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霧に溶けて

おはようございます、遊月です!

エスタとイストの対決、この戦いの結末が少年たちの逃避行に大きな影響を与えるといっても過言ではなく……? いったいどうなっていくのでしょうか……!?


本編スタートです!

「――――っ、破裂? いや、霧になったのか!? どういうことですか、グラディウス!」


 突然姿を消したエスタに対して激昂したように叫ぶイスト。

 いや、それは激昂というよりも、理解を超えたものを目の当たりにした恐怖近い叫びだった。エスタの能力は【解析】――対象物の効能、能力、危険性、特性などを瞬時に理解し、相対したものに対する最適解を導き出せる能力。

 つまり、戦闘において直接的な威力となる能力ではないはずだった、そのことを恐らく誰よりも理解しているイストだからこそ、目の前で起こった現象が理解できない。


 消えた?

 霧になる?

 そんな能力は彼のものではない、だからありえないはずなのだ、何故そんなことが……!?

 焦燥感のあまり胸元に手をやったとき、イストは気付いた。


「くくく、そういうことか……!」

 わかってしまえばあまりに単純。

 しかし盲点をつくように、意識から抜けてしまっていた事柄をエスタは巧みに利用していた――――“疑似能力”を使えるのは、人間だけではない。


「まさかあなたに盗人の才能まであったなんてね、グラディウス! いつの間に……いや、さっきの攻撃のときですか? 本当に、手癖の悪い……、ん?」

 ふと踏み締めた足元で、何か小さなものが砕け散るのを感じて見下ろしたイストは、唖然とした。


「あぁぁぁっ!!! な、なんてことだ! これひとつでどれだけの利益が出ると思ってるんだ!! なんてことを……!」

 足元にばら蒔かれた無数の錠剤、それらを見遣って絶叫して必死に拾い集めようとするイスト。それを見下ろしながら、霧になった身体でエスタは、必死に機会を窺っていた。


 見たところ、イストの疑似能力は空気中に自らの所有する毒物を溶け込ませる能力のようだ。ある程度はその方向も操れるのだろう。

 しかし、こんな換気もされていない室内でイストが平気でいられるのなら、恐らくこの毒は生物の体内でのみその毒性を発揮して、空気中では徐々に薄まっていくものに違いない。

 今なら空気と同化しているから、エスタがその毒の影響を受けることはない――しかし、実体を取り戻さないことにはイストに対する反撃もできない。


 身体を戻せばすぐにイストが毒を差し向けてくるに違いないから、慎重に機会を窺わなければならない。だが、実のところ有効時限がよくわからない。

 もしも先に自分の疑似能力が解ければ、たちまち霧に飲まれてしまうだろう。そうしたら恐らく自分はイストに敵わないし、ここでイストを野放しにしてしまえば、ルキウスやカイルの旅はより困難なものになるに違いない。


 それだけは、看過できない……!


「しかし、その能力いつまで持ちますかね? 私の能力からは逃げられると思わないことです、これはエデンの施設から高値で買い付けた代物ですからね。『レジスタンス』をけしかけて襲わせた村から奪ったもの全てを使い果たしましたよ。

 だが、それに見合う力はあるようだ、この能力を摂取できる限り、私はあのエデンの科学者にだって負けはしない!!!」


 恍惚、法悦。

 どう言い表すべきか迷うようなその笑顔に、もはやかつての友人の面影などとうになく。エスタは、決意を新たにする。


 先程イストの懐から“疑似能力”を散らかしたのは、もちろんイストが次の能力を即座に服用するのを防ぐこと、それから恐らくそれらを拾おうとするときに生まれる隙を窺う目的があったが、それだけではない。

 自分が盗んだ、もうひとつの能力を気付かれない為。


 ――こんな戦い方、あのふたりには見せられんな。


 心のなかで自嘲しながら、決心を固めたとき。

 エスタの霧化能力が、その効力を失い。

「見つけましたよぉ、グラディウス!!」

 イストが、三日月のようにその口元を歪ませた!

前書きに引き続き、遊月です!

エスタが思わず躊躇してしまう戦い方とは?

次回、とうとうテラニグラ編決着!!


また次回お会いしましょう!

ではではっ!!

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