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ヘリオスオーブ・クロニクル(旧題:刻印術師の異世界生活・真伝)  作者: 氷山 玲士
第八章・アミスターでの出会いと冒険
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数日間の出来事

 メモリアの新オーダーズマスター、サブ・オーダーズマスターに就任したクリスさんとダート、ダートと結婚したリアラをメモリアに送り届けてからの数日は、結構色々なことがあった。


 翌日はトゥルマリナ伯爵領領都レスペトに行き、無事にラウス、レベッカ、キャロルがバトル・ホースと従魔契約を行い、フィールに連れ帰ってから紹介状を書いてくれたソフィア伯爵にお礼を言い、その後でアルカに連れていった。

 一気にバトル・ホースが3匹も増えたことになるが、日ノ本屋敷の従魔殿にはまだまだ余裕があるし、アルカ自体が広いから、バトル・ホース達も伸び伸びと過ごしている。

 名前はラウスが契約した個体がレアン、レベッカはファー、キャロルはオーキッドと名付けていた。


 そこから5日経過すると、今度は試作金属船が完成したとの連絡を、サユリ様経由でマランさんから受け取った。

 先日からサユリ様はアルカに滞在していて、今はフィールで金属船の製作を手伝っているんだが、その理由は面白そうだからとか、希少な素材が使えるからっていう理由だったりする。

 ベール湖の畔にある造船所に行くと、そこには10メートル程の小型船が浮かんでおり、2人のクラフターが乗って実演もしてくれた。

 まだ小型船だけど実際に出来たってことで乗造部門の士気は高く、次は20メートルクラスの船を作るらしい。

 俺達の獣車用の試作船体は、新しい本体と車体を作ってる関係で、そちらの完成待ちになってるからな。

 試作船体も20メートルあるから、最初に船を完成させた方が乗造部門としてもいいかもしれないし。

 もしその試作金属船が完成し、実用に耐えることが証明されたら、ロッキングっていう魔法も奏上してるし、フィーナもエドと同じく(プラチナ)(ゴールド)ランククラフターに昇格することになるんだろうな。


 その翌々日は、3度目のオーダーズギルド、ホーリー・グレイブとの戦闘訓練だが、今回は総本部からもオーダーを連れてきた。

 総本部のオーダーはハイクラス8人、ノーマルクラス15人だな。

 前回、前々回同様、俺達との模擬戦後にマイライトに連れ出して魔物を狩ってもらったが、今回はフィールのオーダー2人、総本部のオーダー2人がハイクラスに進化できた。

 ルーカスやジェミニアさんは進化できなかったが、ルーカスの姉のミレイナさんはレベル42になって、ハイオーガに進化している。

 さらにリカさんもレベル45でハイエルフに進化して、褐色の肌が白い肌に変わった。

 エルフに限らず、他の種族も進化すると肌の色が変わることがあるって聞いてはいたが、さすがに褐色肌のエルフが白い肌に変わると違和感が凄かったな。

 いや、どっちでもリカさんが綺麗だってことは変わらないんだが。


 その次の日には、待ちに待っていた新型アーマーコートが完成した。


「いや~、大変だったよ。ゴールド・ドラグーンを表地、ディザスト・ドラグーンを裏地にするのは決めてたんだけど、他をどうするかですっごく悩んでたんだ」

「最終的には、ドラグーンは全属性を使うってことになってなかったか?」

「それをどうするか、だね」


 本殿1階の食堂で、満面の笑みを浮かべたマリーナが晩飯前に飛び込んできてそう告げてきた。

 どうやらマリーナは、表地と裏地の間に使用者に一番適正のある属性ドラグーンの革を挟み、他属性の革は瑠璃色銀ルリイロカネ製の装甲の裏地や関節部の補強材にしたらしい。

 二番目に適正がある革はスカートやトラウザーの表地、裏地は光属性ドラグーンの革で、腰回りを闇属性ドラグーンで補強することで、こちらも今使っている物より高い防御力を得ている。

 足甲は水属性と土属性の革を使ったブーツで、そこに装甲を張り付けているようだ。

 そして手甲だが、エドは(プラチナ)(ゴールド)ランクってことでマジック・サークレットやマジック・ガントレットの製法を知れるようになっているから、2番目の適正属性のドラグーンの革を裏地にした瑠璃色銀ルリイロカネ製のマジック・ガントレットになっている。

 エドも初めて作ったからかなり手間取ったらしく、一番最後に完成したって言ってたな。


「というワケでプリム、着替えるよ」

「分かったわ。楽しみね」


 プリムも尻尾を高速で振りながら、着替えるために2階の空き部屋に向かった。

 マリーナとフィーナは、プリムの着替えを手伝うために同行している。

 ちなみに瑠璃色銀ルリイロカネだが、俺とフラムが(シルバー)ランククラフターに昇格して増産を開始したため、全員の装甲に使ってもまだ余る量を用意できている。

 フィーナの妹のフィアナとレイナもレベルが上がって魔力が増えたことで、しっかりとした品を作ることができるようになったから、昇格試験を受けて(アイアン)ランククラフターに昇格しているぞ。


 待つこと30分、プリムが完成したコートを纏い、食堂に下りてきた。

 基本デザインはクレスト・アーマーコートと同じなんだが、マリーナやフィーナと同じように胸元が開いているから、マイナーチェンジも施されているな。


「おお、似合ってるぞ、プリム」

「ありがと。すっごくしっくり来てるし、着心地も良いのよ」


 尻尾を振りながら喜ぶプリムだが、それは何よりだ。


「後は名前だけど、イークイッピングとステータリングの問題があるから、クレスト・アーマーコートは使えないよ。大和、どうするの?」

「それなんだよな。だけど大きく変える必要もないから、クレスト・ディフェンダーコートでどうかと思ってる」


 奇をてらい過ぎても不評を買うだろうし、ここはシンプルに、クレスト・アーマーコートと似た名前がいいと思う。

 癖でクレスト・アーマーコートを纏うことはあるかもしれないが、すぐに着替えることもできるから、そこは何とでもなるだろうしな。


「シンプルだが、それでいいと俺も思うぞ」

「俺もです」


 エドとラウスは賛成してくれたし、他のみんなも特に反対はないようだ。

 というわけで新しいクレスト・アーマーコートは、クレスト・ディフェンダーコートとして登録することになった。


「次は大和のを仕立てるけど、その後はアテナとエオス、ユリア、フィアナ、レイナを優先させるね」


 アテナとエオスはハイドラゴニアンだし、今着用しているのはレプリカ・アーマーコートだから早めに用意してほしいとは思う。

 ユリアもレプリカ・アーマーコートだし、フィアナとレイナはそれすら持ってないから、早い方が良いってのも分かる。

 だけど他のみんなだってハイクラスだし、マナはエンシェントエルフに進化する可能性があるから、できればマナも優先した方がいいんじゃないかと思うぞ。


「ああ、そうだった。それじゃ大和とマナ様、アテナ、エオスのを最優先で仕立てるよ」

「無理させて悪いが頼む」

「楽しんでやってるから大丈夫だよ。あ、それとディフェンダーコートに使う革をどうするか、早めに決めといてね」


 そりゃそうだ。

 適正属性の革を多く使うんだから、それが決まらないとマリーナだって仕立てられん。

 幸いそれはすぐに分かるから、飯食い終わったら決めて、マリーナにメモを渡せばいいだろう。

 そう思ってたんだが、ハイクラスに進化しているみんなはともかく、ノーマルクラスのみんなは適正属性は1つだから、もう1つの属性をどうするかで凄く悩んでしまった。

 確かにこれはどうするべきか悩む所だが、その場合は仕立て直すってことで話が纏まったから、とりあえずとして得意にしてる属性を選ぶことになったな。


 クレスト・ディフェンダーコートが完成した次の日は、フィールとメモリアのオーダーズギルドの合同訓練だ。

 とはいえさすがに全員は無理だから、参加者は10名ずつとさせてもらった。

 場所は、ラインハルト陛下からも許可を貰っているイスタント迷宮だ。

 強制参加はルーカスとダートの2人だけだが、メモリアのオーダーズギルドでは参加者が殺到したとクリスさんが教えてくれた。

 1泊の予定で食事と寝床はこっち持ちだが、場所が場所だけに死ぬ可能性もあるんだけどなぁ。

 ちなみに今回の目的地は第4階層だ。

 山岳地帯ではあるがそれなりに平野もあるし、出てくる魔物は(ゴールド)ランクが多いからハイクラスなら数人で倒せる。

 (ミスリル)ランクのグリフォンが出たって話もあってハンターも寄り付かないから、訓練には丁度良い。


「それで何で、ジャイアント・ロックワームの相手をさせられてんだよ!」

「訓練だって言ったろ?ちゃんとフォローはするから安心しとけ」


 その第4階層では、ジャイアント・ロックワームっていう(プラチナ)(レア)ランクモンスターに襲われた。

 毒こそ吐かないが、地面から出てきた状態だけでも20メートルを優に超える巨体を持ち、鋭い牙で何でも噛み砕く化け物ミミズだが、グランド・ワームやグラン・デスワームと同じ系統の魔物だから、俺達からすれば是非とも手に入れておきたい魔物だ。

 2匹現れたから1匹はプリムが仕留めているが、もう1匹は俺が援護しつつ、オーダーに任せている。

 とはいえ一番レベルの高いダートでも、ジャイアント・ロックワームの巨体に有効的な攻撃を繰り出せてないから、もうちょい戦わせてから倒した方がいいかもしれない。


「大和、さすがにジャイアント・ロックワームはキツいんじゃない?」

「分かってるよ。だけどオーダーは有事の際に、相手が終焉種であっても最前線で戦わなきゃいけないんだから、キツいからって理由だけで俺達が出る訳にはいかないだろ?」


 ルディアがオーダーに同情の視線を向けているが、1匹は既に仕留めてあるんだから、それだけでも十分恵まれていると思う。

 これが実戦で、しかも俺達がいなかったら、この場にいるオーダーだけで何とかしなきゃいけないんだからな。


「ああ、大和さんやプリムさんがいることに安心しないようにってことですか」

「そういうこと。何でもかんでも俺達に頼られたりしたら、オーダーズギルドの存在意義を問われる。さすがにそんな馬鹿はいないと思うけどな」


 俺は(オリハルコン)ランクオーダーだから、どこの国に所属してるかって聞かれたらアミスターってことになる。

 だけど拠点はフィールだし、遠くの街が襲われたって聞いても間に合う訳がない。

 さらに俺の体は1つしかないから、同時に2ヶ所以上で問題が発生しても、対処しきれん。


「それはね。でもこれ以上は彼らもキツいと思うから、私も参加してくるわ」

「私もです」


 そう言ってマナはラピスウィップ・エッジを、ミーナはシルバリオ・ソードとシルバリオ・シールドを構え、ジャイアント・ロックワームに向かっていった。


「私も援護します」


 フラムもラピスウイング・ボウを構え、矢を射掛けている。

 いや、援護なのに、いきなり固有魔法スキルマジックタイダル・ブラスターはどうなんだ?


「ルディア、私達も!」

「そうだね!」


 リディアとルディアも、突っ込む気満々かよ。

 だけどそれは待ってくれ。


「悪いが2人とアテナは、少し待ってくれ」

「なんで?」

「もうじき新手が来るんだよ」


 さっきからソナー・ウェーブに反応があるからな。

 さすがに視覚を飛ばせる余裕はないから確認は出来てないが、それでも真っ直ぐこっちに、多分5匹程が向かってきている。

 動きはそんなに素早い訳じゃないと思うが、それでも普通なら不意打ち確定のタイミングだ。


「そういうことなら了解です。ラウス君達もですよね?」

「ああ。今回は弓術士が少ないから、援護はあんまり期待しないでくれ」

「分かった」


 こんな感じで、無事にイスタント迷宮での戦闘訓練は終了した。

 オーダーは全員が大幅にレベルアップを果たし、ダートはレベル52、ルーカスはレベル44になりハイタイガリーへも進化できたし、それぞれ相方よりレベルが高くなれたから、かなり安心したって顔してたな。

 他にもフィールのアーチャー・オーダーの女性ミナスさんがレベル46になりハイラミアへも進化できたし、メモリアのオーダーも3人程進化できている。

 ついでって訳じゃないが、キャロルもレベル44になりハイエルフに進化したぞ。

 残念ながらマナはレベル65になったものの、エンシェントエルフには進化できなかったが。

 メモリアのオーダーを送ってからフィールに戻ると、ホーリー・グレイブに何故連れて行かなかったのかと詰め寄られちまったから、今度行く時は同行してもらうことでなんとか納得してもらった。

 あ、素材は俺達が引き取ってあるが、ちゃんとハンターズギルドの買取額と同額でだし、その合計額を人数で割った金額を渡してあるぞ。

 特にジャイアント・ロックワームは、俺達も欲しかったからな。

 高ランクモンスターが多かったから1人当たり白金貨2枚になったが、臨時ボーナスとしては十分だと思う。


 あと俺達の武器は瑠璃色銀ルリイロカネだけじゃなくウインガー・ドレイクも使われているから、こっちもドラグーンに交換してもらうことになった。

 ほとんどは交換するだけで済むんだが、マナのラピスウィップ・エッジとフラムのラピスウイング・ボウ、レベッカのラピスライト・ボウエッジ、キャロルのラピスライト・ロッドは難しいらしく、作り直すってエドが言ってたな。

 マナはいつ進化してもおかしくないから、作り直すならマナのラピスウィップ・エッジからになるが、どうするかはエドに任せよう。

 あ、俺の瑠璃銀刀・薄緑の柄は、天樹で作り直してあるぞ。

 フィーナが喜んでやってくれたな。


 そしてイスタント迷宮での戦闘訓練を終えて3日後、俺達はフロートに向かった。

 前日にリカさん経由でラインハルト陛下から連絡が来て、トラレンシア妖王国女王ヒルデガルド・ミナト・トラレンシアが来訪することを知らされたからだ。

 元々来るって話は聞いてたし、プリムやマナとは姉妹同然の人だとも聞いてるから、領代のリカさん、製作作業で忙しいエド達、キャロルが進化したことを理由に経験を積むことを選んだラウス達をフィールに残し、フロートで女王陛下を待つことにした。

 プリムもマナも再会を楽しみにしてたから、俺としても否やはないし、トラレンシアの女王様がどんな人かは興味があるからな。

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