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新装備構想

Side・マナリース


 私達はソルプレッサ迷宮第2階層に降りてきた。

 第2階層は山が多い階層で、第3階層に降りるためには2つ山を越えないといけないらしいんだけど、その山はイデアル連山やソルプレッサ連山程広くなく、標高も数百メートル程度しかない。

 ご丁寧なことに、獣車が通れるような山道もあるわね。

 もっともそこを通ると、魔物が襲ってきやすいってことなんだろうけど。


 この第2階層は(シルバー)ランクモンスターしか出ないそうだから、私達も気が抜けないわ。


 だけど第2階層に下りたばかりの所は結界があるから、魔物に襲われる心配はない。

 なので私達は、昼食を取ることにした。

 ドラグニアを発ったのは9時ぐらいで、そこから1時間ちょっとでソルプレッサ迷宮に着いたんだけど、第1階層を抜けるのに2時間近くかかってるから、丁度いい時間なのよ。


「第2階層って、確か(シルバー)ランクモンスターが出てくるんでしたよね?」

「らしいな。異常種や災害種が出ることは滅多にないそうだが、希少種は普通にいるらしいから、それなりにおいしい階層って言ってもいいだろう」


 ホットサンドを食べながらラウスの疑問に答える大和だけど、(シルバー)ランクの希少種となると、大和やプリムが大好物のウインガー・ドレイクも含まれるから、おいしいっていうのは間違いじゃないわね。


「とは言っても、今回は攻略が主目的だから、遭遇でもしない限りは狩らないけどね」

「あたしとしては、できれば数匹狩っておいてもらいたいんだけどね」


 残念そうに言うプリムだけど、マリーナとしては確保しておきたい考えを告げる。

 確かウインガー・ドレイクは、アテナとエオスのアーマーコートを仕立てたら無くなっちゃうんだったかしら?


「ウインガー・ドレイクの革って、もう無いんですか?」

「そうなんだよ。大和とエドはあと3人、ラウスも3人から4人お嫁さんが増えるでしょ?ってことはユニオンの人数もそれだけ増えることになるから、できれば早い内に確保しておきたいんだ」


 ミーナに答えるマリーナだけど、確かにそうだわ。

 他にも増える可能性がないわけじゃないから、できることなら素材は早めに用意しておいた方がいいわね。


「それなんだけどよ、大和とプリムはエンシェントクラスってこともあって、ウインガー・ドレイクじゃ厳しいだろ?」

「ああ。だからここで、高ランクモンスターの素材を手に入れようって考えてるんだからな」


 そう思ってたんだけど、エドが口を挟んできた。

 大和とプリムはエンシェントクラスということもあって、ウインガー・ドレイクの革にけっこうな負荷が掛かってるそうなの。

 今はまだ大丈夫だけど、このままじゃ遠からず革がボロボロになって、使い物にならなくなるって予想されてるから、2人の防具は最優先で仕立てる必要がある。

 だけどそのために高ランクモンスターの素材が必要になるから、ソルプレッサ迷宮攻略のついでになるけど、(ミスリル)ランクモンスターを狩ることにもしているのよ。


「グリフォンの革はあるが、そっちは大和のアーク・オーダーズコートを仕立て直すのに使う必要があるから、できれば使いたくない。そうなると当然、この迷宮ダンジョンん中にいる魔物の革を使うことになるんだが、確か最下層は、(ミスリル)ランクモンスターの巣って話だろ?」

「そう聞いていますね。あ、まさかエドワードさん、この機会に、全員のアーマーコートを(ミスリル)ランクモンスターの革で仕立て直すつもりですか?」

「素材を統一ってことなら、それもアリかと思ってな」


 思い切ったこと考えてるわね。

 大和の話じゃ、グリフォンの革を使ってるアーク・オーダーズコートは、ウインガー・ドレイクの革を使ってるクレスト・アーマーコートより魔力がよく流れて、澱みも感じられないってことだから、(ミスリル)ランクモンスターの素材ならエンシェントクラスの魔力にも耐えられるってことになると思う。

 だけどその(ミスリル)ランクモンスターの素材を、大和とプリムだけじゃなく全員の装備に使おうなんて、すごく贅沢な話だわ。


「俺としては、そっちの方が良い気もするな。だけどお前らの負担が大きくないか?」

「そりゃな。だけど魔力の問題が出てきてるんだから、先に手を打っておくべきだと思ってるんだよ。高ランクモンスターの素材を使えるってのもあるけどな」


 なるほどね。

 確かにクラフターからしたら、高ランクモンスターの素材を使う機会なんて、そうそうあるものじゃない。

 だから使いたいっていう気持ちは、分からなくもないわ。

 だけど魔力の問題って、今の所は大和とプリムだけだと思うんだけど?


「もしかしてエド、大和とプリムだけじゃなく、あたし達もエンシェントクラスに進化するかもって思ってる?」

「そりゃな。今はハイクラスがどうとかってレベルだけど、この2人を見てれば、他のみんながエンシェントクラスに進化するかもしれねえって思ってもおかしくねえだろ?」


 ルディアに答えるエドだけど、そう言われてしまうと私達としても反論に詰まる。

 実際、私やリディア、ルディア、そしてラウスは短期間でハイクラスに進化したし、ミーナとフラム、レベッカだって時間の問題になっている。

 それに進化すると寿命が伸びることもあるから、大和としてはユーリやリカも進化させたいって考えてるはずだわ。


「エドの考えはわかったけど、マリーナやフィーナはそれで良いのか?」

「その考えを聞いたのは初めてだけど、あたしとしても高ランクモンスターの素材を使えるワケだから、構わないよ」

「私もです。とはいえ、私は獣車の方に掛かりっ切りになりそうですが」


 クラフター3人も反対しないとなると、これは決定ね。

 ウインガー・ドレイクの革でも驚きなのに、まさか(ミスリル)ランクモンスターの素材を使うことになるなんて、さすがに思わなかったわ。


「なら、それでいこう。えっと、ここに出てくる(ミスリル)ランクモンスターっていうと、8属性のドラグーンがメインだったか?」

「メインはそれらしいね。他にも上位種や希少種がいるらしいけど、詳しくは分かってないはずだよ」


 ルディアが説明してくれたけど、確かに第7階層が最下層だと突き止めたハンター達も、一瞬でも判断を誤ったら生還できなかったって話だし、何より魔物とほとんど遭遇しなかったらしいから、詳細は不明なのよね。

 8属性のドラグーンは、属性魔法グループマジックと同じく8つの属性のどれかを宿したドラグーンだから、その革を使うなら私達が得意にしている属性魔法グループマジックをメインにして、補助的に苦手属性とか使用頻度の高いドラグーンの革を使えば良いかもしれない。


「それ、良いですね」

「ですね。従魔達にもドラグーンを使った装備品を持たせておけば、そちらも戦力を強化できそうです」


 フラムとミーナも乗り気ね。

 でもミーナの言うように、従魔や召喚獣の戦力強化にも繋がるから、私としても歓迎だわ。


「決まりだな。なら最下層は、少しだけ探索しよう」

「いいわね。(ミスリル)ランクモンスターなら、少しは歯ごたえありそうだわ」


 不敵に笑う大和とプリムだけど、(ミスリル)ランクモンスター相手に少しの歯ごたえなんて、そんなこと言えるのはあなた達だけだからね?


 まあいいわよ。

 私達もいつかエンシェントクラスに進化できるかもしれないんだから、今の内からエンシェントクラスの魔力に負けない素材を使っておくのは、私達としてもありがたいことなんだから。


Side・キャロル


 昼食を取った後、私達はソルプレッサ迷宮第2階層の攻略を開始しました。

 昼食を取っている最中、私も着用しているクレスト・アーマーコートを、(ミスリル)ランクモンスターの素材で仕立て直すなんていうとんでもない話が出るとは思いませんでしたが。

 ですが終焉種を単独討伐し、グリフォンすらもあっさり狩ってきた大和様とプリム様からすれば、ドラグーンという限りなく(アダマン)ランクに近い魔物すら、単なる素材に過ぎないようです。


 元々ドラグーンは迷宮ダンジョンにしか生息していないと言われていますが、(プラチナ)ランクのレッサー・ドラグーンや(ミスリル)(アッパー)ランクのダーク・ドラグーンはアレグリア公国のエニグマ島に生息しているという噂がありますし、そのエニグマ島にはドラグーンの終焉種ニーズヘッグすらいるとか。

 そのためエニグマ島は、ヘリオスオーブ最大の難所とされていて、立ち入る者すらいないと言われています。


「キャロル、次に魔物と遭遇したら戦ってみる?」


 獣車の中で、マナ様がそんなことを訊ねてきました。

 第2階層は(ブロンズ)ランクモンスターは現れず、(シルバー)ランクモンスターのみと聞いています。

 普通なら私程度では足手纏いでしかないのですが、大和様とプリム様は、相手が(ゴールド)ランクや(プラチナ)ランクどころか(ミスリル)ランクモンスターであっても援護する余裕があるそうですから、私の中の常識は脆く崩れ去っています。


「私が攻撃しても良いんでしょうか?」

「構わないわよ。あなたもハイクラスに進化できれば、それだけラウスと一緒にいられる時間が長くなるわけだしね」


 プリム様にそう言われて、頬が熱くなりました。

 私の婚約者であるラウス様は、先日のエレファント・ボア討伐の際にレベル45になり、ハイウルフィーにも進化しています。

 正確にはエレファント・ボアの討伐を行ったのはマナ様、リディアさん、ルディアさんの3人なのですが、ラウス様はお1人で希少種ジャンボノーズ・ボアを5匹も討伐していました。

 その結果、晴れてハイウルフィーに進化されたのですが、本来でしたらしばらくは急いでレベルを上げず、何年か掛けてじっくりと進化を目指すはずだったんです。


 ですがアミスターとの玄関口になるエトラダの街で、ドレイク・ペインというレイドを率いているハイドラゴニュートに倒されてしまったことがありました。

 その時は大和様のおかげで事なきを得ましたが、下手をすればあの時、ラウス様の命は奪われていたかもしれませんから、私にとっても背筋の凍るお話です。

 ですからラウス様は、私やもう1人の婚約者レベッカを守るために、早くハイクラスに進化するできるよう頑張られていたんです。

 実際にハイウルフィーに進化された時は私も嬉しかったのですが、無茶だけはしないで欲しいです。


 ですがハイウルフィーに進化したことで、ラウス様が私より長く生きられることが確定しています。

 レベッカもハイクラス間近ですしプリム様を目標にしていますから、これからもラウス様の隣で戦っていくことでしょう。

 私のレベルはまだ24ですし、ハイエルフへの進化も考えたことがありません。

 いえ、初めてお会いした時はレベル17でしたし、そこからわずか数週間で7つもレベルが上がっているのですが、それでも進化には程遠いレベルです。


 ですから私も、できればハイエルフに進化し、1日でも長くラウス様と生きていきたいですから、マナ様やプリム様のお言葉に甘えさせていただくことにします。


「その杖、ラピスライト・ロッドって名前にしたんだったか?」

「はい。剣としても一級品ですが、私の剣術はたしなみ程度ですからとても実戦向けとは言えません。ですから普段は、杖として使わせていただきたいと思っています」


 私のために、瑠璃色銀ルリイロカネを使って作っていただいた杖は、大和様の世界では仕込み杖と呼ばれているそうです。

 杖の中に剣が隠されているので、剣を仕込んだ杖という意味だそうですが、剣としても杖としても使えるのはとてもありがたいです。

 なにしろ私の剣の腕は、(ティン)ランクハンターや(ティン)ランクオーダー並でしかないのですから。

 ですがこのラピスライト・ロッドには治癒魔法ヒーラーズマジック、私の天賜魔法グラントマジックである天樹魔法、そして適性がある風属性魔法ウインドマジックの魔石を嵌め込んでいただいていますから、今はまだまだ使いこなせていませんが、いずれはしっかりと使いこなせるようになりたいと思います。


「杖メインで使うんなら、魔石の位置を変えとくべきだったか」

「でもさ、変に打撃武器として使ったりしたら、使い方によっては剣が飛んでっちゃうよ?」

「ですね。一応コネクティングで固定してはいますが、乱暴に扱えば簡単に抜けてしまいます」

「それもそうか」


 ラピスライト・ロッドを作ってくださったエドワード様、マリーナさん、フィーナさんが、打撃武器としてみた場合の用途で話し込まれていますが、私としてはそんな使い方をするつもりはありませんよ?

 確かに工芸魔法クラフターズマジックコネクティングを使っていると聞いていますし、柄を握って魔力を流せばコネクティングは解除されますから、いざとなったら剣として使うつもりでいるのですから。

 さすがに(シルバー)ランクモンスターに接近するつもりはありませんから、今回は杖として使わせていただきますが。


 その後、私は皆さんのフォローをしながら、魔法を放ち続けました。

 出てきた魔物は(シルバー)(アッパー)ランクモンスター ヴェロキラプトルが最も多かったですが、少数ながらも(シルバー)ランクモンスター アロサウルスやライノセラス、2つ目の山頂にある湖では体長が20メートルを大きく超えるブラキオサウルスなんてのも襲ってきましたね。


 ヴェロキラプトルは数が30を超えていたため、半数、いえ、3分の2以上を大和様とプリム様が倒され、残った個体を全員で連携しながら倒しました。


 アロサウルスは2匹だけでしたが、1匹は大和様が正面から攻撃を引き付け、ミーナさんとフラムお義姉様が連携して倒し、もう1匹はプリム様が一瞬で倒していました。

 ライノセラスは1匹だけでしたが、こちらはリディアさんが攻撃をいなし、ルディアさんが竜精魔法エーテル・バーストを使っての連撃で大ダメージを与え、アテナ様が頭に槍の一撃を加えて倒されています。


 厄介だったのはブラキオサウルス3匹ですが、1匹はリディアさんの竜精魔法エーテル・ブレスを大和様のコールド・プリズンという刻印術で強化して体を氷らせ、マナ様の固有魔法スキルマジックスターリング・ディバイダーで首を斬り落としています。

 2匹目はラウス様が攻撃をいなしている隙にフラムお義姉様とレベッカが矢を放ち、私、エドワード様、マリーナさん、フィーナさん、アプリコット様も援護の魔法を放ち、エオスさんが2丁の手斧で強烈な一撃を加え、倒れた所をプリム様の援護を受けたアテナ様の槍に貫かれました。

 最後の1匹は大和様の援護を受けながら、ユーリ様、リカ様、マリサさん、ヴィオラ、ユリアが魔法を放ち、その隙にルディアさんがお腹の下に潜りこんで、大和様のフライ・ウインドという空を飛ぶことのできる刻印術の援護を受けて、体を突き破ってしまいました。


 誰も怪我らしい怪我をしていない、それどころか無傷で戦闘を終えることができましたが、通常(シルバー)ランクモンスターの群れと遭遇すれば、大なり小なりの怪我は必ず負います。

 ですが大和様とプリム様の援護が適切だったため、このような結果になっています。

 さらに大和様とプリム様以外の全員のレベルが上がっていますから、このソルプレッサ迷宮を攻略中にミーナさん、フラムお義姉様、レベッカはハイクラスに進化してしまうんじゃないでしょうか?

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