直接目にした事があるそうだ。

 その真子さんは、ブリューナク、カラドボルグ、フェイルノート、エクスカリバー、カリスの神話級刻印術を見た事があると口にした。

 5つもっていうのは凄いが、カラドボルグは父さん、フェイルノートは母さんが生成するし、ブリューナクはそのカラドボルグとフェイルノートの二心融合で生成された刻印神器。

 カリスはエクスカリバーと母さんの先輩が生成する複数属性特化型の二心融合術で生成されるし、その人達の娘が兄貴の恋人だから、俺からしたら身内になる。

 だからって事で見せてもらっただけなんだよな。


「艦隊、終焉種に匹敵かそれ以上の怪物を消滅、か。凄まじいな」

「その刻印神器を、大和と真子も生成出来るかもしれないって事?」

「そうなんですけど、二心融合術は難易度が高すぎます。それに、これも聞いた話ですけど、二心融合術が出来るかどうかは、本人達は何となく分かるそうなんですが、それでも絶対っていうワケじゃないそうなんです」


 それは俺も初耳だな。


「そうなの?」

「はい。大和君のご両親の話になりますが、2人はそれぞれが融合型刻印法具の生成者でもありますが、その融合型刻印法具を生成した時に、お互いがその先もあるんじゃないかと思っていたそうです」


 融合型刻印法具を生成した時に、なんとなく出来るかもしれないっていう感じだったのか。

 何度か試したけど成功はせず、差し迫った状況で成功したって話らしい。


「つまり大和が刻印融合術を成功させないと、それも分からないって事なのね」

「そうなりますね」


 結局は俺次第かよ。

 いや、確かにそうなんだけどさ。


 だけど真子さんと二心融合術が出来れば、俺達も刻印神器を生成する事が出来るようになる。

 戦力アップは間違いないし、魔族と化した神帝が相手でも大きなアドバンテージになるはずだ。

 それに予知夢に振り回されるのもシャクだから、何とか覆せるようにしてみたいっていう気持ちもある。

 よし、今日……は無理だから、明日から頑張ってみるか。

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