マリ
マリ
アニエスが部屋の中をウロウロしている。
立ったかと思うと座り、
座ったかと思うと立ち上がる。
「ねぇ、大人しく座ってたら?」
そう私が言うと、
「マリは平気なの?!」
アニエスが言った。
「なにが?」
「なにが?!なにがって?!!心配じゃあないの?!義明が!」
「え?」
義明君は私達のクラスメイトの洗脳を解くために王宮へと入ったのだが、そんな危ない事には思えない。
「だって、皆の洗脳を解いて帰ってくるだけじゃないの?」
「あのねぇ!危険が無いわけ無いでしょ!洗脳の魔法を掛けた奴がいるんだよ!それを解くんだよ?!」
「じゃあ危ないの?!」
だって義明君はそんな事一つも言ってない。
「すみません、マリさん。義明様は危ないから気を付けるように言っていました」
シャロンちゃんが言った。
「え?」
私はそんな事言われてない。
「私もぉ、義明君に危ないからぁって」
マロンちゃんが言った。
「私には義明君そんな事一つも、、、」
「貴方に心配させないために決まってるじゃない!!」
「アニエス様!」
激昂したアニエスをイリスさんが嗜める。
「ごめんね、マリ。でも危ないの、兄のイーサンも、神殿長のミディもどう動くか分からない。もしも、邪魔だって判断されたら、、、」
「されたら?」
「命を狙われるかもしれない」
「そ!そんな!嘘でしょ?!」
「本当よ」
アニエスが首を左右に振って言った。
「でも、でも、義明君なら強いから大丈夫よね?」
「そうね、でも、義明も無敵って訳じゃ無いわ。確かに、洗脳魔法は無効化出来るし、相手の使ったスキルはどんどん覚える事が出来る。でも、思い出して、イリスが体術で義明を押さえ付けた事が有るじゃない?」
「義明君を無理矢理脱がした時?」
「そう、結局、スキルを習得するには少しだけど時間がかかるの。だから、義明の持っていないスキルで一気に攻めれば、、、」
「そ!そんな!」
「いきなり剣術レベル10の人に斬りかかられたら義明様でも」
イリスさんが言った。
「あとはぁ、即死魔法も怖いのぉ」
「そうそうレベル10の剣士なんていませんけどね。それに、魔法を通さない防具も着けてはいますから、即死魔法も対応出来ますし、、、」
シャロンが私に心配させまいと優しく言う。
つまり、私だけだった訳だ。
私だけが義明君の危険性を分かって無かった。
「ど、どうしよぉ、どうしたら良いの?!」
「どうしようもないの!待つしか無いわ」
アニエスは冷たく言い放った。
私は、皆が洗脳されてるのが可哀想で、
助けてあげたくって、
でも、まさかそれで義明君に危険が有るだなんて!
義明君に何かあったら、
義明君がもしも死んじゃったら、、、。
どうしよう、このまま待つなんて出来ない!
早く義明君の所に行かないと!
私はお手洗いに行く振りをして、自分の体を羽虫に変えて空を飛んだ!




