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ヘリオスオーブ・クロニクル(旧題:刻印術師の異世界生活・真伝)  作者: 氷山 玲士
第一二章・変革するフィリアス大陸
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神国への対策

 会議では知恵を振り絞ることになって大変だったし、おかげですげえ疲れた。

 だけどその甲斐があって、昨日の会議だけでバリエンテ方面5ヶ国、リベルター方面8ヶ国の国名に新王の称号まで決まっちまったもんだから、ラインハルト陛下はご満悦だ。

 俺としては、俺達が候補をいくつか提出して、さらに貴族とかからも候補を受け取って、後は何日かかけて陛下とか官僚とかが決めるんだとばかり思ってたんだが、まさか俺達の意見だけで決められるとは思いもしなかった。

 下手に貴族を関わらせると、後々変なこじれ方をしかねないから、最初からラインハルト陛下は王族の関係者だけで決めるつもりだったみたいだ。

 俺はマナと結婚しユーリとも婚約してるから、非常に面倒な事に王族関係者どころか王族扱いになるそうで、ウイング・クレストはそのとばっちりを受けた形になる。


 それはどうでもいいとして、結果的にはこんな形で纏まった。

 まずはリベルター側からだ。


 リヒトシュテルン大公国 首都リヒトシュテルン 大公

 デネブライト橋公国   首都デネブライト   橋公

 ヴァーゲンバッハ橋公国 首都ヴァーゲンバッハ 橋公

 グランレーヴェ橋公国  首都グランレーヴェ  橋公

 パルセノス橋公国    首都パルセノス    橋公

 ペイシェス橋公国    首都ペイシェス    橋公

 アクアーリオ橋公国   首都アクアーリオ   橋公

 ジェミオス橋公国    首都ジェミオス    橋公


 リヒトシュテルンのみ大公が治める小国となるが、他の7ヶ国は橋公きょうこうが治める小国だ。

 橋上公きょうじょうこう、略して橋公きょうこうだが、我ながら良案だったと自画自賛している。

 いや、会心の良案だったのは間違いないが、それでも採用されるとは思わなかったんだけどな。

 リベルター側の特色としては、首都となる橋上都市が有名だから、他の国名を付けても分からんだろうって事で、都市名と同じ国名になっている。

 将来的にいくつかの橋上都市が独立する可能性があるみたいだが、橋上都市国家はこれで統一する事にも決まった。

 リベルターのように議会制に変更する事も視野に入っているが、体制が整うまでは君主制でって事も伝えてある。


 そしてバリエンテ側だが、領地的にはこちらの方が広く、しかも既に貴族が治めているため、国名と首都名は別にする必要がある。

 なのでこんな感じだな。


 ヴァルト獣公国     首都オヴェスト  獣公

 シュタイルハング獣公国 首都ロッドピース 獣公

 ブルーメ獣公国     首都フロル    獣公

 フリューゲル獣公国   首都プルマス   獣公

 ホルン獣公国      首都セントロ   獣公


 首都名から予想は出来ると思うが、ヴァルト獣公国はネージュ王爵が、シュタイルハング獣公国は跡を継いだリヴィエール・ロッドピース王爵が王家として返り咲く。

 ブルーメ獣公国は旧トライアル王爵領で、ギムノス陛下の実家になるバジリウス家が、フリューゲル獣公国とホルン獣公国はバリエンテに残っている2つの公爵家が治める予定だ。

 王位は、こちらも俺の案が通ってしまった。

 読み方は獣公じゅうこうで、大公家や橋公家と同格の王位になる。


 連邦天帝国の君主は天帝が最上位に位置し、その次にトラレンシア妖王、バレンティア竜王、アレグリア公王の三王となり、今回決まった大公、橋公、獣公はその下の三公という扱いになる。

 同じ王ではあるが、まず国の規模が異なるし、トラレンシア、バレンティア、アレグリアは国土はそのままで、連邦天帝国に参加せずとも大きな問題は無かったと考えられるからこそ、天帝のすぐ下の王位となり、同時に天帝の独裁や暴走を防ぐために、三王の意見が統一されれば天帝の決定を覆す事が出来る法が制定される予定だ。

 三公にはそこまでの権限はなく、本当に領主に毛が生えた程度の権限だが、法さえ順守していれば、監査を除いて国内の政治に関与する事はない。

 領主だと国政を反映しなきゃいけないが、王なら余程の無茶でもなければ天帝が関与してくる事はないから、ここが王と領主の違いになるか。

 それでも天帝が定めた法は施行しなきゃいけないから、三王には強い権限が与えられる事になったらしい。


「ここまで決定できるとは思ってなかった。助かったよ」

客人まれびとの知識って、政治方面も凄いわよね」


 ラインハルト陛下は満足気な顔をしているが、マナは少し呆れ気味だ。

 俺と真子さんの意見や案が多く採用されちまったんだが、意味も説得力もあり、有益だと判断されてしまった。


「問題が無い訳じゃないですから、しばらくはお試しみたいな感じでやって、その後で本採用にして頂けると助かります」

「大丈夫だとは思うが、そのつもりだ。いずれレティセンシアも併合する事になるだろうが、それまでには実績も残せるだろうから、レティセンシア併合を目途にしてもいいだろうな」


 フィリアス大陸は1つに纏まるが、アミスターの北の隣国、レティセンシア皇国だけは連邦天帝国に加わらない。

 というか、レティセンシアは明確な敵国だから、参加するならソレムネのように併合してからって事になるし、最低でも皇王家は取り潰さないと問題が残る。

 貴族も同じだから、ソレムネと同じような感じで対処する事になるだろう。


「そういやレティセンシアって、今どうなってるんですか?」


 いずれ併合する事は決まってるようなもんだが、今は連邦天帝国建国にソレムネ統治の問題がある。

 ここでレティセンシアまで統治となると、完全に人手不足になって天帝国建国にも支障を来す恐れが出てくるため、ラインハルト陛下は密偵を放ち、情報収集に努めているそうだ。


「軍は集まりつつある。糧食に関してもレティセンシア中から搔き集めているようで、既に餓死者も出ていると報告が上がっているな。リベルターがアミスターに併合される事は、噂レベルだが民衆の間で広まっている。それもあってかリベルター方面で無茶をしていた貴族達は、震えながらコバルディアに逃げ込んだともあった」


 軍が集まってるって事は、雪が融けたら軍事衝突は確定か。

 リベルターが連邦天帝国に参加する事は、まだ噂レベルでしか広まってないようだが、確定情報に近い形で広まってるから、民衆は占領されるかもしれないという恐怖で家に籠りがちになり、リベルターに無茶を吹っ掛けていた貴族は、我先にと皇都コバルディアに逃げ込んだか。


「軍って、どれぐらいの数が集まりそうなんですか?」

「凡そだが3,000程らしい。ハイクラスは40名程度、魔族も10名程いるようだ」


 糧食の事もあるから、これが限界になるのか。

 だけどその程度の質と数じゃ、オーダーズギルドの相手にならんだろうに。

 警戒しなきゃならんのは魔族だが、それも10人程度みたいだし、エンシェントクラスが出張れば問題なく片付くぞ。


「それ、勝つ気あるんですか?」

「私も同感だが、皇王はそのつもりらしいな。ハイクラスはもちろんだが魔族がいるから、オーダーズギルドが相手でも勝てると踏んでいるんだろう」


 魔族はヘリオスオーブには存在していない種族で、人間に魔化結晶を使う事で変化する。

 神々に祝福された存在じゃないから、天与魔法オラクルマジックは一切使えなくなるという副作用があるが、魔力はノーマルクラスでもハイクラス相当に、ハイクラスならエンシェントクラス相当にまで跳ね上がる。

 だが魔力が跳ね上がるとはいえ、身体能力なんかは変わらないから、オーダーズギルドとプリスターズギルドは、天与魔法オラクルマジックが使えなくなるデメリットが大きすぎる事、魔力は劇的に増えるが体がついてこられなくなるため、魔力強化の質はソレムネより劣る可能性を指摘している。

 だからハイクラスの魔族ハイデーモンであっても、ハイクラス数人で掛かれば仕留められる事が、ポラル付近の戦闘で証明されてもいる。


「アバリシアからの増援はどうなの?」

「そちらは来ていないようだな。コバルディアを監視しているオーダーも、見慣れない船や不審な船は来ていないと報告してきている」


 アバリシアからの増援や物資提供も無しか。

 分かってた事だが、アバリシアにとってレティセンシアは属国でしかなく、不要になったら容赦なく斬り捨てる存在でしかなかったってことだろう。

 連邦天帝国建国についてはアミスターも正式に公表しているが、それがアバリシア本国に知れ渡るまではまだ時間が掛かるだろうから、動く可能性があるとしたらそれからになるか。


「元々ソレムネにフィリアス大陸を統一させて、その後で動こうと考えてたみたいだから、標的をアミスターに変えるだけだったりしませんか?」

「あり得るわね。ソレムネ如きと比べられても気分悪いけど、神帝は統一した国を叩けば良いって言う単純な思考をしてるみたいだから、その可能性は十分あるわ」


 リディアの意見にプリムが同意したが、俺も同感だ。

 アバリシア神帝はエンシェントヒューマンらしいが、魔族となった上に200年以上アバリシアに君臨し続けている。

 目的はヘリオスオーブの征服って事だが、昔と違って今は直接的な攻撃ではなく、内部から崩すような搦め手が多くなっている感じだ。

 アバリシアは神金オリハルコンの産地だから、総神金(オリハルコン)製の戦列艦も作れるだろうし、俺や真子さんと同じ客人まれびとでもあるから、推進方法も蒸気駆動なんかじゃなく、俺が実用化させたハイドロ・エンジンに近いもんを使ってる可能性が高い。

 アバリシアはヒューマンのみの国家だが、同時に魔化結晶を開発した国でもあるから、フィリアス大陸ではアバリシアは魔族の国だという認識も広がりつつあって、神帝は魔族の王、魔王だという話もチラホラと聞くようになった。


「その可能性はある。だがグラーディア大陸は、大和君が開発したハイドロ・エンジンを使っても2週間以上かかると思われるし、海の魔物に襲われる危険性も高い。さらにグラーディア大陸にオーダーを派遣となると、20人規模の隊となる。現状ではそこまで人手を割けないな」


 アミスターは、アバリシアに偵察員を送り込んでいない。

 理由はラインハルト陛下が言った通り、人手不足だからだ。

 昔は何度か送り込んでいたそうだが、海の魔物に船を沈められたかアバリシアに気付かれたのかは分からないが、帰って来たオーダーは10人程度だったため、以降は派遣を渋るようになったんだとか。


「海路上に島でもあれば、トラベリングの起点に使えるんだけどね」

「無い訳ではないが、都合よくとはいかないようだ」


 真子さんが言うように、トラベリングを使えればアバリシアまでもすぐに行ける。

 だが辿り着くまでが大変だし、目印のない海上じゃトラベリングは使えない。

 完全竜化したエオスなら1日で辿り着ける距離ではあるんだが、休憩なしで飛び続けると体力や魔力の消耗が激しいし、魔物が襲ってこない訳じゃないから、万が一を考えるとその手も厳しいな。


「でも島があって、それは海図に記してあるんでしょう?」

「一応な。だが50年も前の海図だし、正確性には欠けるという話だ」


 航路上に島はいくつかあり、海図にも記されてるそうなんだが、アミスターから船で5日とか8日とか、海図によって日数がマチマチだし、島の位置すら異なってるらしい。

 目印になるものが何もない海上だと、そんなあやふやな情報は命に関わる大問題だ。


「今まで放置していたツケではあるんだが、こんな情報ではアバリシアにオーダーの派遣など出来ない。幸いハイドロ・エンジンを搭載した船は完成しているから、近海の調査から行う予定だ」


 ハイドロ・エンジン搭載船を使って、その辺りの島々の調査は予定してるのか。

 アバリシアの船とかち合う可能性もあるが、だからといって調査しない訳にはいかないから、オーダーは腕利きが選ばれるんだろうな。

 島の正確な位置さえ分かれば、エオスに頼んで飛んでもらう事も出来るようになるから、一度アバリシアに行っておくってのも選択肢としてはアリだな。

 そんな余裕があるかは分からないが。

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