表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
163/626

迷宮の秘密

 一夜明けて、俺達は森林地帯になっている第4階層を、4時間ほどかけて攻略した。


 襲ってきた魔物は以下の通りだ。


 (シルバー)ランク

  アロサウルス 8匹

  プロトケラトプス 4匹

  ウインガー・ドレイク 12匹

  ウィッパード・モンキー 9匹


 (ゴールド)ランク

  ティタノサウルス 4匹

  エビル・ドレイク 2匹

  プレートスケイル・ドレイク 1匹

  ソード・ドレイク 2匹


 エビル・ドレイク、プレートスケイル・ドレイク、ソード・ドレイクは、それぞれフェザー・ドレイク、アーマー・ドレイク、ファング・ドレイクの異常種だが、こんなに出てくるとは思わなかった。


「結局、レッサー・ドラグーンは出てきませんでしたねぇ」

「この階層じゃ普通に歩いてるって話だから、別にいいでしょ」


 第5階層に降りてすぐのセーフ・エリアで昼飯を食いながら、未だ見ぬレッサー・ドラグーンに思いを馳せるレベッカとあまり興味なさそうな感じのプリムだが、どちらかと言えば俺もプリム寄りだ。

 俺やプリムが欲しいのは、(ミスリル)ランクドラグーンの皮だ。

 レッサー・ドラグーンの皮でもウインガー・ドレイクより性能がいいのは間違いないが、その上の皮を求めてるんだから、興味が持てないのも仕方がない。

 しかもレッサー・ドラグーンには腹部が脆いっていう弱点まであるから、戦い甲斐も無いしな。


「そんなこと言えるのは、あなたとプリムだけよ。私達は(プラチナ)ランクモンスターと戦ったことは無いんだから、どこまでやれるか分からないんだからね?」


 マナのセリフに、全員が首を縦に振る。

 だが待て。

 イデアル連山でグリフォンと戦ったんだから、全くの未経験って訳でもないだろ?


「あれは戦ったって言わないですよ。確かに私は矢を射かけましたしマナ様も攻撃してましたけど、ほとんど倒れかけだったんですから」


 フラムの言葉に頷くマナだが、そうだったっけかな?


「フラムさんの言う通りですよ。そもそも(ミスリル)ランクモンスターなんて、ハイクラスでも攻撃が通用するか分からないって言われてたんですよ?確かに私達の攻撃は通用しましたけど、それは大和さんとプリムさんが先に攻撃して、ほとんど瀕死の状態にしてくれてたからなんですから」


 ミーナに状況を説明されて、そういえばそうだったかもしれないと思い返す。

 とはいえ、瑠璃色銀ルリイロカネ製の武器を使ってる今なら、ハイクラスのマナ、リディア、ルディア、ラウスの攻撃はもちろん、他のみんなの攻撃でも(ミスリル)ランクモンスター相手に十分通用すると思うぞ。

 エオスはまだ武器が出来てないが、プリムの翡翠色銀ヒスイロカネ製の槍を借りれば大丈夫だろうし。


「それはともかく、この階層には確実にレッサー・ドラグーンが出てくるワケだし、みんなも(プラチナ)ランクモンスターがどんなものか、実際に戦ってみるべきじゃない?」

「それは俺としても望むところですけど、フォローはしてくれるんですよね?」

「そりゃね」


 それは当然だろ。

 そもそもレッサー・ドラグーンは、ハイクラスが20人近く集まって討伐に乗り出すって話だからな。

 それでも犠牲者が出ることもあるって聞いてるから、ハイクラス5人だけで戦わせるなんて、死ねって言ってるのと同じだぞ。


「そういやミーナ。レベルはどうなった?」

「私ですか?レベル44ですけど?」


 レベル44か。

 もしかしたら進化したかもしれないって思ったが、まだだったか。

 とはいえ、もうちょいだな。


「へえ、レベル44になったんだ」

「今日中には進化できそうですね」


 リディアとルディアは、今日中にミーナが進化するって疑ってないな。

 今日中に第7階層にまで辿り着きたくはあるが、それでも出くわした魔物は狩るつもりだから、ミーナも積極的に参加してくれれば、進化はできそうな気もする。


「本当にね。フラムとレベッカは?」

「私はレベル42ですね」

「レベル43になりましたぁ」


 おっと、フラムとレベッカも進化目前だな。

 この分じゃ、アテナもレベル40ぐらいにはなってそうだ。


「アテナはいくつになったの?」

「ボク?レベル40だよ」


 予想通りか。

 エレファント・ボアは緊急だったから、アテナにとっては今回が初の本格的な戦闘で、ハンターとしての活動になる。

 だから多分、急性魔力変動症に罹患することはないだろう。

 だけどミーナ、フラム、レベッカは、今日中に進化しておかないと、明日は動けなくなりそうだな。

 いや、今日中に発症する可能性も低くないんだから、それも踏まえて、しっかりとフォローしないと。


「エオス、この階層からはこれを使って」

「ですが、これはプリム様の槍では?」

「ええ。だけど翡翠色銀ヒスイロカネで作られてるから、あんたの魔力にも耐えられるわ」


 プリムはエオスに、試作翡翠合金斧槍を手渡している。

 ハイドラゴニアンのエオスが使ってるのは魔銀ミスリル製の手斧だが、第5階層からは本格的に(プラチナ)ランクモンスターが出てくるんだから、魔銀ミスリルじゃ辛くなる。

 エオスは一通り武器を使えるそうだが、一番得意なのは斧だから、斧みたいに使うこともできるプリムの試作翡翠合金斧槍は使いやすいんじゃないかと思う。


「エオスの武器は最優先で打ってるんだけど、もうちょっと掛かりそうなんだ」

「早ければ今晩、遅くても明日には仕上げるから、それまではそいつで我慢してくれ」


 早ければ今晩って、思ってたより早いな。


「ありがとうございます、エドワード様。それではプリム様、お借りさせていただきます」


 エオスも武器には困ってたから、少し躊躇したものの、結局は試作翡翠合金斧槍を借りることにした。


「マリサさん、ヴィオラさん。武器の使い勝手はいかがですか?」

「はい、とても使いやすいですね」

「私もです。魔銀ミスリルどころか翡翠色銀ヒスイロカネより上の瑠璃色銀ルリイロカネを使っていただき、ありがとうございます」


 フィーナはマリサさんとヴィオラに、瑠璃色銀ルリイロカネ製武器の感触を聞いてるところか。

 マリサさんは両手持ちの斧、ヴィオラは双剣を使っているが、ドラグニアに着いた日の夜に完成し、手渡している。

 マリサさんの斧は、鳥が翼を広げたようにも見える両刃斧だが、刺突用の穂先も備えている。

 ヴィオラの双剣は、刀身とナックルガードが一体となったような、シンプルなデザインだ。

 2人にも何度か戦ってもらってるが、ドラグニアに着いた翌日とエレファント・ボア討伐の際はメインで戦うことはなかったから、本格的に使うのは今回が初になる。

 フィーナもそれを知ってるから、使い勝手を訊ねてるんだろう。


「さて、それじゃ飯も食ったし、攻略再開といくか」

「だね。とは言っても、この階層からは(プラチナ)ランクモンスターも出てくるから、油断は禁物だよ」


 ルディアの言うように、この第5階層からは(プラチナ)ランクモンスターも多くなる。

 レッサー・ドラグーンはもちろんマクロナリアっていうブラキオサウルスの希少種、プロトケラトプスの希少種になるトリケラトプスまで出てくるからな。

 サウルス種っていう亜竜は、何故か地球の恐竜と同じ名前なんだが、巨体な上に魔法まで使ってくるから倒すのが面倒くさいんだよ。

 ちなみにワイバーンはプテラノドン、プレシーザーはプレシオサウルス、グラントプスはトリケラトプスによく似てるんだが、そいつらとは別種の魔物らしいし、亜竜の中じゃ一番ランクの低い(カッパー)ランクモンスターってこともあるから、倒すのはハイクラスなら難しくなかったりする。

 もっともその3種は騎獣や車獣、従魔、召喚獣としての需要が高いし、野生種はいないって話もあるんだが。


「それにしても、ここって湿地帯って話だったんじゃなかったのか?」

「言いたいことは分かるけどな」


 出発前にエドがぼやくが、気持ちは分かる。

 第5階層は湿地帯ってことで、地面はぬかるんでいる。

 だがそれだけじゃなく、周囲には池やら沼やらも多い。

 なのに通路は公園とかにあるような感じで、木やら石やらでしっかりと舗装されてるから、獣車でも問題なく進めたりする。

 こっちとしては助かるんだが、なんでこんなことになってんのかがさっぱりだ。


「そこは考えても仕方ないわよ。迷宮ダンジョンはこういうもんだって思うしかないしね」


 迷宮ダンジョンに入ったことがあるマナが無理矢理纏めるが、フロート迷宮にもこんな感じの階層があるらしい。


「それに聞いた話だけど、獣車が使えない所もあるみたいよ。全体的にじゃなくて、一部の階層だけって話だけど」

「ってことは迷宮ダンジョン攻略は、獣車の使用が前提ってことか?」


 獣車が使えない階層を有する迷宮ダンジョンがあるってことだが、俺としてはそっちの方が普通だと思っていた。

 地球には迷宮ダンジョンなんてないが、それでも似たようなもんがない訳じゃないし、アニメやゲームなんかでも迷宮ダンジョンの移動は徒歩が基本だった。

 だからヘリオスオーブの迷宮ダンジョンも、そうだとばかり思ってたぞ。


「ええ。というか、大和の世界は違ったの?」

「いや、そもそもの話として、地球にはこんな感じの迷宮ダンジョンなんてないぞ。似たようなもんがない訳じゃないが、そっちは自然にできた洞窟とか、太古の人が作った人工物だったりするから、どっちかと言ったら遺跡になるか」


 しかも人が通るのがやっとだったりもするし、劣化して脆くなってることもあるから、乗り物で移動なんて無理だしな。


「そうなんだ。世界が違うと、同じ迷宮ダンジョンでも意味が違うんだね」


 それは俺も思う。

 もっとも俺が一番面食らったのは、結婚観だったけどな。

 女性比の方が圧倒的に高いから、仕方ないとこもあるんだが。


「まあだからこそ、迷宮ダンジョンが生物だって言われてるんだけどね。こうやって獣車用の道を用意することで手早く攻略してもらって、身の安全を図ってるんじゃないかっていう説があるのよ。実際、各国の王城にある迷宮核ダンジョンコアを収めている部屋は常に人がいるし、余程のことがあってもコアを破壊することはないもの」

「ああ、つまり迷宮ダンジョンも、それを理解してるかもしれないってことか?」


 迷宮ダンジョンそのものは動けないから、心臓部でもある迷宮核ダンジョンコアを保護してもらおうってことか。

 迷宮核ダンジョンコアを回収されても迷宮ダンジョンは消滅しないし、それどころか今まで以上に人が多くなることもある。

 だけど迷宮ダンジョン内で命を落としても、自己責任の範疇でしかないってことに変わりはないし、コアは王城に安置されてるから、迷宮ダンジョンとしても安心して人間を食えるってことになる。

 確かに生物、しかも資源を産み出す牧畜って感じがしなくもないな。


「その話、分からなくもないですね」

「ですねぇ」

「餌が人間ですから、牧畜とは言い難いですけどね」


 それは確かにミーナの言う通りだ。

 とはいえ、迷宮ダンジョンで手に入る素材は希少な物が多いし、迷宮ダンジョンに入るのはほとんどがハンターだから、一攫千金狙いって奴も多い。

 結局は自己責任の範疇だしな。


「まあね」

「そうね。それじゃ行きましょう」

「ええ。今日中に第7階層に辿り着いておきたいから、ここと第6階層は足早になるけど、その分第7階層で狩りをすればいいし」


 だな。

 この第5階層は水系の亜竜や魔物が多いらしいが、第6階層は氷系の魔物が多く、手に入る素材も偏っている。

 だが第7階層は、湖に浮かぶ島々っていう階層で、島によって環境が異なっているらしい。

 火山の島もあれば砂漠の島もあるし、池だらけの島や雪の島まであるって話だ。

 だからその島に合った魔物が生息しているとも言われている。

 なので俺達は、明日は1日かけて島を巡って、多くの素材を確保する所存だ。


 とはいえ、まずはこの湿地帯の第5階層、そして雪原の第6階層を攻略してからだが。

 (プラチナ)ランクモンスターも出てくるんし、しっかりと気合を入れないとな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ