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迫る手の影に

おはようございます、久方ぶりの更新となりました、遊月です!

辛くもカルロの動きを止めることに成功したカイルたち。しかしその頃、テラニグラではエスタがルキウスに不穏なことを報せて……!?

久しぶりなのでキチッと回想らしいことを言いました♪


では、本編スタートです!!

「えっ、地獄って――――どういうことだよ、おっさん!」

 突如としてエスタから告げられた『テラニグラはもうすぐ地獄に変わる』という言葉。そしてすぐにこの街を発てという言葉。ルキウスには納得できないことだらけだった。

 食い下がるルキウスの脳裏には、あの頃(・・・)――――脱走することを決意して、カイルの手を引いてエデンの中央収容所を出た日よりも前の、単なる実験体として扱われていた日々が蘇っていた。


 自分の意志など関係なく決定されてしまう感覚。

 抵抗も判断も何の意味をなさない無力感。


 ルキウスは、どうにか動くようになった体をベッドから起こし、エスタに問う。

「地獄になるって何だよ? だってここ、エデンの影響力が及ばない場所だって言ってたろ? だからここでカイルを助ける作戦を立てたりしようって、」

「状況が変わったんだ、すまない」

 そう告げるエスタの顔は、とても苦しげだった。

 言葉に詰まるルキウス。

 エスタだって、できることならカイルを助け出したいに決まっている。彼は、自分たちを守るためにエデンに戻ったようなものなのだから。生きる気力すら挫かれてしまうような仕打ちを受け続けてきた、あの場所へ。

 それに、エスタは自分よりもずっと長くカイルと知り合いだ。

 助けたいに決まっているのだ。

 トルッペン砂漠でカイルを引き留めようとしたルキウスを止めたときのような、無念さが滲んだ顔。あのときと同じ顔を、今もしている。そのことは、あまり人の真意を読み取るのが得意とは言えないルキウスにもわかった。


 それ以上の何も言えなくなったルキウスの頭に、申し訳なさそうな顔をしながら大きな手を乗せる。そのままの姿勢で、背後で壁にもたれているジークに向き直る。

「すまないがジーク、ヒューゴ(・・・・)――――いやルキウスを頼めるか? もちろん、これはフランツが頼んだのとは別の仕事だ。報酬も別に出す」

「いや、必要ない」

 小さく返すジーク。ルキウスの傍に立つと、その巨躯が改めてよくわかる。そして、しわの刻まれた顔をどうにか笑みの形に歪ませてから「よろしくな、小僧」と言い、またエスタに向き直る。


「フランツが頼んできたのは、あんたらの護衛だ。で、いまあんたはこの小僧を守ろうとしてるんだろ? だったらこれは、あんたらの護衛の続きだ。それに……」

 

 そこで1度言葉を切ってから、「まぁあとは俺の都合ってやつだ」と不器用に笑った。エスタもそれに対して「まぁ、そういうのもあるだろうさ」と返す。そして最後にもう1度「ルキウスを頼んだぞ」と念を押すようにジークに言う。

 そして、ルキウスの顔を覗き込むように屈む。


「ルキウス、お前さんたちの旅に付き合えるのはたぶんここまでだ。オレはたぶん、ここから支えるだけになる。直接お前さんたちをサポートすることはきっとできないだろう」


 だが、と言葉を切る。

 そして決意に満ちた眼差しで、ルキウスの瞳の奥を射抜くように見つめる。


「それでも、オレはお前たちの無事を祈っている。そして、どうかカイルをよろしく頼む……!」


 その懇願の言葉を背に医院を出ようとしたとき、突然の轟音がルキウスたちを襲った――――!!



 * * * * * *



「ん……」

「カルロ!? 目が覚めたの?」

 エデン、中央収容所。その地下に位置する医務室で、身体中を拘束された状態でカルロ=コンキーリャは目を覚ました。慌てて駆け寄るカイル。その姿を見たカルロは、申し訳なさそうに目を伏せる。

 戸惑うように覗き込むカイルに対して、いよいよ涙を流しながら謝り始めた。


「悪かった、カイル。お前を殺そうなんて、どうかしてた」

「カルロ……」

 その姿に胸を痛めながらも、カイルは大切なことを尋ねる。


「さっきさ、あの人に言われた(・・・・・・・・)って言ってたんだけど、それって誰か覚えてる?」


 カルロが言った、エデンへの復讐――そして何よりも、エデンの暗部に葬られる形で殺された恋人のリリア=エヴァーリヴをこの世に再び造り出すという願望。

 カイル自身にも微かにあったその願望を、狂気に満ちた手段で可能と思わせた人物のことが気になった。そのせいで大切な幼馴染であるカルロは狂わされ、その命だけでは贖いきれるとも思えないほどの罪を背負ってしまった。

 そんな相手がもしも自分の近くにいるのなら、何かしたい。

 ルキウスやカルロのように力があるわけではない自分では、実力に訴えるようなことはできないだろう。しかし、それでも何かをしなければきっと気が済まない――――そう思ったのだ。


 朧げな記憶を辿るように瞳を閉じるカルロ。

 ようやく出てきたのは。


「確か、長身の優男だったような気がするな。気弱そうだけどお前みたいに優しいのだけは伝わってくる笑顔を浮かべてて、誰にでも愛情を注ぐ……みたいな」

「その人に会ったのは?」

「あー、確か旅行中だったから、テラニグラだったはずだよ」


 テラニグラ。

 そこはエスタが絶対に安全だと言っていた都市で、そしてルキウスたちとの旅の、一応の終着点にするはずだった場所。ルキウスたちの動きを知らぬカイルの中には、焦りが募っていく。

 ルキウスを何とか守らなきゃ……!



 * * * * * * *



「なるほど、賢明な判断をしましたね」

 テラニグラのとある高層ビルの一室。

 様々な個所からの映像を集めているものと思われる複数台の監視カメラ映像が流されているその一室で、その人物は嬉しそうに笑った。もちろんと言うべきなのかそれほどまでの執念に恐れ入るべきか、そのカメラは中央収容所内にも仕掛けられているらしい。

 ちょうど、カルロが目を覚ました辺りまで見ていたようだ。

 しかし、すぐに興味を失ったようにテラニグラのモニターに視線を戻す。


「しかし、少し遅すぎたようだ」


 その言葉の直後、見つめているモニター――――ヨーゼフ医師が院長を務める医院を監視しているモニターの視界が、砂埃に覆われる。

 満足げな顔をした後、その人物は画面に向かって呟いた。

「申し上げたはずだ、エスタ=グラディウス。あなたは破滅するのだと。エデンから逃れてきたその少年共々ね……」

 モニターの明かり以外は薄暗い照明しかついていない一室に、短い笑い声が1つ。

前書きに引き続き、遊月です!

どんどん敵が増えていっているような……。しかし、少なくともルキウスの方には心強い味方ができましたね! ジークの活躍を書ければいいな――とか思ったりしつつ。


また次回お会いしましょう!

ではではっ!!

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