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ヘリオスオーブ・クロニクル(旧題:刻印術師の異世界生活・真伝)  作者: 氷山 玲士
第一三章・披露宴に向けて
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各地の開発状況

Side・真子


 レシオンを襲っていたレオ種を倒した後、私達はレシオンに入って生き残っている人がいるかを捜索したけど、残念ながら生き残りはいなかった。

 空からじゃ気が付かなかったけど、建物は外観だけが残っている状態で、内部はどれもズタボロだったの。

 町の至る所に食い殺された人達の死体が散乱していたし、小さい子まで食い散らかされていたのはさすがにショックが大きかったわ。


 その後ヴァーゲンバッハに戻った私達は、カタリーナ橋公に報告を上げてからフロートにも足を運んだ。

 レックスさん達も戻ってきていて、コバルディアの様子も聞く事が出来た。


「レシオンは壊滅か。という事はおそらく西部の町も、ほとんどが壊滅していそうだな」

「というか、無事な町がどれほどあるかという問題になっていそうです」

「コバルディアでさえ、半壊しているそうですからね」


 皇都コバルディアには、アミスターを攻めるための軍に魔族が集結していたため、街中に入り込んだ魔物を倒す事には成功しているんだけど、そのせいで軍も魔族も半数以上が命を落としたそうよ。

 さらに一般人を守る事もせず、巻き込むばかりか盾にさえしていたとか。


「コバルディアも、壊滅は時間の問題か」

「そのようだな。しかも国民の大半は、既に異常種や災害種によって命を落としていると聞く。何匹かは倒しているが、それでも総数がどれ程いるかは分からないし、今後増える可能性もある。しばらくは様子見だな」


 そうなるか。

 私としては救援に行くべきじゃないかと思うんだけど、レティセンシアは必ず問題にしてくる。

 それも皇王家や貴族だけじゃなく、一般人まで全て。

 だからラインハルト陛下は、レティセンシアへの救援は行わない事に決めている。

 レティセンシアはアミスターを攻めるために兵を集めているし、既にヴァーゲンバッハに軍を向けている明確な敵国だから、っていう理由もあるわね。


「ですが陛下。異常種や災害種が蔓延っている以上、支援は難しくなりました。既にギルドが撤退していますし、おそらく食料の備蓄もないでしょうから、遠くない内に滅びるか、もしくは破滅を覚悟で打って出てくる危険性があります」

「分かっている。だが支援するにしても、こちらの被害も無視出来ないからな。そもそも異常種や災害種が蔓延っているのは、レティセンシアの愚策が原因だ。既に尻拭いをしている現状もある、当面は放置で構わない」

「という事は、レティセンシアが軍を向けてきたら、迎え撃つだけだと?」

「ああ。同盟国ならばともかく、敵国にそこまで支援する義理はないからな」


 ラインハルト陛下もレックスさんも、大体的にレティセンシアへ支援をするつもりはないのね。

 いえ、確かにレティセンシアはヴァーゲンバッハに軍を向けたから、連邦天帝国にとって明確な敵国となった。

 アミスターとは戦時に近い緊迫状態も続いていたし、レティセンシアのバックにはアバリシアがいるから、迂闊に動けばアバリシアに付け入る隙を与える可能性もあるし、支援をする必要性も無い。

 地球でもそうだったと歴史が証明しているから、私も理解出来るわ。


 第三次大戦中の日本は、南北で戦争を始めた隣国に支援をしていたんだけど、最終的にはその隣国からも宣戦布告され、その際に日本が支援した物資を使って国土に攻め込まれてしまった。

 しかも間の悪い事に、北海道を分断する巨大地震が発生してしまったし、そのタイミングで核ミサイルまで発射されてしまったから、刻印術師が表舞台に現れて核ミサイルを無力化してくれなければ、敗戦は確実だったとも言われている。

 のちに判明した事だけど、その核技術は日本からもたらされた技術だったそうよ。

 恩を仇で返されたって事で、国内の世論は完全にその国を敵視し、いくつかの政党が完全に力を失ったわ。

 さらにその国は、核を使ったという事で世界中を敵に回して、もう1つの隣国に吸収されたわね。

 歴史の授業でも習ったし、本やネットでもよく見かけたわ。


「そっちはそれで良いとして、こっちはどうするの?」

「そうね。延期に次ぐ延期ばかりだから、いい加減やらないとあたし達も困るわよ」


 マナ様とプリムが口にするこちらの事とは、結婚披露宴の事。

 レティセンシアがどうとかって話から飛びすぎな気もするけど、本当なら明後日が披露宴の日だった。

 だけどそのレティセンシアが軍を集めていたり、魔化結晶で進化させた異常種や災害種が従魔魔法という軛から解き放たれて暴れだしたりしていたりするから、またしても延期になってしまっていたの。


「それは分かっているさ。私としても、シエルとの披露宴をやらない訳にはいかないからな」

「私もグランド・オーダーズマスターとなった以上、やらなければなりません」


 ラインハルト陛下もレックスさんも結婚したばかりだし、立場もあるから披露宴は必ずやらなければならない。

 だからってワケじゃないし、私達と合同で行う予定でもあったんだけど、ソレムネとの戦争やレティセンシアの問題があったから、延期に次ぐ延期になってしまっているし、予定も立てにくくなってしまっている。

 早く催した方がいいんだけど、なかなか難しいのよね。


「問題は、緊急の連絡をどうするかですかね?」

「それだな。フロートに関しては私やサユリ曾祖母殿の屋敷を経由すれば良いし、フィールもウイング・クレストのユニオン・ハウスがあるから問題ないが、他の地域、特にポラルとヴァーゲンバッハをどうするかだな」

「バトラーにゲート・クリスタルを持たせて、待機してもらいましょうか?」

「それが無難だが、それならバトラーよりオーダーやソルジャーの方が良い。もちろん、後で回収する必要もあるだろうが」


 大和君とラインハルト陛下の言う通り、披露宴会場はアルカだし、各国の要人も招待予定だから、それしかない気がする。

 誰にゲート・クリスタルを持たせるかはしっかり検討しなきゃいけないけど、数は1つか2つが限界かしら。

 防犯的にも披露宴後でしっかり回収しなきゃいけないから、あまり数は出せないしね。


「それが無難ですかね。あとは日付ですけど、来週ぐらいで?」

「王達の予定もあるから、2週間後ぐらいだな」


 各国の王様も招待するけど、王の予定なんて簡単に空けられるはずがないから、2週間でもギリギリでしょうね。

 何度も延期にしてしまって申し訳ないけど、こればっかりは容赦してもらうしかないわ。


Side・大和


 天樹城で災害種討伐の報告と結婚披露宴の打ち合わせを終えた俺達は、アルカに戻った。

 これで解決という訳じゃないが、ヴァーゲンバッハに近付いていた魔物は狩れたし、今後はハイソルジャーを多くシリオに駐留させる事で対応する事にも決まっている。

 ハイソルジャーでも手に負えないような魔物が現れたら連絡が来るが、その場合はグランド・オーダーズマスターかグランド・ソルジャーズマスターが対処するだろうから、俺達が出向くような事態は早々無いだろう。


 という訳で俺達は、明日からは普段の生活に戻る事になった。

 とは言ってもヒルデやユーリ、リカさんの手伝いに結婚披露宴の準備がメインになるから、ハンターとしてはまだしばらく休業状態になりそうだが。


「プラダ村の方は、結界のお蔭で安全に作業できるようになっていますから、順調に進んでいます。既にフィールまでは、船を出していますから」


 プラダ村に建造中の港はほとんど完成に近いようで、今日試験的に船を出したとユーリが教えてくれた。

 護衛としてラウス達も乗り込んだが、途中でスカイダイブ・シャークが2匹襲ってきた以外は大きな問題も無かったらしい。

 プラダ村からフィールまでは4時間ぐらいで着くそうだから、陸路より早くなるな。

 船の護衛は必要だが、そちらに関してはフィール・プラダ村間のみオーダーが搭乗する事になる。

 アレグリアやアクアーリオ、ロッドピース辺りまで行く船の護衛は、今まで通りハンターを雇うそうだ。


「スカイダイブ・シャークが出たのは問題だけど、オーダーが乗り込むんなら大丈夫か。でもプラダ村にも、オーダーズギルドの出張所みたいなのは作るんでしょう?」

「はい。とはいえオーダーズギルドとなると、私だけの判断では出来ません。お兄様やグランド・オーダーズマスターの認可も必要になりますから、多少の増員は行いますが、しばらくは現状と変わらないでしょう」


 オーダーズギルドは天帝直属の組織だから、領主といえど勝手に支部や出張所を建てる事は出来ない。

 建物だけじゃなく派遣されるオーダーの問題もあるから、天帝とグランド・オーダーズマスターの両方から認可が必要になる。

 建物だけなら先に建てておいても構わないが、認可が下りない可能性もゼロじゃないから、その場合は無駄骨になるらしいが。


「幸いお兄様やレックスにはすぐに申請出来ますから、認可が下り次第プラダ村に出張所を建設します」

「そっちはそれで良いとしても、アレグリアやアクアーリオまでの船便は、いつから出せるようになるの?」

「港の使用料が決まってからですね。持ち帰るか停泊させるかで大きく金額が変わってきますし、現状では多くの船を停泊させる事は出来ませんから、そちらも考えなければなりません」


 港の使用料については、以前からユーリが頭を悩ませていた。

 持ち帰りなんて意味が分からないと思うが、ヘリオスオーブにはストレージングやインベントリングっていう空間収納魔法があるし、ストレージングを付与させたストレージ・バッグという魔道具も存在している。

 その空間収納を使えば港が無くても良いんじゃないかと思えるが、そうなると完全な自己責任になってしまうし、魔物や盗賊に襲われてしまう可能性も高くなってしまう。

 それに水深が浅ければ船が沈む危険性もあるし、陸路での移動をどうするのかという問題もある。

 俺達が使ってる多機能獣車なら車体や船体があるから問題ないが、普通は船と獣車は別だから、接岸出来る場所を使ったとしても獣車は必要になるし、船を曳く船獣や獣車を引く車獣の両方が必要になるから、コストもかなり掛かってしまう。

 船獣はハイドロ・エンジンが広まれば不要になるかもしれないが、ハイドロ・エンジンはけっこう高額らしいから全ての希望者が購入出来る訳じゃないし、万が一壊れた場合は船獣が引く事になるのは変わらない。

 だから需要は減るだろうけど、完全になくなることもないと思う。


 港があれば荷上げや荷下ろしは安全に行えるし、護衛も雇いやすい。

 個人で船を停泊させる場合も一時使用料を払えば済むから、コストも抑えられる。

 しかも港を使う最大のメリットは、領主やトレーダーズギルドが所有する定期船が使える事だ。

 船は獣車以上に高額だから、ハイクラスでもなければ個人で所有は難しい。

 ああ、そうなるとユーリも大きな船を発注しなきゃいけないし、船獣も用意しなきゃいけないか。

 いや、ハイドロ・エンジンがあるし、壊れた場合に備えて予備も用意しておけば大丈夫か?


「リカ様、メモリアはどうなっているんですか?」

「順調ね。土地の選定も終わったから、昨日から着工に入ってるわ。来年の春には開校したいと通達が来てるから」

「春に開校って、また急な話ね」


 俺もそう思う。

 リカさんの話では、学校はかなり大きく作るらしいんだが、特に宣伝とかもしてないし、授業料なんかも決まってないそうだ。

 入学対象者は年齢制限を設けないそうだが、授業料はかなり難しい。

 年間50万エル程度っていう意見が強いらしいが、全ての人が即金で払える訳じゃない。

 だからギルドの報酬の2割を授業料の返済に当てて、さらに各国やギルドからも支援金を受けて運営されるだろうって話だ。

 これは学校だけじゃなく、スカラーズギルドにも言える事だな。


「なかなか運営が大変そうね」

「ですが既に噂は広まっていますから、入学希望者はかなりの数になっていますよ」

「そうなの?」


 噂が噂を呼んで、メモリア総合学校への入学希望者は、既に200人を超えているんだそうだ。

 メモリア在住の人はもちろん、フロートや南のガリア、フィールからも希望者がいるらしいし、他国からもそんな打診があったんだとか。


「最初の1年は基礎知識だけで、2年目から専門分野に別れるんでしたっけ?」

「ええ。ハンターはリッターと合同になるけど、他は各ギルドから講師を招いて、3年間みっちりと勉強してもらう事になっているわ」


 これは当初の予定通りだな。

 バトラーズギルドは3年間、リッターズギルドは1年間みっちりと座学や実技を学んでいたが、これらのカリキュラムも総合学校に組み込まれるから、リッターズギルドも総合学校在学中は(ティン)ランクのままとなる。

 それでも他のギルドの知識はあって困るもんじゃないから、最初からバトラーやリッター登録を考えていても、卒業までは4年ってのは変わらないそうだが。


 あとはMARS(マーズ)だが、今日アテナが倒したオーシャンハウル・グランドの魔石はラインハルト陛下に献上するが、素材はこっちで引き取れるから、それも使って改良しないとだな。

 設置場所も既に決まってるから、なるべく早く完成させたいところだ。

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