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ヘリオスオーブ・クロニクル(旧題:刻印術師の異世界生活・真伝)  作者: 氷山 玲士
第一三章・披露宴に向けて
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戦女神との結婚と神託

 レティセンシアで災害種オーシャンハウル・グランドを倒し、天樹城で結婚披露宴の打ち合わせをしてから5日経った。

 今日俺達は、エスペランサにあるプリスターズギルドにやってきている。

 理由は、真子さんと結婚の儀式を行うためだ。

 真子さんとしてはアテナより後に結婚するつもりだったらしいが、アテナの誕生日は8月だからまだ2ヶ月程ある。

 だがそのアテナも、今度の結婚披露宴は俺の嫁として出席する予定だ。

 それに初妻以外は、特に妻の間に序列なんてものは無いから、いつ結婚してもあまり問題にはならなかったりもするんだよな。

 だから俺と結婚できるんなら、披露宴までに結婚しておくべきだってアテナが言ってくれた事で、真子さんとの結婚が決まった訳だ。

 本来ならフィールかフロートで儀式を行うつもりだったんだが、ある理由からエスペランサになった。

 プリスターズギルド総本部がフロートに移動になったとはいえ、エスペランサは依然としてプリスターやフェイサーの聖地だし、何より宝樹そのものがプリスターズギルドだから、俺としても一度ぐらいはそこで結婚の儀式を行ってみたかった。

 本来ならプリスターのアリアとの儀式で使うべきなんだろうが、俺との結婚はユーリと同じタイミングになるようだから、この機会を逃すと多分無理だろうっていう理由もある。

 フィールとプラダ村のみのエスメラルダ天爵領だが、領主の結婚ともなれば領都で行うべきだしな。

 ちなみにアテナとの儀式は、ウィルネス山にあるクリスタル・パレスで行う予定でいる。


「いつ見ても、すごい神殿よね」

「植物そのものを使った建物なんて、地球には無いしな」

「似たような外観ならあるだろうけど、そのものっていうのはさすがにね」


 そもそも地球には、建物が丸々入るような巨大な植物は存在してないしな。

 だけどヘリオスオーブには天樹と宝樹、扶桑っていう巨木が存在しているし、天樹と宝樹は巨大な桜の木によく似ているから、初めて見た時は圧倒されたもんだ。

 そういや扶桑は、まだ見た事無いな。

 今度余裕があったら、ガグン大森林に行ってみるのもありかもしれない。


「皆様、ようこそお越しくださいました。グランド・プリスターズマスターもお待ちです」

「ありがとうございます、コンフォーム・プリスターズマスター」


 プリスターズギルドで俺達を出迎えてくれたのは、コンフォーム・プリスターズマスターを務めている男性エルフ リューガさんだ。


 元々プリスターズギルドにはアソシエイト・プリスターズマスターが2人いたんだが、ここエスペランサはプリスターにとっても聖地だから、グランド・プリスターズマスターかアソシエイト・プリスターズマスターが半年交代で1人常駐する事になった。

 グランド・プリスターズマスターがエスペランサに来ている間は、アソシエイト・プリスターズマスターが最高責任者を代行する事になるんだが、本来アソシエイト・プリスターズマスターはグランド・プリスターズマスターの補佐が役目で、グランド・プリスターズマスターの不在はあまり考慮されていない。

 だがグランド・プリスターズマスターもエスペランサに赴任する事になった今、代行であっても総本部のあるフロートに責任者が必要になる。

 だからリッターズギルドと同じように、リューガさんがコンフォーム・プリスターズマスターに就任したんだそうだ。


 そのリューガさんに案内されて、俺達は結婚の儀式にも使う儀式の間へと案内された。

 父なる神の像はフロートの総本部に移送されているが、12体の女神像はそのまま安置されており、女神達に見守られながら儀式を行う。

 本来ならリューガさんに見届けてもらうはずなんだが、真子さんとの結婚はエスペランサでという話はグランド・プリスターズマスターも知ってるから、グランド・プリスターズマスター イデア様が見届けてくれる事になっている。

 緊張はするが、俺にとっては6回目だから、さすがに慣れた。

 儀式も滞りなく終わったしな。

 あ、真子さんはマコ・カタギリ・フレイドランシアと名乗る事になったぞ。

 俺はフレイドランシア天爵となり、そっちが家名って事になったから、真子さんは自分が産む子には片桐姓を名乗らせたいそうだ。

 あと産まれた子には、フレイドランシア天爵家を継がせるつもりもないらしい。

 真子さんのと間にいつ子供が出来るのかは分からないが、プリムやフラムより早い可能性はある。

 ガイア様なら知ってるかもしれないから、今度聞いてみるか?


 それはそれとして、儀式が終わった後、俺達はイデア様に呼ばれてエスペランサ大神殿の最奥に足を踏み入れた。

 天樹もそうだが宝樹も中は迷宮ダンジョンになっているそうで、そこには迷宮核ダンジョンコアが安置されている。

 本来、迷宮核ダンジョンコアは国家君主の膝元に置かれる事で迷宮氾濫(スタンピード)迷宮放逐(イクスペルド)を防いでいるんだが、エスペランサ大神殿だけは例外らしい。

 まあエスペランサ大神殿はバシオン教国時代の中枢でもあったし、迷宮ダンジョンと言っても魔物は出てこないから、このままでも問題ないってことなんだが。


「大和様、真子様。改めてご結婚、おめでとうございます」

「ありがとうございます」

「ありがとうございます、イデア様」


 イデア様がエスペランサに来たのは、俺と真子さんの結婚儀式のためだけじゃない。

 むしろこれからの話がメインになる。

 何故ならその話とは、アリアにも下った新たな神託に関する内容だからだ。


「先日、私にも神託が下りました。アリアからもお聞きになられていると思いますが、レティセンシアは皇都コバルディアを除き、全ての町や村が魔物によって滅ぼされ、住民も命を落としたそうです」

「そうみたいですね。唯一残っているコバルディアも、軍は半壊、魔族もかなりの数が命を落としたんだとか」


 これがアリアとイデア様に下された神託の内容だ。

 オーダーズギルドも情報収集のためにスカウト・オーダーを派遣していたんだが、コバルディアに災害種が侵入した時点で危険だと判断し、レティセンシアから撤退している。

 以後はレックスさん、ローズマリーさん、ミューズさん、ミランダさんというエンシェント・オーダーがトラベリングを使い、数日おきに様子を見に行っていたぐらいだ。

 だがレックスさん達は諜報活動をしたことがないから、情報収集と言ってもコバルディアの様子を見るのが精いっぱいだった。

 一度本格的な調査をするべきだと検討していたらしいが、そのタイミングで神託が下り、内容は既にラインハルト陛下やレックスさんにも伝えられている。

 俺と真子さんが結婚すると決まったタイミングでもあったから、条件を満たしたと見て間違いない。

 なんで真子さんとの結婚が条件だったのかは疑問だが、客人まれびと同士で刻印術師同士でもあるからっていうのが理由な気がする。


「はい。ですが魔物の襲撃も落ち着いてきているようですから、おそらくコバルディアは持ちこたえるでしょう。復興できるかはわかりませんが」


 それは無理な気がする。


「魔物は俺達も何度か狩りましたから、異常種や災害種も減ってきてるって事なんでしょうね。まあ完全に、レティセンシアの自業自得ですが」

「ですがイデア様、問題はそこではないんですよね?」

「はい。此度の神託は大和様、真子様。お2人にこの言葉をお伝えするためです」


 それがよく分からない。

 アリアに下った神託は、真子さんとの結婚儀式はエスペランサで行い、その際にイデア様の口から聞かされるという内容だった。

 だがアリアは、俺の神託の巫女という立場でもあるから、イデア様が出てくるとアリアの存在意義が問われてしまう。

 にも関わらずエスペランサでイデア様から聞けと言われてしまうと、まったく意味が分からない。


「私にも神託が下った理由は、この場に入れるのはグランド、コンフォーム、アソシエイト・プリスターズマスターのみだからです。いかに神託の巫女と言えど、足を踏み入れる事は出来ません」


 ああ、そうなのか。

 確かに迷宮核ダンジョンコアが安置されてるんだし、不必要に人が来る事は問題か。


「失礼しました。それでイデア様、神々はなんと?」

「はい。『しんごう』と」

「『しんごう』、ですか?」


 なんじゃそら?

 いや、意味があるんだろうが、まったくもって意味がわからん。

 信号……絶対違うな。


「それだけなんですか?」

「申し訳ありませんが、その通りです。最近は神託が途切れてしまうことがあるのですが、どうやら魔族の魔力が原因らしく、神々にとっても現状を維持することが精一杯なんだそうです。ですが此度の神託は、今は分からずとも刻印術師であるならばいずれ分かるだろうとの事でした」


 ここでも魔族かよ。

 神々の神託にさえも影響を及ぼすとは、本当に傍迷惑な奴らだな。

 その神託も、刻印術師ならいずれ分かるだろうときた。

 以前はふざけた神託を下されたが、今回は意味があるのは間違いないだろう。

 となると、しっかりと考えるべきか。


「それともう1つ、アバリシア神帝を討つのならば、フィリアス大陸を真に1つに纏めなければならないそうです」

「フィリアス大陸を1つに、という事は、レティセンシアを滅ぼせって事か」

「そうなるわよね。だけどなんで、レティセンシアを滅ぼす事が神帝を討つ事につながるのかしら?」

「さあ?」


 こっちも分からんな。

 現在のフィリアス大陸は、レティセンシアを除く全ての国がアミスター・フィリアス連邦天帝国に参加している。

 いくつもの国の連邦国家ではあるが、連邦を構成する国々は広大な領地を持つ自治領に近く、それを王が収めている感じだ。

 ソレムネはまだまだ時間が掛かるが、それでも最近は落ち着きが見え始めたし、早ければ来月か再来月には、いくつかの地域が国として独立する可能性もあると聞いている。

 いずれはレティセンシアも併合する予定ではあったが、人手が不足し過ぎてる事もあって数年は見送るという予定でもあったな。

 なのにそんな神託が下ったって事は、早くレティセンシアを滅ぼせって事なんだろうか?


「おそらくはそうでしょう。私にも予想が出来ませんが、神々にとっても魔族は許される存在ではありません。ヘリオスオーブの存続にも関わる問題でもありますから、可能ならば早めに皇王を討つ事も視野に入れておくべきではありませんか?」


 聖職者とは思えないイデア様のセリフだが、確かにその問題もあるんだよな。

 神帝や魔族の存在は、ヘリオスオーブの存続を脅かす災厄に他ならない。

 なにせ神々が直々に、そう明言してるんだからな。

 さすがに問題が大きすぎるから、直接神託を受けたのはイデア様とガイア様の2人だけだが、今では俺達ばかりか各国の王にも話が伝わっている。

 間違いなく、アミスター・フィリアス連邦天帝国が成立した理由の1つになっているだろう。


 だが、どれ程の数が魔族に変化したのかは分からないし、神帝はグラーディア大陸にいるから、簡単には討てない。

 いずれ必ず神帝は討つが、魔族の方はかなり難しい気がする。


「『しんごう』っていう言葉の意味はおいおい考えるとして、問題はレティセンシアをどうするかね。今は復興や開発が優先されてるけど、もう少ししたら落ち着くだろうから、何をするにしてもそれからになるんじゃないかしら?」

「だろうな。ただ早くても冬になるだろうから、動くとしても来年か」

「でしょうね」


 復興も多くの国で行われているし、アミスターでは開発も行われているからな。

 その開発も、プラダ村の港はレティセンシアを経由せずによくなるから、すさまじく力が入れられている。

 レティセンシアに異常種や災害種が現れた以上、どうしても必要だからな。

 それに俺達も駆り出されてるから、今年は動くのは難しいと言わざるを得ない。


 だけど神々からの神託だし、イデア様の雰囲気からも重要な話だって分かるから、警戒は今まで以上に強化されるだろう。

 俺達もいつでも動けるように、準備を整えておくべきだか。

 まあ、何日か迷宮ダンジョンに入るぐらいはするけどな。

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