二話
なんとか間に合ったー!
今回バトルを入れる予定だったのですが
主人公の武器を竹刀にしようと考えていたのに、参考に買った本が剣道の本じゃなくて居合道のものでして
描写が全く違うので全て書き直しになってしまいました
というわけでバトルは次回!
恋愛にはまだまだ遠いです
トトトン―――トン。
屋根の上を、極力音を立てないように駆けていく。
「もうちょっとでパトロール完了……」
仕事を開始してから、3時間が経とうとしていた。
時刻は5時10分。
日の出が近いのか、既に東の空は白んできている。
くまなく観察しているつもりだが、今日はまだ一つも事件に遭遇していなかった。
「春は変な人が多いって聞くけど……」
事件が起きないならそれに越したことはない。
最後に、人目につかないためによく暴力沙汰の起きる路地裏を確認すれば今日の任務は完了する。さっさと済ませてしまおう。
私は両足に力を込めて屋根の上から飛び降りた。
「ふむ。異常なし、か」
路地裏はガランとしていて、人の気配は全くなかった。表通りに接していないこの場所は、家々を仕切るコンクリート塀の陰に埋もれて一日中薄暗く、また人目につきにくいため、リンチとかそういった類いの暴力事件が起こる。辺りの家はすべて一戸建ての貸家で、人は住んでいないのも原因の一つだろう。
そんな、度々事件が起こる場所でさえ今日は何もなかった。
これほどまでに何も起きないと逆に怖い。母に赤点の答案用紙を見せたのに微笑み返された時のように怖い(その日、私のテーブルには夕食の代わりに山積みの参考書が置かれていた)。
確かに今日は何も起きなければいいと願ったけれど、それは武力を極力行使したくないというものであって、車に轢かれそうな老人を助けたり、酔い潰れたサラリーマンを自宅に送り届けたりといった些細な人助けは一向に構わないし、いつもなら何かしらはしているのだ。
それなのに、人助けすらしていないなんて。
何か嫌な予感がする。
でもまあ的中する前に帰ってしまえば済む話だ。
下らないこと考えるのやめて、早く帰ろ。
そう思って踵を返そうとした、瞬間―――
「はっ!」
殺気を感じて素早く腰の刀を抜き、私に襲いかかろうとしていた人影に向かって振り下ろす。手応えはない。
見れば、ジャージ姿のがたいの大きな男―――大学生くらいだろうか―――が白刃取りの格好で刀の攻撃を防いでいた。かなり高速で動いたはずだが、行動を見抜かれていたとは。厄介な相手だ。
私は一歩引いて一旦刀を鞘に納め、じっと男を観察した。
黒い短髪に、力の入った大きな目。しっかりと引き締まった精悍な顔立ち。
ジャージのファスナーは開いており、ランニング中だったのか、下に着ているシャツが汗で体に貼り付いている。
あれ?おかしいな。
男を凝視していた私は、ある違和感を覚えた。
私、この人一度も見たことない。
白狐の見知らぬ人間が燐火町にいるなど、普通では考えられないことだ。
私が白狐として活動し始めた時から今までひきこもってました、なんていうのなら話は別だけど、年齢的にそれはなさそうだし。
とりあえず、探りをいれてみよう。
「あなた、見ない顔ね。白狐に何か用?」
私が軽く問いかけてみたところ―――、
「俺は3日前にこの町に引っ越してきた、近衛丈夫(このえ/ますらお)だ!
お前ら白狐を倒しに来た!」
と、色々教えてくれた。
うん。何と言うか、拍子抜けした。スパイとかかと思ったけど、これは違うな。脳筋バカって感じだ。
っていうか、
「白狐を倒す?」
何を言っているんだ、この男は。
「俺はお前ら白狐に恨みがある!引っ越してきたのも、その恨みを果たすためだ!」男はよく通る大きな声で言い切った。まるで巨人に向かって啖呵を切る某少年みたいだ。
なんだか可笑しくて笑えてくるが、油断は禁物。この男はさっき、私の動きを見抜いたのだから。
「ふーん……あなた、得物は?」
得物というのは武器のことだ。白狐に戦いを挑むのなら、武器は必要不可欠だろう。
「エモノ?何だそれは?」
しかし、男は眉をひそめてそう尋ねてきた。態度からして本当に知らないようだ。呆れた。
「武器のことよ」
私は馬鹿らしく思いつつも自身の刀を指差した。
これで分かってくれるだろう。
「俺の武器は、」
と言って男が取り出した物は―――、
「ない!」
何もなかった。
ここまで読んで下さったあなたに心からの感謝を。
ありがとうございました!




