師範
師範
魔物の剥ぎ取りや、買い取りの手続き。
冒険者としての基礎知識。そういった講習はシャロンが全て受けることになった。
俺が受ける講習は戦闘だ。
学校の教室一部屋分程の小さなスペースで数人が剣の練習をしている。
「トッドさん?!新人さんです」
受付嬢のマロンさんがそう言うと練習していた中の一人がこっちを向いた。
筋骨隆々でたくましい。
ザ冒険者って感じがする。
「よろしくお願いします」
軽く頭を下げた。
「礼儀正しいな。最近の若い者の中では珍しい」
そう言ってトッドさんは木で出来た剣を俺に向かって投げた。
右手で鍔の下を持ち、左手はその下に添える。
この構えはトッドさんの見よう見まねだ。
『スキル《素直な心》が発動しました。剣術レベル1を習得しました』
「ん?」
「いくぞ!」トッドさんが俺に向かって走って来る。
『ガッ』木剣と木剣がぶつかる。
『スキル《素直な心》が発動しました。剣術レベル2を習得しました』
「ほほう素人では無いようだな」トッドさんが木剣を振り上げる。「ではこれはどうだ!フン!」
『スキル《素直な心》が発動しました。剣術レベル3を習得しました』
「やるな、は!」
『スキル《素直な心》発動しました。剣術レベル4を習得しました』
「これはどうだ!」
『スキル《素直な心》が発動しました。剣術レベル5を習得しました』
「まだまだだ!」
さっきから。
『スキル《素直な心》が発動しました。剣術レベル6を習得しました』
「なにお!!!」
さっきから!
『スキル《素直な心》が発動しました。剣術レベル7を習得しました』
頭の中で!ゴチャゴチャと!
「ふざけるなよ!死ねぇ!!!」
『スキル《素直な心》が発動しました。剣術レベル8を習得しました』
「うっせぇ!!!」
トッドさんの木剣を思いっきり弾いた!
思いっきり動いたせいで顔に巻いていたスカーフが落ちる。
トッドさんと目が合う。
俺を見つめるトッドさんが言う。
「やらないか?」
やりません!!!