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ヘリオスオーブ・クロニクル(旧題:刻印術師の異世界生活・真伝)  作者: 氷山 玲士
第一三章・披露宴に向けて
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竜と獅子

Side・プリム


 ヴァーゲンバッハにやってきて3日経った。

 今の所は国境線も含めて、異常種や災害種の姿は見掛けていない。

 レティセンシアとの国境の町シリオにはソルジャーが動員されているけど、こちらも見回りの最中に(カッパー)ランクとか(ブロンズ)ランクの魔物を倒してるぐらいね。

 その間、大和や真子はトラベリングを使ってフロートやポラルに情報収集に行ったし、フィールやメモリア、デセオの様子も見に行ってるわ。


 ポラルには(ミスリル)(カタストロフ)ランクモンスター フラッド・クレインが姿を見せたそうだけど、レックスさんとサヤさんが倒したと聞いている。

 フラッド・クレインがポラルの近くまで来てた事を重く受け止めたレックスさんは、ローズマリーさん、ミューズさん、サヤさんと共に、サヤさんが従魔契約したワイバーンでコバルディアまで行ってるそうだけど、大和とマナが訪れた時にはまだ戻ってきてなかったそうよ。

 フロートでその報告を受けていたミランダさんは、恐らくコバルディアは陥落しているんじゃないかって予想しているそうだけど、あたしもそう思う。

 ブルー・フェンリルはいなかったけど、魔族なら数人がかりで挑めば倒せると思うから、既に倒されている可能性もある。


 ただ気掛かりなのは、他にもいるであろう異常種や災害種、そしてレオ種の事ね。

 レティセンシアは雨が多く、湖や湿地帯も多いからなのか、陸棲種であっても水属性に偏っている。

 レオ種もその例に漏れず、水属性を示す青い体色のブルー・レオが生息しているわ。

 あたし達がクラテル迷宮で狩ったホワイト・レオの同種で、ランクも同じ(ゴールド)(ノーマル)ランクモンスター。

 レオ種には上位種はいないから、すぐ上は(プラチナ)(レア)ランクのアクア・レオンになって、その上の(ミスリル)(イレギュラー)ランクはアビス・フォール、(アダマン)(カタストロフ)ランクは名称不明だったはず。

 その未確認のレオ系災害種がいるかもしれない以上、コバルディアに魔族がいたとしても陥落している可能性が高いし、免れたとしても大きな被害を受けているはずだわ。


「そう思ってたのに、まさかこっちに来るとはね」

「ホントにね。しかもレオ種は群れないはずなのに、すごい数の群れになってるわ」


 あたし達は今、レティセンシア側の国境の町、レシオンの近くにいる。

 けっこう雨が降ってて鬱陶しいけど、偵察は大事だから毎日欠かさず行ってるし、今日もアテナが抱える多機能獣車に乗って空から様子を見に来ていた。

 でもあたし達がここに派遣されたのはヴァーゲンバッハやシリオの防衛が理由だから、レシオンより先には行けないんだけどね。

 だからレオの(アダマン)(カタストロフ)ランクモンスター オーシャンハウル・グランドがこっちに来てた事に、気が付くのが遅れてしまったと言える。

 そのオーシャンハウル・グランドは、レオ種を従えてレシオンを蹂躙していたみたいだわ。

 ブルー・レオやアクア・レオンは当然、アビス・フォールまでいるわね。

 レシオンも結界で覆われている町なのに、関係ないとばかりに全部入り込んだのか。


「結界が役に立ってない?異常種までなら侵入を防げるんじゃなかったの?」

「災害種がいるから、でしょうね。それに異常種でも、絶対に防げるワケじゃないわ。事実、異常種に滅ぼされた町や村は少なくないから」


 真子の疑問に、マナが答える。

 結界プロテクト・フィールディングは、確かに魔物の侵入を阻む効果があるけど、災害種は防げない。

 異常種は防げるけど、それも絶対じゃなく、異常種に滅ぼされた町や村は確かに多いわ。

 理由はいくつか考えられているけど、最も有力視されているのは、結界の維持が適当になっていて効力が落ちていたから。

 結界の維持には、最低でも年に一度魔力を補充する必要があって、それがハイクラスであれば尚望ましい。

 基本的に魔力の補充は王や領主、代官の仕事になるけど、ノーマルクラスでも回数を増やせば補える。

 その説を証明するかのように、ソレムネの街は結界の維持を怠っていたから、帝都デセオでさえ異常種どころかランクの高い希少種の侵入を阻む効果は無かったって聞いているわ。

 今は代官として着任しているヒルデ姉様が魔力の補充を行ったから回復してるけど、あのままだったら遠くない将来、結界は消滅していたでしょうね。


 レティセンシアの街の結界がどうなっているかは分からないけど、ヴァーゲンバッハに亡命した貴族の話だと魔力の補充を怠る領主は多いそうだから、多分レシオンの結界も弱ってたんでしょう。

 いえ、レティセンシアはアバリシア正教に改宗しているから、もしかしたら結界そのものが消滅してる可能性も否定できないわ。


「なるほど、確かにその可能性はあるか」

「いずれ詳しく調査を行う必要がありますけど、今は魔物を倒さないとですよ」

「そうですね。既にレシオンは壊滅ですから、放置していたらシリオばかりかヴァーゲンバッハも危険です。全ては難しいですが、異常種や災害種だけでも倒さないといけません」


 ミーナやリディアの言う通り、魔物を放置するワケにはいかない。

 既にレシオンは壊滅し、住民も皆殺しになっているみたいだけど、だからこそ放置は出来ないわ。

 西へ進まれるとすぐにシリオがあり、その先にはヴァーゲンバッハがある。

 独立したばかりとはいえ、アミスター・フィリアス連邦天帝国を形成する一国家でもあるから、可能な限り魔物は倒しておかないと、とんでもない被害が出てしまう。

 それだけは防がないとね。


「ともかく、まずは魔物を倒そう。あのスピードなら、多分数時間でシリオに到達するだろうし」

「1,2時間ぐらいで着くでしょうね。レシオンに生き残りがいるかは、あれを倒してから調べましょう」

「だな」


 レシオンに生き残りがいた場合は、シリオまで連れて行かないといけない。

 だけどあたしは、あんまり気が進まないのよね。

 レティセンシアの国民は、一般人であっても自分が中心の考え方をしているから、もし生き残りがいた場合、間違いなく罵倒から入る。

 その時点で助ける気が失せるのに、さらに助けて当然っていう態度を取ってくるし、救援が遅れた事を理由に難癖まで付けてくるのは確定しているから、本気で助ける必要があるのかと思わずにはいられない。

 これはあたしだけじゃなくマナやミーナ達も同意見で、本気で救助しようと考えてるのは客人まれびとの大和と真子だけね。

 客人まれびとの世界だと、昔はそんな国もあったそうだけど、今はそんな事を言ってくる国は無いらしいから、いまいち実感が沸かないみたいだわ。


「アテナ、悪いがそのままで戦ってもらえるか?」

『うん、分かった!』


 だけど大和は、すぐに気持ちを切り替えた。

 客人まれびとの世界は刻印具が一般にも出回っていて、さらに大和や真子みたいな生成者もいるから、いざという場合は人の命を断っても罪に問われる事はないそうよ。

 特に生成者は刻印法具を生成出来るから、武器や刻印具を取り上げても脅威度は変わらない。

 だから大和も真子も、何度か命を断つ事があったって聞いている。

 特に真子は、大和のご両親と一緒に、戦争じゃないけど大きな戦いに出向いた事もあるらしいわ。


「竜化したままなんて、初めて見るわね」

「何度かやってるけど、確かに真子さんの前だと初めてか。結構凄いですよ」


 そういえばアテナやエオスが竜化して戦うのって、真子の前じゃした事なかったわね。

 いえ、ドラゴニアンは竜化できるとはいえ基本は人だから、竜化して戦う事なんて滅多にない。

 竜化すればノーマルクラスでも(プラチナ)ランクモンスターの単独討伐が出来るそうだけど、命を失う可能性も低くないからね。

 ハイクラスやエンシェントクラスならその可能性は格段に減るんだけど、竜化した時に受けた傷が大きいと人化した際にそのまま跳ね返ってくる事があるそうだし、今は合金製の武器のおかげで魔力の疲労劣化を気にせず戦えるから、竜化するメリットがあまりない。

 だからアテナとエオスが最後に竜化して戦ったのは、あたしが知ってる限りじゃイスタント迷宮だったはずだわ。


『エンシェントドラゴニアンに進化してから、エオスと一緒にマイライトで竜化したよ』

「メリットが少ないとはいえ、進化して得た魔力を把握しておかなければ、最悪の場合皆様を巻き込んでしまいますから」


 アテナとエオスにそう説明されて納得した。

 確かにエンシェントクラスに進化すると、ハイクラスの時の数倍は魔力が増えるし、魔法の強度も桁違いに跳ね上がる。

 だけど制御が難しくなるから、あたし達も自分達の魔力の最大値を知るために試しているわ。

 そのせいで下着は何着もボロボロになっちゃったし、あたしと大和のクレスト・アーマーコートの寿命を縮めたのも、それが原因なんだけどさ。

 だからクレスト・ディフェンダーコートが完成するまでは、武器はともかく防具にはかなり気を使っていたのよ。

 さすがにソルプレッサ迷宮のディザスト・ドラグーンやゴールド・ドラグーン、イスタント迷宮のミスリル・コロッサスには本気を出したけど。


『じゃあ、いっくよー!』


 西へ向かっているレオ達の上空を飛びながら、アテナが大きく口を開き、固有魔法スキルマジックマグマライト・ブレスを吐いた。

 ドラゴニアンやドラゴニュートが使う天嗣魔法グラントマジック竜精魔法エーテル・ブレスは、その名の通り口から適性のある属性のブレスを吐く。

 マグマライト・ブレスはアテナが開発した固有魔法スキルマジックで、そのエーテル・ブレスも組み込んでいるんだけど、アテナの切り札でもあるからいきなり使うとは思わなかったわ。

 オーシャンハウル・グランドやアビス・フォールもいるんだから、分からなくもないけど。


 エンシェントドラゴニアンに進化したアテナのマグマライト・ブレスは、以前より大きく威力を増している。

 元々マグマライト・ブレスは、光と風で熱された土石流を光のように撃ち出す魔法だけど、今ではアテナがエンシェントドラゴニアンに進化した事で得た雷属性魔法サンダーマジックも組み込まれている。

 しかも念動魔法も組み込まれているから、アテナの意思でいつまでも相手を追い続けるおまけ付き。

 その証拠に、ブルー・レオはマグマライト・ブレスの直撃を受けて跡形もなく吹き飛んでいるし、アクア・レオンも瀕死の状態、アビス・フォールでさえ大きなダメージを受けている。

 オーシャンハウル・グランドは動きが鈍ってるように見えないけど、それでも無傷じゃないわね。


「よし、行くぞ!」

「はいっ!」


 大和の号令を受けて、あたし達は一斉に獣車から飛び降りた。

 その際にあたしは熾炎の翼(セラフィム・ウイング)を、他のみんなはウイング・バーストを纏っている。

 アテナは竜化したまま天樹製獣車をインベントリに収納し、さらに固有魔法スキルマジックブレイズライト・ブレードを爪に纏わせてオーシャンハウル・グランドに向かっていく。

 アテナもやる気だし、オーシャンハウル・グランドは任せましょうか。


「そら、よっと!」

「たあっ!」


 大和はミスト・ソリューションを発動させた薄緑で、マナはスターリング・ディバイダーでアビス・フォールを倒し、他のみんなはアテナのマグマライト・ブレスで弱っていたアクア・レオンを倒していく。

 マグマライト・ブレスの威力、かなり上がってるわね。


「グラアアアアッ!!」


 残るはオーシャンハウル・グランドだけだけど、これもアテナが優勢ね。

 とはいえオーシャンハウル・グランドも災害種だけあって、アテナのブレイズライト・ブレードを纏わせた爪を避けたり受け止めたりしている。

 それでも徐々に傷が増えているから、倒すのも時間の問題でしょう。

 アテナも少し焦れたのか、牙にもブレイズライト・ブレードを纏わせたわね。


 ドラグーンと違って、竜化したドラゴニアンが牙を使って攻撃する事は、滅多にないそうよ。

 牙を使うという事は噛み付く事になるし、ドラゴニアンとしても魔物に噛み付くのはイヤなんですって。

 それでも牙は鋭いし、爪以上の攻撃力があるから、いざという時は躊躇いなく噛み付くらしいけど。


 その牙で噛み付かれたオーシャンハウル・グランドは、ブレイズライト・ブレードに組み込まれている雷属性魔法サンダーマジック光属性魔法ライトマジックによって体内を焼かれ、やがて動かなくなった。


 牙にブレイズライト・ブレードを纏わせるなんて、思い切った事したわね。

 ちょっとでも制御をミスったりしたら、口の中が大変な事になるでしょうに。

 でもオーシャンハウル・グランドが討伐されたのは初めてになるし、ランク的にもあたし達にはありがたい。

 ただアテナが討伐したオーシャンハウル・グランドはメスだったようで、残念ながら鬣は無いのよね。

 まあオスが必ず異常種や災害種に進化するとは限らないから、仕方ないんだけどさ。

 ああ、アビス・フォールの方はオス2匹、メス1匹だったわ。


 ちなみにレオ種の鬣は、寄り合わせて強度の高い糸として使う事が多いんですって。

 裁縫師を目指してるフラムが、嬉しそうに教えてくれたわ。

 オーシャンハウル・グランドがメスだったのは残念だけど、こればっかりはね。

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