嫁?
嫁?
名残惜しそうにするマロンさんと別れ、シャロンと宿屋へ向かった。
マロンさんはいつも使っている宿を変えて、俺達と同じ宿にじにしようかと言っていた。ただ、この宿だけど多分高いんだよね。
そもそも、この宿だけど門があるし。
中に入るとおじいちゃんが受付してくれるけど、元冒険者らしい。
もう体も細くて好好爺って感じだけど、なんか貫禄が在る。
「義明様、おかえりなさいませ」
「ども」
俺はそう言って鍵を受け取り階段へと向かおうとする。
「義明様。申し訳ございません。本日義明様にお会いになりたいというお客様がいらっしゃっております」
「え?誰?」
「アニエス様でございます」
うん、誰だ?それは。
俺は困った顔をしていたのだろう。
「おそらくですが。王族に縁の在る方かと」
助け船を出してくれた。
女性っぽい名前だし、そうすると一人しか心当りがない。
お姫様だ。
俺の手を握り、怖い手紙をくれた人だ。
この世で愛するべき人は貴方しか居ない。貴方が死んだら私も死ぬ。貴方のためなら死んでも良い。とか、手紙の内容はそんなんだったと思う。
怖ぇーよ。
できるだけお近づきにはなりたくなかったんだけど。
とうとう来てしまったか。
「何処に居るの?」
「義明様のお部屋でございます」
おい!この宿のセキュリティーはどうなってんだ!!
部屋を借りてる人間に確認も取らずに、不審者を部屋までスルーとか。駄目だろ!!そう思うけど。
しかし俺は『なあなあ』と『穏便に』を重んじる日本人だ。
強くは言えない。
「へー。了解」
鍵を受け取って部屋へと向かった。
まぁ、アニエス様は王族だし宿屋としても断れなかったんだろう。
部屋に着いてドアを開けると中にはこの間の女の子がいた。
「今晩は、義明様」
女の子は椅子に座っていてあしを組み替えるが妙に艶かしい。
「えっとぉ」
「まだ私の事を分かってくださらないの?」
女の子は上目使いに俺を見てくる。
「アニエス様、お戯れは程々に」
後ろから声がした。
「私はアニエス様の専属メイドでイリスと申します。以後宜しくお願い致します」
メイド服を着た女の人が深く頭を下げた。
え?どういう事?
「そう、私が、アニエスよ。義明様のお嫁さんになりに来ました」
女の子がそう言った。
もうダメだ。ワケわからん。




