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決裂へ至る亀裂

こんばんは、この作品の更新が非常に久しぶりになってしまった遊月です。

お久しぶりです!

そのわりにあまり展開は進みません。その分、あまり時間をかけずに次話もあげますよ……という自分へのプレッシャーにしておきたいところです。


それでは、本編スタートです!!

「彼女によく似たお前の顔があれば、きっとあの頃と同じリリアさんが生まれるんだ、俺を見て、笑ってくれて、優しい、あのリリアさんが……」

「僕の……、顔……!!?」

 エデン中央収容所、医務室近くの廊下。

 カルロの凶行を目撃して、セラピア医師と2人で引きずり込まれた亜空間の中で。

 突如として発せられた言葉に、カイルは一瞬理解が追い付かず、訊き返していた。いや、正確には理解しようとしたくなかった。


 目の前で微笑むカルロはやはり優しくて面倒見のいい幼馴染みと同じ顔をしている。それでも、もし昔の彼なら他人の顔を本気で奪い取ろうとするだろうか。

 しかも、幼馴染みで亡き恋人の家族のことを。


 血を分けた実の姉、リリアを喪ったことはカイルにとっては癒えることのない傷だ。それも、恐らくエデンのもたらすものに対する疑問を不用意に口にしてしまった幼い自分のせいなのだから、余計に。

 ただ、カイルはカルロのように姉を生き返らせたいとは思わなかった……いや、直後に待っていた収容所での陰惨な日々によって心を壊されつつあったカイルに、姉のことを思うことなどできなかった。

 心身を踏みにじられる苦痛に耐えることしか、できなかった。


 だけど、と。

 カイルは目の前の幼馴染みを見る。

 彼から感じられるのは、微笑みこそ優しいのに、怒りと嘆きだけ。リリアを喪ったことへの悲しみ、奪ったものへの怒り。

 もしかしたら、あと少し長くあの場所に囚われていたら……?

 自分のように、救ってくれる人との出会いがなかったら……?


『俺とここから逃げないか?』


 自分には、あの日のルキウスが手を差し伸べてくれた。その手を取れたから、色々なものを見て、色々なことを知って、守りたいと思えるものができた。

 それが、心に渦巻く絶望を和らげてくれた。

 でも、それもなくずっと孤独の中で苦しんでいたとしたら?


 ふとよぎった暗い未来予想に、カイルは自身の心に空洞うろができたような感覚に陥った。しかし、それはほんの数秒ほどで打ち切られた。他ならぬカルロの叫びによって。

「安心してくれ、カイル。俺はお前の顔を綺麗な状態で切り取りたい。だから、絶対に苦しませたりはしないから……!」

 両肩をいきなり掴まれ、上体を後ろに倒すような形で体勢を崩される。

「っ!?」

「カイルくん!?」

 背後から驚いたようなセラピア医師の声が聞こえる。ただ、何とか応じようとする声もカルロの持つ注射器をかわすことに意識を奪われて封じられる。だが、仰向けに倒されて、足の動きを押さえ込むように腿の上に馬乗りになっているカルロの猛攻を躱し続けることは、容易ではない。

 何とか動く腕で必死に抵抗するが、振り払おうとした腕を押さえつけられて針を刺されそうになる。


「カイル、どうして抵抗したりするんだ? この薬を使えば、眠るように死ねるのに。大丈夫だ、どんなに眠らせずに嬲ったやつでも、これを打てば安らかな顔で眠るんだ。安心していいんだぞ、カイル」

「僕は、死ぬわけにはいかないんだ! 僕には、助けたい人がいる! ルキウスが待ってる! だから、僕は、僕は……っ!!」

 必死にその言葉を告げた途端、カルロの様子が変わった。

 手が震え、優しさを湛えていたような顔からはその影が消え、見開かれた瞳は充血している。そして、口からはうわ言のように何か同じような音が漏れている――何らかの言葉ではあるのだが、聞き取れないくらいに小さいのである。

 そして、それが途切れて。

 はっきりと聞こえた言葉は。


「俺にも、いたんだよ」


 その声は、収容所の中ですらまだいいように思えてしまうほど、暗く深い怨嗟に満ちたものだった。

遊月です♪

『最果ての景色』と言いながら、主人公2人がその場から動けない回が続きますが、次回いよいよ動きます(構想をある程度練り中?)


ということで、また次回!

ではではっ!!

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